産後、病室にて一人さめざめと泣く……。
朝からLDRに入って、出産を終えて出て来たのは夜の七時すぎだったでしょうか。分娩所要時間については、初産にしては短いほうなのもしれません。二十四時間以上という方もいらっしゃいますからね。ただ、私の場合は事前に入院していろいろな処置をしていたこともありますし、それを入れればかかった時間が長くもあるのですが。
病室に戻ってから就寝時間まで、それまでのことを正直あまり覚えていないんです。夕食をとったかどうかも。ただ、お茶はごくごく飲んだでしょうね、きっと(苦笑)。
消灯時間になってから、カーテンで仕切られたベッドの上で、私はさめざめと泣きました。病院は母子別床だったので子どもは新生児室で、なおかつ保育器の中です。涙の理由はなんでしょうね。きれいに説明することはできません。
ざっくりいうと「余裕のなさ」と「自信のなさ」でしょうかね。え? 誰だってそうだろうって? 自信満々の新米ママなんているはずないって? それはそうなんですけどね。知ってますけどね。わかってますけどね。だからって、割り切って気持ちすっきり前向きになれるわけじゃないのです。
ママさんたちの中には、生まれた我が子が可愛くて可愛くて、ずっとずっと見ていたいという人もいらっしゃいました。でも――私はとてもじゃないけど、そういう心境にはなれませんでした。そして、そうなれない自分に罪悪感を抱いたり。
「なれない」のが辛いのなら、「なれる」ように努力をすればいいじゃない? いやいや、そう簡単なものではないのですよ。え? 母親になったのだから甘ったれるな? グチグチじめじめしている暇があるなら子どもを愛せ?
全部ね、わかってるんですよ。わかっているから辛いんじゃないですか。え? わかっているならできるはずだって?なれるはずだって? それができないのは、わかっていないからだって? いや、ですからそれはですね……。
心の問題ですからね。「こうあるべきだ」という理想のありかたを知っていても、そう簡単にその状態に最適化(?)できるわけではないのです。いっそ、心なんてなければ――「私」という心さえなければ、どんなに楽だろう? そう思うほど、どこか追い詰められていました。
出産を終えたその夜、学生時代からの大の仲良しの友達にメールをしました。そして、なんとか無事に生まれたことと、自分の苦しい心境を正直に打ち明けたのです。すると、こんな返事がかえってきました。
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メールありがとう。無事に生まれて本当によかった。なかなか生まれないから心配していたよ。ちさとちゃん、まさか赤ちゃんの誕生日を私の誕生日に合わせようとして頑張っているんじゃないかと思って(笑)
出産の辛さや大変さは独身の私にはわかってあげられないのかもしれません。でもね、それでもやっぱり「おめでとう」と言わせて欲しいと思うのだよ。まずは自分の回復が大事だと思うから、休めるだけ休んで体を大事にしてね。
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何を隠そう予定日を超過したことで、はからずして大の親友の誕生日と息子の誕生日が重なったのです。ちょっと運命的ですかね。或いは、息子の粋なはからいとでもいいましょうか(笑)
それにしても、私の友達らしいメールだなと思いましたよ。決してむやみにハイテンションにならない(笑)そして、挨拶がわりのように「頑張れ、頑張れ♪」と励ましたりしない。
なんていうのかなぁ、私、ちょっと許された気がしたんですよね……。こんな自分でも、親友は親友でいてくれる。味方として寄り添ってくれるのだと。まあねぇ「こんな自分」ってなんだよって話なんですけど。なにしろこのときは、精神的にも身体的にも、普通の状態じゃなかったですからねえ……(汗)。
そしてそして、通常の状態にしっかり戻す間もなく次なるクエストに臨まざるを得ないのが、産後の育児というやつなのでした――。
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