生への駄論
「人間は考える葦である」
「生きることとは、考えることだ」
「吟味されざる生に、生きる価値なし」
「人生の唯一の意義は、人のために生きることである」
「人生それ自体に意味などない。しかし、意味がないからこそ生きるに値するのだ」
「生きる意味や価値を考え始めると、我々は気がおかしくなってしまう。なぜなら生きる意味など存在しないのだから」
*
古今東西、古代から現代に至るまで、あらゆる思想家や哲学者、はたまた物理学者や作家、精神分析学者が「生きる」ということについて、名言を残している。
が、しかし、
「あー、なんかこのシミュレーションゲームもさすがに飽きてきたなあ」
「あー、『地球』? それ、46億年くらいやってんでしょ? それをいまさら飽きたとかwww」
「いやいや、夢中になってたらすぐだって、46億年なんかさあ。ってかさあ、そもそもお前が始めたんじゃん、このゲーム。138億年前に。突然『ビックバーン』とか言ってさ」
「えっ、あれからそんなに経った? やべえ、俺も年取るわけだわあ。……ってか、結構複雑なことになってんな、『地球』。面倒臭いからここらで一旦リセットしとく?」
「ええっ、せっかく46億年もやってるのに?」
「それくらい、あっという間だって、さっき自分でも言ってたじゃん。そうと決まったら行くよ? せーの、ビックバー――」
「ちょ、やめろって! 勝手に人のゲームリセットすんなよな! キレっぞ!」
「やだなあ、冗談じゃん。そんなマジ怒りしないでよー」
「いや、お前、真面目に冗談が冗談じゃない時あるからな」
「いやいや、ほんと、怒んないでよー………と見せかけて、ビックバー――痛っ! な、殴ることないだろ……」
「てめえ、もう一回やったらマジ殺すからな!」
「痛いよお、たんこぶできちゃったじゃん」
「マジ殺す」
「わかった、わかったから……」
と、今日も仲の良い神々にとっては、地球で繁殖する「人間」なんて生き物には興味もなく、それがどんなに素晴らしい内容であっても、哲学者たちの考察など、すべからくして生への駄論なのである――。
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タイトル「生への駄論」は、山居中次さんから提案いただきました
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