車が来るまで待とう

「なあ、輪廻って知ってる?」

「聞いた聞いた、何か死んだらワンチャンあるって」

「そうそう、人間でも虫でも命は平等、的な?」

「だから、死んだら別の生き物に生まれ変われるんだって聞いたけど、あれ、マジ?」

「マジマジ、オレ、偉い坊さんから聞いたんだから」

「何だよそれ、そいつが偉い坊さんだって何でわかるんだよ」

「わかるよ、オーラが出てるもん」

「嘘くせえ」

「嘘じゃねえって。ってか、そうじゃねえと、俺たちに話しかけてくれるはずねえだろ」

「まあ、それはそうだ」

「一理ある」

「じゃ、何? 死んで、底辺から抜け出すチャンスに賭けてみるって?」

「だからワンチャンあるんだって。俺たちにもさ」

「でも、死ぬのって怖くね? ってか、どうやって死ぬ?」

「苦しむのはやだな」

「うん、一瞬で死ねるのがいい。しかも簡単に」

「注文多いな」

「何だよ、だってヤなもんはヤだろうよ」

「え、でもそんな手段、ある?」

「あたし、食われるのとかはヤダ」

「右に同じ」

「じゃ、病気とか?」

「だから苦しむのはイヤなんだって」

「もう、文句ばっかり」

「そうだけど……」

「でもつかまるとかもヤダし……もっと手っ取り早く死にたいっていうか」

「じゃ、車は? あたしのおじいちゃんがあれに轢かれて死んだんだけど……」


 その一言に、皆は「それだ!」とうなずいた。


 そんな話し合いが行われた、その次の日。


「こちら、比叡山ドライブウェイです。普段は観光の方が通る道路なんですが――見て下さい、この道路を埋め尽くすほどの大量のダンゴムシ! すごい光景ですね。一体どこから湧いてきたんだというくらい、たくさんいます。このダンゴムシ騒ぎで、ドライブウェイはただいま閉鎖されていまして……なぜこの道路に集まってきたのか、専門家も首をかしげるばかりなんですね――」


 テレビではそんなニュースがお茶の間を賑わせた。


 そして、それよりは小さな扱いで、比叡山の偉いお坊さんが、伝統である山中での修行を無事終えたというニュースも流れていた。

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