第32話 分娩室のBGMと産声
「夫さんも立ち会いでしたよね?」聞く看護師さん。
「はい」と夫。
「じゃ、この服上に着てください。」
なんか手術着みたいの渡されて着まして、夫も分娩室に。
分娩台に乗って、いよいよ出産本番ですね。
本番前に疲れ果ててるんですけど。
つか、足置きに足おいてらんないっつうの!
開きが少ないんだよ!
もっとおっぴろげてないと、股関節に頭が詰まってて痛えんだよ!!
足置きの外に足なげだし~のおっぴろげ。
「んぎぎぎぎぎい!!!」
仰向けに乗ってるのもツライ!ただ痛みに耐えます。
「あ、BGMとか選ぶ?ポップスとかクラッシックとかあるよ。」
「い、いえ良いです。」
「じゃ、僕の選んだ奴でいい?」
「どうぞ……、うぎぎ!」
そんなもん、この部屋に入る前に聞けよ!
台に乗ってから選ぶ余裕なんかあるか~い!
なんかヴァイオリンがメインの、クラッシックの美しい旋律が流れます。
勿論合いの手は、
「ぐがぎぎぎぎ!」
キッタナイ唸り声でございます。
「う~ん、力みすぎだね~。体が楽になる注射打つ?」
「オネガイジマス~!」
もう息も絶え絶え。
力みが取れる、体の緊張をほぐす薬を打ってもらうも、効かない効かない。
効いてるかもしれないけど、良くわかんない!
そして、分娩台に上がってからも、あまりにも出ない!
分娩台を横向きになったり、体捩ったり。
夫も助産師さんも体さすったりしてくれますが、おとなしくなんてしてらんないよ!
痛みで硬直!自動的に体が捻じれて、弓なりにガクガクブルブル!!
そんなこんなで、一時間以上経過。
「う~ん、陣痛が強くならないんだね~。会陰切開しますか?すぐ出るよ?」
……誘惑する悪魔に負けた。
「き、切ってください~…、最低限で~、麻酔掛けてから~お願いします~」
「ハイ行くよ」
ジョギ!
「いぎぁ――――!?」
ふんぎゃああああああああ!!!!!!!!!!
体に刃物がっががっがっが!!!体切り開かれたああああああ!!!!!
いていていていてえええええ!!!!!
麻酔なにそれ美味しいの?って、絶対麻酔してないでしょ!!!!!麻酔無しで切られた!あんたマンコ麻酔無で切られてみ?それと同じ痛みだから!
出産の痛みで切る痛みなんか感じないなんて大嘘!!!!!
ものすごく痛い!!!陣痛が自然な痛みなら、切られるのは不自然な痛み!
いや、むしろ、ダメージ受けてる場所にさらに追加ダメージでめちゃくちゃいたいから!
泣きっ面に蜂以上だから!
タンコブの上からカッターで切られるみたいなもんだから!
こっちもあっちもどっちも痛いから!相乗効果で痛いから!
痛みにまぎれないから~~~~!!!!!!!!!!!!
「アガガガガ!!!」
「はい、いきんで良いよ~!股を見て~!思いっきり!」
もう、やけくそ!マウスピースしてるから、歯も欠けないだろ!むしろ欠けても構わんぐらいに食いしばって!力んで!ガクガクブルブル!
「はい、もうすぐだよ~、上手だよ~、それ!もう一回!」
「ん――――――――――――!!!!!!!!」
ムリッ!
やっと頭出た!先生が会陰に指突っ込んで伸ばす!肩の引っかかるところつかんで引っ張った!
産まれた!ドルン!っと!
ズリっと股から赤子が引き出されます。
「…………ほ、ほあ~~~~」
ああ、第一部完……。
気の抜けたような産声です。
金切り声ぽいかと思いきや、あんがい間抜けな鳴き声なんだな……。
つか、赤子も疲れてんのかな。
あ~~~、グッタリ~~~。
「はい、どうぞ。」
股から胸にダイレクト、取り出してすぐ胸に置かれる、すかさず抱っこ。コンバンワ赤ちゃん。
……んにゃ、コンバンワ出川○郎。
いや~、赤子って、サルとかガ○ツ石松とか聞くけど、リアクション取ってて泣き顔の出川が出てくるとは思わんかった。
シワは無いね、パンパンだね。結構ドッシリしてて、新生児っぽくないってか。1か月児って言われても信じるかも。
顔になんかプツプツがあるね、鼻の角栓?鼻とかほっぺとか。
血は付いてないね~、へその緒付いたままだね~。
胎脂がどうのとか聞くけど、ベタベタしてないね。
色々観察します。
「お、お疲れさま」
あ、夫居たんだっけ。
結局、次の日までのこり5分ほど。ぎりぎり本日中に出産したのでした。
陣痛発生してから、23時間ってどうよ……?
長いと思うんだけど……?
昨日からしてほぼ2日徹夜だし、兵糧はゼリーだけだし、寝不足と空腹と痛みでもう文字通り搾りかす状態です。
10分位抱っこしてから、助産師さんに渡す。
……やっと休める。
と思ったら、
「後産の処置するよ」
遠足は帰るまでが遠足です。
後片付けが終わるまでは、まだまだゆっくり出来ないのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます