用語解説

本小説「一遍」は鎌倉時代が舞台であり、主人公は仏教僧であるため、可能な限り分かりやすくしようと意識はしているつもりなのですが、どうしてもその時代の言葉、および仏教の専門用語を出さないことには台詞一つ書けません。

あと、生前の著作が全くと云って良い程存在していない以上、学説の類も様々林立しており、伊藤の独断で設定を決めてしまっている箇所も少なからずあります。

そこで簡単な用語解説ページを設けました。私もそんなに分かっているつもりではないですが、調べられる範囲でこちらに書いて行きます。皆様の御理解の助けになれば幸いです。


今様いまよう

正式には「今様歌いまようか」とも云い、平安中期に起こり鎌倉時代にかけて流行した新しい歌謡です。短歌形式のものや七・五の一二音の句四句からなるものなどがあり、特に後者が代表的です。白拍子・傀儡女くぐつめ・遊女などにより歌われたもので、貴族の間にも流行し、後白河法皇の手で「梁塵秘抄りょうじんひしょう」に集成されました。これは岩波文庫等で今でも読むことが出来ます。


還俗げんぞく

いったん出家して仏門に入った者が、再び俗人に戻ることです。復飾ふくしょくとも云います。


賦算ふさん

「南無阿弥陀仏 決定往生六十万人」と書かれたごく薄い板=念仏札を、南無阿弥陀仏と一言唱えさせて配布すること。「御化益ごけやく」「おふだくばり」とも呼びます。時宗独特の教化法で、カトリックで云う免罪符に少し似ていますかね。


悪党あくとう

今では単なる悪人、悪者と云う意味ですが、ここでは中世、荘園領主や幕府の支配に反抗し、社会の秩序を乱す者や、その集団を差します。反乱分子、とも云えますね。


帰依きえ

一般的には、仏や神など、優れたものを頼みとして、その力に縋ることを言います。仏教においては、仏を信仰し、教えを乞うて仏教の教えのまま生きることを言います。


結縁けちえん

仏道に入る縁を結ぶこと、仏道に帰依することを言います。


本領安堵ほんりょうあんど

鎌倉時代、室町時代に、幕府や領主が忠誠を誓った家臣に対し、その者の領地の所有を保証した制度です。 「本領」は元から所有していた領地を指します。 「安堵」は幕府や領主が土地の所有を承認し保証するを云います。


「河野」の読み方について

この時代では「かわの」と読まれるのが一般的だったそうです。伊藤は単なる語感の良さだけで「こうの」にしています。


忽那氏こつなし

瀬戸内海西部,今の愛媛県松山市にある忽那諸島を本拠とする土豪。長講堂ちょうこうどう領忽那島の地頭職を世襲し,強力な制海権を有して南北朝時代に最盛期を現出する。


忽那氏と河野氏の関係について

元々忽那家は河野家に仕える家臣だと云う説もありますが、得宗家・北条氏の本領安堵ほんりょうあんどにあったというのは事実のようで、承久の乱で北条に楯突いた河野家とは当然、友好関係にはなかったであろう、と云う推察の元、こういう風に描いております。

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