ユカタン半島のゆかたん
「それでは、ゆかたんのユカタン半島上陸を祝って、かんぱぁい!」
「かんぱぁい!」
「おめでとう!」
「おめでとう、ゆかたん!」
「ユカタン半島バンザイ!」
「ありがとう、みんな!」
大学の卒業旅行で、あたし、田中有香こと「ゆかたん」は、やってきました、ユカタン半島!
最初は、「ね、ゆかたん、卒業旅行、せっかくだから海外に行きたいね」って
「あー、もう感無量だよ。ユカタン半島にみんなと来れたなんて」
「ホントだよね。最初は幻の地にしか思えなかったもんね」
「まさか、本当にあったとは。ユカタン半島」
カリブ海に沈む真っ赤な夕焼けを見ながら、あたしたちはうなずきあった。卒業後、あたしたち四人組は別々の道を歩む。けれど、ゆかたんというあだ名から、ユカタン半島までやってきたノリのいいこの仲間たちとの絆は、きっと一生続くだろう。
「ねえ、来年はどこに行く?」
「え、来年もどっか行くの?」
「ええ、いいじゃん。毎年恒例にしようよ」
「でも、ゆかたんのほかに地名な名前なんてあるのかなあ?」
「そこは地名縛りじゃなくてもよくない?」
カラっちが突っ込んで――そのときコモリンが首をかしげた。
「あのさ、あたし、何かずっと思ってたんだけど……『カラチ』みたいなやつ、何か聞いたことない?」
「うそ」
「聞いたことある……かも」
「カラチ、カラチ……何だっけ?」
あたしたちは顔を見合わせ――先を争うように、カバンから携帯を取り出した。
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