第12話 毎週木曜日の茶封筒

「テストの間、父母教室で先生が言ってたんだけど、先ず、毎週の勉強の計画を自分で作って、その通りにやりなさいって。それから、特に算数は、自習シリーズを一回解くだけじゃなくて、何回も繰り返し解かなきゃダメだって。あと、五年生になったら、『解法自在』っていう参考書があるから、それも自習シリーズと並行してやるんだって。計画的にこなして行かないと、一週間で終わらないから、今のうちに計画を作ってコツコツやる癖をつけておくのが大事だって言ってたよ」


 その週の木曜日、京也が学校から帰ると、机の上に茶封筒が口を開けて転がっていた。

 中を取り出して見ると総合得点二二一点、二七九位だった。この前の選抜試験の頭九〇〇人を考慮しても順位は上がっている。しかし、点数は自分の予想を下回った。解説講義のなかった社会の点数はほぼ予想通りだった一方で、国語と理科の自己採点が不正確だったのである。京也は、次回から自分の解答を問題冊子にメモしておくことが必要だと思った。親に嘘をついたと思われたくなかったのである。

 第二回の日曜テストも同じような結果だった。点数もそうだが、得点分布での位置も変わり映えしない。資料では、総合得点は大きく七段階で評価され、更に各段階が五つに分かれている。最高が「七段ノ五」、最低が「一段ノ一」という具合――偏差値で言えば、前者は七十八から七十九というところだろう。

 京也の成績は、第一回、第二回いずれも総合得点で「六段ノ二」だった。しかし、この程度では新規受験者の参戦を考えると、次の選抜試験でも会員合格は覚束ない。

 妙子が父母教室で聞いて来たところによれば、――もっともこれは茉莉子の時と変わりなかったが、「七段」は総受験者の上位七パーセント程度で、これに入ると「優良賞」が授与される。この優良賞を三度以上獲得すると、次回の選抜試験で五点まで下駄を履かせてくれることになっている。仮に、会員合格者の最低点が二三〇点だったとすると、優良賞を三度獲っていた子は実際の得点が二二五点でも合格として扱うということである。合格点付近には同点者が何十人とひしめくことを考えれば、これは大きなアドバンテージと言える。当然、妙子からは優良賞三度獲得の至上命令が出ていた。(つづく)

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