再びの秋葉原 (3)
おかっぱ…の、おっさんがオレ達と同じカウンターの端に。周りにツレらしき人間はいない。おそらくプロのご主人様だろうと推測できる。
注文したアイスコーヒーを待つ間、オレは実に気になる彼の様子をチラチラと盗み見していた。
…だって気になるんだもん。
S君もKさんも同じような挙動をしてたに違いない。ここでご歓談をした記憶が無い。
こそこそと観察していたオレはある事に気付いた。
稲○卓球部の"サ○チェ"にそっくりだ…。
ホントに激似。本の中から飛び出して来たような。
これ散髪した人は「うわ!サ○チェになっちゃった!」て、驚いたと思う。(多分オーダーはブチャ○ティ)
あとメイドさんも「今日サ○チェ来たよね?」と、ロッカーで会話すると思う。
そのくらいサ○チェ。
彼は相当暑がっている様子で、メニューでパタパタと自分の首付近を扇いでいた。
パタパタ
パタパタ
お水をゴクゴク
パタパタ
…ずっと扇いでる!そんなに暑いなら帰ればいいのに!
でも彼はガマンしている。きっとメイドさんといるこの時間を大切にしているんだろう。…なんかいい奴な気がする。前回のカジュアルおっさんが闇のご主人様とすれば、こちらは光のご主人様だ。
そんな事を考えていると、オレ達のところにドリンクが運ばれてきた。
「では、美味しいドリンクをもっと美味しくする魔法をかけさせていただきます!ご一緒に…」
オレ達は若干ドギマギしながらもメイドさんを真似て、両手でハートを作り胸の前に構えた。(…サ○チェもこちらに注目している…。)
「美味しくな〜れ、もぇもぇきゅん⤴︎」
「…ぇ、もぇ…ゅん…」
恥ずかしい!メイドさん声が大きいよ!
オレ達の小さな声が情け無く感じるじゃないか!
大の男が3人も寄ってたかって、こんな若い女の子に恥ずかしい事をさせられるなんて…。そう考えると来て良かったなぁと思えた。
こちらのパフォーマンスを終えると、サ○チェはまたパタパタと通常営業を開始。そんな彼のところに、違うメイドさんがお水のおかわりを持ってきた。
「お水のおかわりで〜す」
「あ、ありがと。ふぅ、ふぅ」
パタパタ
「暑いの?」
「う、うん。ふぅふぅ」
「じゃあ、扇いであげる!」
何⁉︎
メイドさんは彼からメニューを取り上げて、両手で持つと大きく彼を扇ぎ始めた!
(そ、そんなことしたら!)
心の声が漏れそうになるオレ。
「あ!ふぅ!ふぅーーーー!」
彼はメイドさんの風を顔に受け、悦な表情で身をよじらせていた。
完全に逆効果だ…。
確実に彼の体は以前にも増して熱を帯びている。
サ○チェめ…、チクショウ…。
あんな事されたら完全に"お値段以上"だ…。
メイドさんが去っていったあとのサ○チェのニヤけ面ときたら…。エクスタシーに満ち溢れていた。
やはりプロは違う。楽しみ方を知っている。
オレ達は空になったグラスを見つめてそう思ったのだった。
◆
帰り道、少し大人になったオレ達は、
「あれはサ○チェだよね?」と、お互い確認しあい駅に向かった。
皆の初体験は、概ね満足。といった感想。
「来週も行けたら行こう。」というオレの提案に、
二人は「行けたらね。」と、あいまいな返事を返してくれた。
何ていうか、オレ達の"週末ご主人様"生活が始まった。
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