プロローグ 後半


目を開いた。

「やあやあ、起きたかい?」

俺の目先にその声の人物は居た。突然の出来事につい驚き、俺は寝そべっていた体を起き上がらせ後ずさりした。


「え-、そんな驚くかな-?普通、」

軽く笑って、俺を馬鹿にするように言った。

金髪で腰辺りまでかかる長さ、このスリムな体型では想像出来ない巨乳。顔も整っており、この世に存在する者とは思えないほど彼女は美しい女性だった。

顔だけで判断とかいうなら、確実に惚れちゃいますよ、これ。絶対。


さて、話を戻そう。

「唐突ですが、貴方は誰ですか?」

「私は神様です!」


腰に手を当てえっへん、と自慢げに彼女は即答した。

当然ながら、この返答に対しては、は?何言っちゃってるんですか。この人。とか思った俺は再度確認をしてみる。


「次こそは真面目にお願いしますね。貴方は誰ですか?」

「私は神様です!」

この言葉だけ発するように調教されてるでしょ、これ。


「じゃあ俺が何故、ここに居るか分かりますか?」

そう、俺はここに居る理由を知らなかった。まずこの場所さえ初見だった。一度も訪れた事がない。


「それは貴方がお亡くなりになられたからですよ。 ここは死者が最初に訪れる場所ですから。」

今まで笑ってた彼女が急に真面目な顔して話すもんだから、冗談じゃないっていうのはすぐ理解出来た。



「そうか、俺死んだのか。」

「意外に冷静ですね。普通の方なら、気狂ったりするものですが。」

「あまり見縊るなよ、俺は冷静さを装う事に関しては相当な自信がある。

このスキルで相当な数の修羅場を潜り抜けて来てるからな。」


変な気分だった。死というものを感じた瞬間、これ以上空気である必要が無いことを知り、気持ちが軽くなった。

初対面の相手なのに、思っていることをズバズバと言えている自分に違和感を感じていた。



そこからわずかな静寂の後、彼女は言った。

「そんな頑張った貴方に一つご褒美を差し上げましょう。

貴方が欲しいものをお教え下さい。」


「俺が欲しいもの?」

考えに考え、俺は一つだけ思いついたものがあった。

「ギャルゲーがしたい!!!」

精一杯出した俺の声は空間全体に響き渡っていた。


「分かりました。では、早速ですが、送らせて頂きますね。」

「送るって? どこに?」

「それでは、頑張って下さい。」

「え、だからどこに、」

彼女は笑って俺に手を振った。聞き返そうとした直後、急に視界が暗くなり彼女は目の前から消え去り、俺はまた意識を失った。




目が覚めた。

薄暗い空間だった、自分の頭が枕の上にありベッドの上にいることくらいなら確認出来た。

起き上がり周囲を見渡すと家具が設置されており、確実に誰かが住んでる部屋ぐらいは考えがついた。


「でも、誰の部屋だ?」

と考えていると、突然この部屋の扉が開き、一人の少女が部屋に入って来た。


少女は部屋を歩き回り、部屋のカーテンに手を付けた。

カーテンを開けた直後、部屋中に光が注ぎ薄暗い空間の中で見にくかった少女の顔もハッキリした。


「お兄ちゃん、おはよ!ご飯出来てるよ。」

少女の第一声、まさに王道の妹声って感じだった。なんか耳全体が非常に心地よかった。


「今日、お兄ちゃん入学式なんだから急がないと駄目だからね!」

言葉を続けた後、少女は扉を開けて部屋を出て行った。


そういえばさっきからあの子、お兄ちゃんお兄ちゃんって言ってたけど、

この部屋、俺以外居ないんだけど。

え、誰お兄ちゃんって。まさか幽霊とかめちゃくちゃ見えたりしちゃう系の子なんじゃ無いの、あの子。

とか一人でボソボソ言いながら、しばらくこの部屋で待機していたら、その少女はまた部屋に入って来た。


「お兄ちゃん早く-!遅刻しちゃうでしょ-!」

とか言っちゃって俺の服の裾を掴んで二階から一階へと階段を降りていく。



「え、え。

この子じゃなくて、俺の目おかしくなってるパターンじゃないか。これ。」

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