2.別世界


まず、彼女が妹だという事は把握した。こんな朝っぱらから営業してるメイド喫茶とか聞いたこと無いし、好き好んで他人を「お兄ちゃん」呼ばわりは普通しない。

考えれば考えるほどに疑問点が湧いてくる。俺は頭をおさえ、はぁと溜息を溢した。



「てか何で、生きてるんだよ俺。死んだからこそ、あの変な空間で自称神様に会って、願い一つ叶えてやるって言われたから最後にギャルゲーやらせろって、」

ギャルゲー? その言葉に俺は詰まり、ある一つの仮説が頭に浮かんだ。


それは、まさかここギャルゲーの世界なんじゃないの?っていうのだ。


たまにギャルゲーの主人公には、

完璧で主人公を誰よりも理解している妹が居るケースがある。俺の今、この状況がまさに当てはまっているのだ。


「一応、話は繋がるが...ここがゲームの世界って。普通に考えてあり得ないよな-。」

そんなことを一人、ボソボソと呟いていると、部屋の扉が開いた。

驚いた俺は咄嗟に顔を扉の方へ向けた。そこには、妹が立っていた。


「お兄ちゃん、まだ制服に着替えて無かったの?」

「え、あ、ああ。」

「今日は入学式だよ?忘れてた訳じゃないよね?」

「入学式?俺の?」

「もう-、やっぱり。お兄ちゃん、今日から高校生でしょ?」


「はぁ?何をいってるんだ、妹よ。俺は高校3年生だし、今はもう6月だ。入学式の時期はとっくに過ぎているだろ。」

そう言って、俺は部屋に貼ってあったカレンダーを確認した。

そのカレンダーには4月とあった。


そんな筈はない。あ、そうか。これ、カレンダー2枚分めくって無かったに違いない。きっと、そうだ。

俺はあり得ない考えを否定する、その穴となる部分を必死に探していた。

神様とか、実際は本当に居るかも分からないものを俺は信じたくなったのだ。


妹はそんな俺を見て、はぁ。と一息を入れた後、テレビの電源を付けて

「現実から目を逸らしちゃ駄目だよ-。お兄ちゃん。」


「...ま、マジかよ..」

電源が付き、テレビには日付と日時が表示されてあった。

そこには4月5日7時37分とあった。

そう、これは嘘では無かった。この世界の今、現在は本当に4月だった。



ギャルゲームの世界かどうかは未だに不明だ。

しかし、別世界だということは容易に理解出来た。

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メインよりもモブが愛おしい! しゅら @syura214

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