めし
井川省みる
醤油ラーメン小ライス付き
休日。昼間。とある地方都市の駅前商店街、ビルの一階に位置するラーメン屋。
そこは常に大勢の客で賑わっており、時には行列も出来るほどだ。
丁度よいランチタイム、俺はこの店のラーメンを食べるためにドアをくぐり店へと入る。
「いらっしゃいませー」
店員の大きな掛け声が店内に響き渡る。
俺は目の前にある券売機を眺め、メニューを選ぶ。
醤油・塩ラーメン、一杯680円。
やさいラーメンや味玉ラーメン、海苔ラーメンは780円。
ネギラーメン830円。チャーシューメン930円。トッピング各種50~100円。
昼飯はなるべく安く抑えたい俺にとってラーメンはごちそうでもあった。
財布の中身と相談した結果、気分的にも醤油ラーメンを食べたくなってきたので、券売機に小銭を入れ、醤油ラーメンの食券を買う。
店員へと渡すと、ライスは付けるか、サイズは大中小どれにするか、麺の固さ、味の濃さ、油の量などを訊かれてきた。
俺はライス小、麺柔らかめ、味普通、油普通と答えた。
カウンター席へと案内され、出された水を一口飲む。氷入りで冷えていて美味く感じた。
周りはラーメンを食べている客の姿で一杯だった。男が多いが、時々女性も混ざっているようだ。
程なくしてライスがカウンターへと置かれる。
この場合、ラーメンが届くまで食べるのを待つか、ライスを一口食べるかで派閥が分かれると思われる。
俺の場合はライスに調味料のにんにくペーストを大量にかけ、コショウを満遍なくかける。
そして一口頬張る。にんにくらしいピリッとした食感が口の中に行き渡る。次第にコショウの辛味も来た。
これだけでも十分美味いが、本当の戦いはこれからだ。
何故なら、ここにきてやっと塩ラーメンが目の前に置かれたからだ。
この店のラーメンはスープに特徴があった。
大抵醤油や塩ラーメンのスープと言うと油が適度に入り透き通った色のさっぱりした風味のスープを想像するだろう。
だが、この店のスープは一味違った。
豚骨ベースなのだ。
色は乳黄色で不透明の濁ったもので、油もそこそこ多くドロッとした味わいになっている。
さっぱり系が好みな俺にとって、このスープを始めて目にしたときは正直言って面食らった。
だが、スープをレンゲですくい一口入れてみてその認識を改めた。
美味いのだ。
口に入れた途端、コクがありまろやかな味わいが口中を満遍なく行き渡り、食欲をどんどんそそらせてくれたのだ。
それ以降、俺はこの店でラーメンを食べる時はまずスープから口に付けるようにしている。
そして、このスープをレンゲで先ほどのニンニクライスコショウがけに少々かけおじやのようにする。
本当にこれが美味い。ライスとスープの相性が非常に良いのだ。
ライスを咀嚼するたびにほのかな甘みを感じるが、このスープのまろやかさがさらに甘みを足してくれているかのように感じられる。
ラーメンの器にある具の海苔を箸に取り、ライスに巻くようにして救い食べる。美味い。美味すぎる。
店の方もこの食べ方を推奨しているのだ。この世にこれほど相性の良いものがあるだろうかと言わんばかりの美味さだった。
もちろん、肝心のラーメンの麺も美味かった。
太目でもちもちとした食感であり、比較的固めの麺でもあった。
それがラーメンのスープが程よく絡んでいるのか、麺を咀嚼していくうちに程よい固さが解れてき、麺とスープの味わいが染み渡っていく。まるで虜になっていくようだった。
ライス。麺。ライス。麺。時々具。水。猫舌なのに、それを気にする間もなく次々とラーメンライスを頬張っていく。
そうこうしていくうちにライスの器はすぐに空になってしまった。小盛りだから当たり前か。
中盛り以上でもいいのだが、それだと腹に収まりきらなくなってしまう事もあり、ライスは大抵小盛りで頼むのが俺独自のルールでもあった。
残ったラーメンを啜り、器を両手に持ち、スープを豪快に飲み干す。
量も胃袋にちょうど収まった。最後に水を飲んで〆。本当に美味かった。
店員が空になったラーメンの器を確認すると一か月有効のトッピング無料券を手渡してくれた。これを20枚以上集めると様々な景品と交換出来るようになるが……この店にはそこまでしょっちゅう行かないので、20枚も集める事が出来るのかはまだわからなかった。
「ごちそうさまです」
そう一声かけ、荷物を手に取り俺は店を出る。
「ありがとうございます!」
店主の大きい声が俺の耳へと入っていった。
いいランチタイムを堪能した俺は買い物をするために商店街へと赴いていった。
「いつかは固めの麺に再挑戦しないとな……」
めし 井川省みる @akayama_kaeri
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