一遍(いっぺん)

伊藤一六四(いとうひろし)

登場人物紹介

※物語の進行具合に因って随時更新していきます。


一遍いっぺん

主人公。武士の時の名前は河野こうの通尚みちひさ智真ちしんとも。伊豫いよの領主の次男として生まれる。幼名は松寿丸しょうじゅまる。浪士によって殺された母の一件をきっかけに十歳の時に出家し、太宰府に浄土教の教理を学ぶべく留学していたが、父の死を期に伊豫に戻り、一旦還俗する。克を妻として迎えるも折り合いが合わず、武士にも成り切れず、僧をも捨て切れぬ、ふらふらとした日々を送っていたが、慶次から蝶を助け上げ、妾として迎え、娘・美津をもうけてからは、小さいながらも一介の武士として生きる決意を固める。しかし、妻達の裏切りに端を発した抗争に巻き込まれ、甚大な損害を身体にも心にも受けることとなる。そして再び仏の途を目指すことになる。


超一ちょういち

作品登場当初の名前はちょう。美貌もさることながら、その美声から謡われる今様には比肩するものはない。智真が幼少の頃に、母の仇討ちに乗り込んだ際に斬り付けた浪士の末の娘で、姉と共に恨みを晴らすべく諸国を行脚しながら、父の仇である智真の動向を辿っていた。旅の空でその姉をも亡くし途方に暮れていた所に、天性の美声を生かし、今様の声明しょうみょうとして芸子集団に同行していた。その集団の用心棒として同行していた慶次に襲われそうになっていたのを智真に拾われ、妾として迎えられ一児をもうけるも、思わぬ形で父の仇と巡り会うこととなり、悶々とした思いを抱えていた。上記の抗争には彼女も巻き込まれ、自分の身の上を智真にも知られることとなるが、それでも一旦募った智真への恋慕の情は捨て切れず、苦悩することとなる。


聖戒しょうかい

幼名は千寿丸せんじゅまる。智真の腹違いの弟。やはり出家させられ太宰府に留学していたが、一時伊豫に帰国している。何かと智真に突っかかる所があるが、それも全て兄への歪んだ感情故である。くだんの抗争にはほとんど関係せず、再び出家する決意を固めた兄に大いに賛意を示し、太宰府へ向かうことを強くすすめるのであった。


超二ちょうに

登場当初の名前は美津みつ。智真と蝶の間に生まれた娘。寡黙だが芯は強く、働き者。


念仏坊ねんぶつぼう

河野家に仕える家臣。登場当初の名前は目見田めみたきよし。通真や智真の剣術の師匠でもあり、無論凄腕。山奥の小屋に封ぜられていたが智真に再び徴用される。しかしくだんの抗争に彼も少なからず巻き込まれ、傷を負う。通尚=智真には、ひとかたならぬ愛情を注いでおり、かいがいしく面倒を見るが、それは自らの生い立ちの所為でもあるらしい。超一や超二の面倒を見る間に、自らも出家してしまう。


真教しんきょう

豊後の守護・大友頼泰の屋敷に出入りする天台宗の得度僧。主人が帰依したという一遍に興味を持ち、面会。彼の人となりに惚れ込み、付き従うこととなる。


かつ

智真の妻であったが、実は対立する忽那こつな氏の間者。慶次と密通してしまったことで情が移り、彼に迫るも斬り殺されてしまう。


慶次けいじ

浪人。蝶のいる芸子集団の用心棒として同行する。剣の腕は立つ。忽那こつな氏とのつながりもあったらしい。また蝶を手込めにしたいという自らの欲望も相重なって、幾度となく策謀を練り、河野家に甚大な被害を与えるも、最期は智真に斬り殺されてしまう。


如仏にょふつ

本名は河野通広こうの・みちひろ。智真の父。出家しているが寺には篭らず、武家としても生きていた。智真が二十五歳の時に亡くなり、彼が一旦還俗する一因にもなった。徹底した事なかれ主義。


紀和きわ

如仏の妻の一人であり、智真の母。共に浜辺を歩いている所を忽那に雇われた下級浪人に襲われ、陵辱された上に惨殺される。


河野こうの通真みちざね

通尚の兄で、如仏の子である四人兄弟の長兄。通尚に克を娶るよう薦めた張本人で、自身も克の姉・まりを妻に持つ。如仏亡き後に家督を継ぐこととなる。彼も妻の裏切りに遭い、多大な被害を被る。


聖達しょうたつ

通尚、聖戒の大宰府での師匠。厳格だが情に厚い。


聖光しょうこう

通尚の大宰府での同窓。出会った当初は喧嘩もしたが、そのあと通尚の親友になった。彼が太宰府に戻る度、何かと世話を焼いてくれる好人物。


かえで

村の娘。伊豫の生まれらしい。巾着切りを聖戒に疑われたことから河野家に住み着く。食い意地が張っている。何かと聖戒を馬鹿にするが、時たま見せる彼の優しさにほだされ、いつしか寄り添うようになり、夫婦となる。子供をもうけて荘園主の妻として暮らしていたが、河野家内部の覇権争いに巻き込まれ命を救われた直後、子供である多恵たえを病で失う。

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