選択権なんてないらしい


 学院都市には四つのギルドがある。

 ギルド『終天の彼方』

 ギルド『希求の御心』

 ギルド『不変の誓約』

 ギルド『大地の憤怒』


 まず『終天の彼方』は、四つの中でも一番最後に設立されたギルドであり、他の三つのギルドに比べて規模は小さい。規模が小さいと言っても、田舎のギルドに比べたら十分なほどの規模だ。


 次に『希求の御心』は、ギルドと言われてはいるが、実質は修理屋となっている。魔導器の販売をしながら、それらの修理の依頼などを主に受けている。


 そして『不変の誓約』は、団員が貴族の人間のみで構成されているギルドである。このギルドは、貴族のためだけにあるギルドと言っても過言ではない。依頼をしたくても平民のギルドには任せたくないという貴族などが、主にこのギルドを利用するのだ。


 最後に『大地の憤怒』は、四つのギルドの中で一番最初に設立されたギルドであり、規模が一番大きい。そのせいか、問題をよく起こすギルドでもある。



 以上の四つのギルドがこの学院都市に存在している。

 これらのギルドは互いに商売相手ではあるが、今まで大きな諍いを起こしたことは無かった。

 そして、ギルドの団長のみの会合が、定期的に開かれている。今日はその会合の日であり、『終天の彼方』の団長であるトレルスは会合場所へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅刻だぞ、トレルス団長」

「すみませんね。酒場の修理に忙しかったもので」


 トレルスが来たのは、ギルド『不変の誓約』が管理する庭園だった。

 その庭園には一つのテーブルと四つの椅子が置かれており、既に三つの席は埋まっていた。

 会合時間に遅れてやってきたトレルスを注意した男は、ギルド『不変の誓約』の団長であるオブリース・ラズ・リージェフラ。名前に二つ名があることから分かるように、オブリースもまた貴族だ。

 遅刻したトレルスが笑顔で謝罪しながら、自分の席に座る。


「では、会合を始めるぞ」


 オブリースの言葉で、その場の四人はそれぞれ近況の報告をしていく。いつも通りの会合。報告が終わればすぐに解散。だが、今日はいつもとは違った。


「最近、学院都市内である麻薬が流行っているは知っているな?」


 全員の報告が終わった後、オブリースがそう発言したのだ。


「酒場でも少し話題になっているよ」


 オブリースの問いに対して、トレルスがどうでもいいことのように答える。

 そのトレルスに続けて、その会合に参加している紅一点の女性が発言した。


「最近、私のギルドの団員の一人がその麻薬を吸っているのが発覚したばかり。ほんと嫌になるわ」


 その女性の名はフレデリカ・インベロプ。『希求の御心』の団長であり、彼女に直せない魔導器はないと言われている。彼女はいつも持ち歩いている魔導器をつつきながら、頬杖をついている。


「うちのところも何人かやってるやつがいたな」


 そう呟いたのは、太り気味の大男だった。

 この大男の名はブルザドク・スブラター。『大地の憤怒』の団長である彼は、存在感のある大剣をテーブルに立てかけている。

 オブリースが三人を一瞥して、口を開いた。


「どのギルドもやはり麻薬の被害を受けているようだな。言うまでもなく深刻な問題だ。一刻も早く麻薬の大元を潰さないといけない」

「へっ、貴族ギルドの団長が"潰す"なんて言葉を使うとは思わなかったぜ」

「貴様にも理解できるように言ったまでだ、ブルザドク団長」

「けっ、そんな気遣いなんていらねぇよ。どうせ、てめぇらは、これ以上貴族が麻薬を吸わないようにしたいだけなんだろ。お得意様が減って欲しくもねぇもんな?」

「貴様らと違ってそんな矮小な考えなど持ち合わせておらん」


 オブリースとブルザドクが睨み合う。互いに自分の武器に指をかけており、一触即発の雰囲気がその場を支配した。


 だが、そんな雰囲気も一人の間の抜けた声で崩れ去る。


「まぁ、僕らギルドも麻薬に対して危機感を持たないといけないってことだねぇ」


 欠伸をしながら、トレルスがそう発言した。

 トレルスの発言によって、武器を指をかけていた二人は、自分の武器から手を離す。

 ふん、と鼻を鳴らし、ブルザドクが睨みつける相手をオブリースからトレルスへと変えた。


「さすがは有望な新人を手に入れたギルドの団長だ。随分と余裕そうで羨ましいな」

「有望な新人?」

「"燃盛る爆風ブラスト"だったか? 通り名を持っている時点で実力があるってことじゃねえか」

「カルキ君のことか。さすがに耳が早いね。でも実力がどうこうっていうのは僕にも分からないな。彼って魔装具すら持ってないんだよね」


 トレルスは今朝のミツを怒らせてボコボコにされていたカルキのことを思い出す。そんなカルキの様子からは二つ名があるほどの実力を持っているなんて想像もできない。


「『終天の彼方』には"孤高の魔狼フェンリル"も所属しているじゃねぇか。さぞかし、『終天の彼方』の団長さんは鼻が高いだろうよ」

「なんでそこでジント君の通り名まで出てくるんだい。それに君のギルドは僕たちよりも大規模じゃないか。君の方が僕よりも鼻が高いんじゃないかな?」

「規模の大きさなんて関係ねぇよ。優秀な人間は誰でも欲しいってことだろうが」


 トレルスは笑顔で応じるが、ブルザドクは厳つい顔でトレルスを見る。そんな二人の言い合いに興味のないフレデリカは、魔導器をポケットにしまって立ち上がった。


「もういい? 私も暇じゃないから帰りたいんだけど」

「そうだな、今日はここまでにしよう。とにかく麻薬には全員気をつけることだ」


 フレデリカの言葉に重ねるように、オブリースが解散の提案をした。言い合いをしていたトレルスとブルザドクもそこで黙る。

 誰もオブリースの提案に反対する者はおらず、会合は終わりを迎える。

 四人は誰も発言することなく、その場から離れ、自分のギルドへと向かう。


 ただ一人、ブルザドクだけが振り返り、残りの三人の背中に対して笑みを零すのだった。






















***



「学院都市での常識?」

「そう」


 俺は今、ジントと一緒にギルドの酒場で昼食をとっている。

 今日は休日で魔法学院は休みだから、ジントは朝からギルドにいて、俺の教育係として、朝からずっと『終天の彼方』についていろいろと教えてくれた。

 俺がかつて所属していた数々のギルドと、特に差があるという印象は受けなかった。田舎のギルドより規模が大きいぐらいで、俺もいつも通りに仕事をすればいいようだ。


 で、ギルドの説明が終わったら、ジントが昼食にしようと提案してきたので今に至っている。


「学院都市での常識なんて言われても、何を言えばいいのか分からないな。そうだな……傭兵である俺たちが知っておくといいことと言えば、"七人の序列"だな」

「"七人の序列"?」

「学院都市内で上位七人の実力者のことだ。この学院都市では、その七人だけが聖遺物を持っている。だから、その七人だけをランク付けしたんだ。それが"七人の序列"」


 そうか、魔装具や人工遺物よりも聖遺物の方が強力だから、それらを持っている七人の人間たちは考えるまでもなく上位なのか。それで、さらにその七人をランク付けした、と。


「てか、聖遺物を使える人間が一人いるだけで凄いのに、七人もいるってヤバすぎだろ」

「まぁそうだな」

「でもよ、人工遺物を持っている副団長だって結構強いじゃん。だとすると、人工遺物を持っている人間も含めると、上位七人って変わってこないか?」

「聖遺物が人工遺物に負けるとは思わないけどな。変わるかどうかまでは俺には分からない」

「私は変わると思いますよ」


 俺たちの話に加わってきたのは、一人の女性だった。


 その女性は、アリスさん、という終天の彼方の数少ないスタッフの一人だ。

 俺が入団試験を申し込んだ時の受付嬢だったことを忘れていない。

 彼女はギルドの掃除などをしていて、俺が壊した酒場の片付けのときにお世話になった。


 アリスさんは俺たちのテーブルの上に置かれた空の皿を下げて、食後のデザートを持ってきてくれた。


「ジント君は副団長が上位七人に入るとは思っていないんですか?」

「じゃあアリスさん、そういったことを話し合うためにも、後でお茶なんてどうです?」

「またジント君はそういうことを言うのね。前も他の女性にそう声をかけて、副団長に注意されていましたよね」

「ギルド内の恋愛を禁止するのはおかしいと思いません? 副団長だって……」

「ジント君、後ろ」

「ん? ……どうも、副団長」


 アリスさんの指す方を見れば、いつも以上に怖い顔をした副団長が立っていた。

 うぉ、怖い。というか、その顔でこっちに向かって来ないでくれ。閻魔大王まで道を譲りそうなオーラが見えるんですけど。


「ジント、また女性をお茶に誘っていたな? これで何回目だと思う?」

「なんでいつも俺だけこうやって注意されるんですか……」

「別にカルキがお茶を誘っていたなら、私も注意はしなかっただろう。どうせすぐに断られるに決まっているからな」


 え? なんで俺が貶されているの? 何も悪いことなんてしていないのに精神的ダメージを食らうって理不尽なんですけど。

 心を痛めている俺なんかを無視して、二人は会話を続ける。


「お前は頭も良く、顔がいいからな。多くの女性を虜にするだろう。だが、その分だけ女性を泣かすのは目に見えている」

「俺は女性に泣かされたことしかありません。ミツさんだって俺のことは言えないでしょう。あなたはだ、んぐっ!?」

「それ以上喋ってみろ。お前の鼻をへし折るぞ」


 ジントが何かを言おうとして、副団長がジントの胸ぐらを掴んだ。その副団長の顔は先程とは比べ物にならないほど怖い。


「わ、わかりました。俺が悪かったです」


 ジントも副団長の怖さに恐れて、すぐに謝った。

 うん、ジント、お前は何も間違っていない。俺もそんな顔で副団長に胸ぐらを掴まれたら即座に謝る。そして土下座も躊躇わないだろう。


「ふん、罰としてお前らに依頼を受けてもらう」


 副団長が聞き捨てならないことを言った。


「ちょっと待て。今、お前"ら"って言った? 俺は何も悪いことをしてないんだけど」

「お前が暇そうだったからな」

「暇な奴は他にもいるだろ! 周り見てみろ、真昼間から酒を飲んでいる奴ばっかだぞ!」

「本当はお前のことが嫌いだからだ」

「ぶっちゃけやがった!? そして、それ言われなくても知ってた!」


 上司に嫌われた部下の気持ちってこういうものなんだろうなぁ。


「カルキはいりません。俺一人で依頼を受けます」

「よく言った、ジント!」

「こいつはどう考えても足を引っ張るに決まっています。ついて来て欲しくない。つーか来ないでくれ」

「あ、そういうこと。俺を庇ったわけじゃないんだ……今までで一番ショック受けちまった」


 やべぇ、なんか涙出てきた。

 副団長もジントも俺に対して当たりが強すぎない?


 そして、アリスさん。

 そんな可哀想な奴を見るような目で俺を見ないでくれ。本当に惨めな気分になるから。


「そう言うな、ジント。これも新人教育の一環だ」

「……なら、仕方ないですね」


 いや、そんな簡単に納得しないでくれ、ジント。

 俺のためにも一人で依頼を受けてくれ。頼む、俺は働きたくない。

 

「副団長、俺は絶対にそんな不当な理由じゃ働かないからな。全国のパワハラを受けている国民のためにも、俺は働くわけにはいかないんだよ」

「カルキ、依頼を受けるのなら、お前の借金を減らしてやる。受けないのなら借金を増やす」

「働かせて下さいお願いします」

「変わり身が早いわね、あなた……」


 アリスさんの俺に対する目が、可哀想な奴を見る目から軽蔑する目に変わった。

 だって、しょうがないじゃん。借金を盾にされたら、こっちは降伏するしかないんだから。借金があとどれくらいあると思ってんだバカヤロー。


「とにかくついてこい」


 やる気を出した俺はジントと一緒に副団長についていく。

 さっさと終わらせて、借金を少しでも返済してやる。


「依頼主はここの中にいる。詳しく話を聞くように。私は他に仕事があるから、 後は任せたぞ」

「へーい」

「分かりました」


 副団長はそう言って、その場から離れていった。

 部屋の前には俺とジントだけ。

 男と二人きりっていうのは嫌だな。ジントはイケメンだし、もっと嫌になる。

 そんなことを考えながら、俺はドアノブに手をかけて、扉を開いた。


「よ、よろしくお願いします!」


 その部屋にいたのは、眼鏡をかけた痩せ気味の少年。

 彼は俺がドアを開けた瞬間にこちらに頭を下げた。

 礼儀正しいというより、なぜか俺たちのことを少し恐れているような印象を受けた。


「君が依頼者?」

「は、はい。って"孤高の魔狼フェンリル"!?」


 少年が頭を上げてジントを見たら、悲鳴に近い声を上げた。

 なんでそんなに驚くんだ? 


「"孤高の魔狼フェンリル"って?」


 近くに立っているジントに聞いてみる。ジントは罰の悪そうな顔をして俺の質問に答えた。


「俺の通り名」

「は? 通り名!?」


 ジントも通り名を持っていたのか!? 俺、知らなかったんですけど!


「てめぇ通り名持ってたんかい! しかも"孤高の魔狼フェンリル"ってかっこいいじゃねぇか! 俺の"燃盛る爆風ブラスト"と交換しやがれぇ!!」


 魔装具適性といい、通り名といい、俺といろいろ被っているんですけど!

 しかも二つとも俺より良いというね。やっぱりあれか、この小説の主人公は俺じゃなくてジントなのか?

 ……はぁ、ほんと、生きる気力もなくなっちまう。


「はぁ……」

「あの……本題に入ってもいいですか?」

「すまないな。どうぞ本題に」

「いや、あの、銀髪の人が遠い目をしてため息をついているんですけどいいんですか?」

「大丈夫だ。あいつはほっといてくれ」


 俺の主人公としての個性ってなんだろうなぁ……

 ジントって俺よりイケメンで、能力値も上で、通り名もかっこいい。

 駄目だ。俺の個性で勝っている所が一つもない。


「本当に大丈夫なんですか、あの銀髪の人は?」

「無視してかまわない」

「でも、あの人、首吊りロープで自殺しようとしているんですが」

「え? カルキ、ちょっと待てっ!? なんで自殺するんだ! というか、どこからそのロープを持ってきたんだよ!」

「離してくれぇぇ!! この小説に俺の居場所は無いんだぁぁ!! ここで死んで異世界転成するんだぁぁ!!」

「意味わからん!!」


 しばらく俺たちは依頼者をほっといて、騒ぐのだった。











「うちの馬鹿共が失礼した」

「い、いえ」


 俺たちが騒いでいたら、副団長が来て、こっぴどく怒られてしまった。俺とジントの頭には巨大なタンコブができていた。


「それで依頼内容は?」


 俺たちだけに任せられないのか、副団長自らが依頼者と話をしている。その依頼者は副団長のことを知っているのだろう、副団長に話しかけられて少しビクビクしている。


「あ、あのですね。依頼内容を言う前に、自己紹介をしてもいいですか?」

「ん? 構わないが?」

「僕はコニスと言います。実は僕、その……」


 いきなり言葉が詰まるコニス。なにが言いづらいのか、副団長をチラチラと見ている。そして、彼は意を決してこう告げた。


「僕は『大地の憤怒』の団員なんです!」


 『大地の憤怒』? なんだそれ?

 ジントにそれが何か聞こうと見たら、ジントと副団長が驚いていた。気軽に質問できない雰囲気でなんか困る。


「他ギルドの団員が何の用だ?」


 副団長が警戒心を露わにして、コニスにそう尋ねた。

 そういえば学院都市には四つのギルドがあるんだっけ? その内の一つが『大地の憤怒』なのか。

 なるほどな、副団長が警戒するのも分かる。ギルドに所属している人間が他ギルドに依頼するなんてまず無い。他ギルドに依頼するという時点で、かなりの訳ありの依頼ということだな。

 コニスがモジモジとしながら副団長の質問に答えた。


「その、ですね。皆さんは麻薬が流行っていることをご存知ですか?」


 そういや、酒場でそんなことを話している客がいたような気が。

 ジントも副団長も知っていたようで、コニスの言葉に頷く。


「実は僕のギルドにもその麻薬の被害者が何人か出てしまったんです。その内の一人が僕の友人でして。居ても立っても居られない僕は、団長たちに麻薬の大元を突き止めようと訴えたんですが……」


 話していく内にどんどんコニスの声が小さくなっていく。

 その様子だといい返事は貰えなかったらしい。


「不自然じゃありませんか? 団員の一人が被害を受けたらギルド全員でやり返すというのが、ギルドの信条みたいなものじゃないですか。なのに、麻薬の大元を探さないなんて」

「……確かに不自然だ。うちのギルドはまだ被害者は出ていないが、もし出たら麻薬の大元を探すだろうな」


 副団長も腕を組んで悩んでいる。

 俺も考えるけど、なぜ断ったのか分からないな。やられたらやり返すのが、傭兵たちの集まりであるギルドのはずなのに。


「だから、僕は自分のギルドが動かないなら他ギルドに麻薬の大元調査の依頼をしようと思ったんです。でも、貴族でもない僕が『不変の誓約』に依頼できるわけないですし、『希求の御心』は魔導器修理の依頼が主なので……」

「だから、うちを選んだ、と。そういうことか。いいだろう、その依頼を受けよう」

「本当ですか!」

「他ギルドの人間の依頼を受けるのは別に禁止されているわけじゃないからな。だが、それ相応の報酬は貰うぞ」

「ほ、報酬っていくらぐらいですか?」

「そうだな。最低でもこれぐらいだな」


 副団長が報酬の値段を紙に書いて、それを見せる。その値段を見たコニス君は、目を丸くして驚いた。


「こ、こんなに!?」

「当たり前だ。麻薬の大元を突き止めるのはかなり危険な仕事だから、これぐらいは貰わないとな」


 副団長さんや、そのかなり危険な仕事をするのは俺たちなんですが。

 そこのところはちゃんと分かっていますよね? 勝手に了承して、勝手に報酬交渉に入って、本当に分かっていますよね?


「まぁその紙に書いたのは安いくらいだ」

「わ、分かりました。全く払えないほどじゃないのでこれでいいです。ですが、すみません。報酬を払うのは次の僕の給料日でもいいですか? 今の僕の全財産でも少し足りないので」

「お前ら、それでもいいか?」


 俺らの意見聞くのなら、もう少し早めにして欲しかったんだけど。ここまで話を進めておいて、こんなところで聞かれても逆にこっちが困る。

 俺がそんなことを思っていたら、ジントが副団長に返事をした。


「俺は別に構いません」

「だそうだ。良かったな」

「俺の意見は!? 俺の意見も重要だろ! 無視すんな!!」

「うるさい。お前の教育係がいいと言ったんだ。お前の意見などどうでもいい」

「どうでもいいって言ったよ、この人!? とても副団長の発言とは思えないんだけど!」


 結局、俺の抗議は無視され、依頼は報酬が後払いということで引き受けることとなった。

 

 

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