1.妹
全くもって理解出来ない場面に、俺は直面している。
ここで整理をしてみよう。
まず、この家の二階の一室で俺は目を覚ました。しばらくすると、俺を「お兄ちゃん」呼ばわりする一人の少女が部屋に入ってきた。訳が分からないまま、俺は彼女に連れられ、一階の食卓にて食事を始めた。
おいおい、意味不明なんだが。何で、目覚めていきなり知らない子と食事とかしちゃってるの、俺。
てか、一体誰ですかこの子。まさか、俺が血迷って誘拐してきたとか?
いやいや、それはあり得ない。ロリコンじゃないし。
いや、しかしこんな可愛い子を初めて見た時、俺は正気でいられるんだろうか。
とか、俺は考えながら彼女が用意してくれたであろうご飯を口に運びな、脳をフル活用してこの事態の整理に励んでいた。
「お兄ちゃん、どうしたの?どこか具合でも悪いの?」
恐らく、俺がずっと無言だったことに疑問を抱き、このような質問をしてきたのだろう。
俺はずっと違和感を感じている。それは、この少女は俺に向け「お兄ちゃん」と呼んでくることだ。
このやり取り自体がおかしい。俺には妹など居ない、一人っ子だった。勝手な親の事情で義妹が出来るとか、そんな展開は絶対に無い。
「お兄ちゃん」という言葉は、本当に俺に対して発した言葉なのか確認する必要があった俺は思い切った行動に出る。
「なあ...妹よ。」
「うん? どうしたの?お兄ちゃん」
「え、あ...ご、ご馳走さま。」
少女は嬉しそうに笑って、俺に続けてはい。ご馳走様でした。と返した。
俺は食卓の椅子から立ち上がり、急ぎ足で階段を駆け上がった後、二階の先ほどの一室に入った。
扉を開け、体力を使い果たしたようにグッタリと俺はその場に座り込んだ。
俺は確信を得た。
事態がよく分からないまま、俺には妹が出来ていた。
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