命の重み
指川向太
命の重み
可愛がっていた牛が出荷されて以来、息子は口をきいてくれない。「自分たちが生きるためには、仕方のないことなんだ」と、何度も言って聞かせてきたが、どうやら子どもにはまだ難しいらしい。私は完全に悪者にされてしまったようだ。
しかし、畜産農家の息子として生まれた以上、いつかはこの問題を乗り越えてもらわなければ困る。今日の夕食のメニューは息子が大好きなハンバーグ。これを切り口に、私は今一度説得を試みた。
「今お前が食べているハンバーグだってな――」
「そんなことわかってるよ。」
私の言葉を遮りつつ、さもあっさりと、それも予想外の返事をされたので、私は思わず間抜けな質問を返してしまう。
「じゃあ、どうしてパパとお話ししてくれないんだ?」
息子はテレビに視線を預けたまま、無関心そうに答える。
「情が移ったらサヨナラがつらいからね。」
命の重み 指川向太 @kakunoshin
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