休憩時間

誰かの嘆き

 すべての賢人が最後に辿り着いてしまうもの、それは「数」だろう。

 

 功利主義の創始者であるベンサムは、最大多数の最大幸福を望み、少数の意見を切り捨てた。


 正義を説いたパスカルは、正しきを強くできず、強きものを正しくとする人の限界を嘆いた。


 僕たちの及ばない、深淵な知識を持つ者たちですら、「数」の持つ絶対的な力を覆すことができなかったのだ。これには人間が干渉することすら不可能な何かが存在しているのだろう。


 そして僕たちの様な凡人は長い時を重ね、先人達が辿り着いた答えに近づきつつある。マジョリティがすべてを支配し、マイノリティの鼓動が弱まる現代。

いつか遠い未来には、少数派と多数派の境界線がなくなり、個々人の単一性は失われるだろう。その事をきっと人々はこう解釈する。「人間という種の進化」と。


 多様性と相対性の闇に怯えて生きていけるほど、人間というのは強くできてはいないのだ。

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