第2話 Twitterの宣伝は数字に直結しないと思え!
「教えてお兄ちゃん!」
「なんだい、妹よ」
「エヘヘ……実はね、最近Web小説を書き始めてみたの」
「ほう、どんなのだ」
「それは恥ずかしくて見せられないんだけど」
「(BLだな)」
「でね、創作用のTwitterアカウントを作って宣伝してみたの!」
「なかなか工夫しているじゃないか」
「そしたらなんと9RTもされて!」
「おお、すごいな」
「でもね……小説のアクセス解析を見たら1PVも増えてなかったんだよう……これってどういうこと? 私だって他の人の宣伝たくさんリツイートしたのに!」
するとお兄ちゃんはフッと笑って、自分のノートPCを立ち上げた。
「なんだ、そんなことか。お前、Twitter Analyticsはちゃんと使っているか?」
「ツイッターアナリティクス?」
「やはり知らなかったか。Twitterのアカウントを持っている人なら誰でも使える、公式の計測ツールのことだ」
「計測ツール? なんだか難しそう……」
「何、そんなに構える必要はない。一度導入してしまえば使い方は簡単だ。自分のツイートをクリックするだけで、何人の人にツイートが見られていて、何人の人に宣伝で貼ったリンクがクリックされているか見ることができるようになるのだよ」
そう言ってお兄ちゃんはTwitter Analyticsの公式ページ(https://analytics.twitter.com/)を開いた。
「導入自体もそう難しくはない。このページから自分のTwitterアカウントでログインすれば、一時間後くらいには使えるようになる」
「それだけでできるの? とりあえずやってみようかなぁ」
Twitter Analyticsを導入してしばらくすると、私のツイートの右下に棒グラフみたいなアイコンが出るようになった。
「あれ、なにこれ?」
「それがTwitter Analyticsのアイコンだ。試しに自分の宣伝ツイートをクリックしてみなさい」
棒グラフアイコンをクリックしてみると、ツイートアクティビティというウィンドウが立ち上がって、私のツイートの下に数字が出てきた。
「インプレッション1,315、エンゲージメント総数30ってある。どういうこと?」
「インプレッションはそのツイートが見られた回数、エンゲージメントは反応された回数だ。エンゲージメント総数の下の”すべてのエンゲージメントを表示”をクリックしてごらん」
クリックすると、エンゲージメント総数の内訳が出るみたいだった。
・リンクのクリック数…12
・リツイート…9
・詳細のクリック数…6
・いいね…3
「え、もしかしてこれ……1,000人以上の人に見られてるのに、リンクをクリックした人は12人しかいないってこと!?」
「その通り。数字とは残酷、だがこれが真実だ」
「嘘だぁ〜、9回もリツイートされてるのに」
「そのリツイートした人というのは、誰のツイートでもよくリツイートする人だったりしないか?」
「(ギクッ)」
「リツイートが多い人はリツイートをミュートされている可能性がある。その場合、リツイートされたとしても有効インプレッションは0だ」
「そ、そんなぁ……」
「ちなみに作者自身のTwitterの場合、100インプレッションに対してリンククリックが1回でもあればいい方だそうだ。つまりCTR……クリック率で言えば1%、100人に一人ということだな」
お兄ちゃんはA4の白紙に”CTR(%) = click / impression × 100”と計算式を書く。
「だからリツイートが増えても小説のPV数が増えなかったんだね」
「もう一つちなむと、小説の宣伝よりも近況ノートの方がクリック率が高いらしい。それだけ世の中は広告や宣伝というだけで拒否感を持たれているということだ。つまりこう言い切ってもいいだろう--Twitterでの宣伝は数字に直結しないと思え、と」
「ものすごいブーメランだね!」
「ん? 何か言ったか?」
「ううん、今のは作者に対するメッセージだよ」
なんだそれは、とお兄ちゃんは呟く。
「ああそうだ、それにお前、他の人の宣伝ツイートを沢山リツイートしたと言っていたな」
「うん、みんなやってることだよ」
「いいか、よく考えてみろ。例えば、お前の作品のことを好きになったファンがいたとする。最新情報や作者の近況を知りたくてアカウントをフォローしようとしたら、なんと見知らぬ他人の宣伝ばっかりだった……さて、そのファンはどうする?」
「うう……フォローやめちゃうかも」
「そう。むやみなリツイート合戦は数値に直結しない上に、自分自身のブランディングで損をしている可能性もあるのだ」
「えぇ〜っ。じゃあTwitterなんてやらない方がマシじゃん。アカウント消しちゃおうかなぁ」
「待て待て早まるな。Twitterに全く効果がないとは一言も言ってないぞ」
「え、そうなの?」
「こういうのは自分が消費者だった場合のことを考えてみればいいのだ。例えばお前、TVCMはほとんどまともに見ないだろう?」
「うん、CMの間はスマホ見てるよ」
「だけどこないだコンビニで期間限定のハーゲンダッツを買ってきた。どこでそれが売っていると知った?」
「……あ、そういえば」
コンビニに寄った時に、なんとなくCMのBGMを思い出して買ったんだっけ。なんだか特徴的なBGMだったので、CMはまともに見てなかったけどついつい口ずさみたくなるのだ。
「刷り込み効果というのがある。普段興味を持たずやり過ごしている宣伝も、何度も見るうちにだんだん気になってくることがあるのだ。まぁ一つ疑問があるとすれば、なぜ毎日顔を合わせているはずの兄の分も買うという思考に至らなかったのか……」
「もー、それは悪かったって!」
「というわけで、地道にTwitterを続けていれば、直接的に数字が上がらなくてもいつか誰かが気になって訪れてくれるだろう。諦めないことが肝心だ」
「ねぇ他にできることは? そんな気長に待ってるなんてできないよう!」
「うーん、そうだな。ネタツイートをしてみたり、イラストや写真をあげてみるのはどうだ。ネタツイートは思い浮かばなければハッシュタグを利用するなり、今話題になっていることに合わせて呟くといいぞ。そこからバズって新たなフォロワーを獲得できる可能性もあるからな」
「ハッシュタグ?」
「なんだ、そんな事も知らないのか。#をつけてツイートをカテゴライズする機能だ。診断メーカー、季節のイベント、金曜ロードショー、企業のキャンペーンなどにはだいたいハッシュタグが付いている。ハッシュタグが付いているツイートを追って面白い事を呟いているアカウントを探す人もいたりするのだ」
「なるほどね。でもわたし、そんな面白い事つぶやけるかなぁ……」
「Twitterはダイレクトに中の人の人柄が表れるSNSだからな、自分がどういう風にアカウントを運用するのか、ブランディングが鍵だ。それは小説のキャラクター作りと似ているから、本来は得意分野のはずだろう?」
「! そっか、そう考えればなんか思いつきそうな気がする! ありがとうお兄ちゃん!」
「はっはっは、励みたまえよ。あと政治・社会関連の話題は人によって捉え方がそれぞれ違う分、炎上につながりやすいから極力避けるようにな」
「あ。そういえばお兄ちゃんはどんなツイートをしてるの?」
「フフフ……それはトップシークレットだ」
--後日。
わたしのタイムラインに面白いネタツイートが回ってきた。『うちの妹が変態すぎる件www』というタイトルの四コマ漫画がついたツイートだ。なんとリツイート数1,000以上。一体どんな人が呟いてるんだろう。とりあえずそのアカウントをフォローしてみることにした。
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作者のプチ補足(2)
小説用のTwitterアカウントを作成して一番驚いたのは、このリツイート合戦の激しさでした。
リツイートしてくださるのはとってもありがたいんですが、それが実クリックにつながるわけではないし、あなたのアカウントそれで大丈夫なの…? と余計な心配をしてしまうこともしばしば。
もちろんリツイートで見かけているうちにきになるということもありますが、まずは自分のアカウントのブランディングを確立してフォロワーさんと仲良くなるというのが一番の近道でしょう。
具体的には「この人の呟き面白い!」と思われることです。万人受けをいきなり狙う必要はありません。むしろ少し尖っていた方がTwitterでは受けたりするものです。BL好きならBLに特化した呟きを。その方が自分の趣味に似たフォロワーが集まってきて盛り上がりやすくなります。
……とまぁ、こんな偉そうなことを書くくらいなら自分のアカウント成長させろって話なんですけどね。精進します。
*2016.06.18追記
ちなみにTwitterは140字制限があるのでリンク貼ったら字数制限を超えてしまうのではと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、心配ご無用です。
Twitter側のサービスでどんなに長いリンクも22文字扱いにカウントしてくれるのです。もしもっと短縮したいよ! という方には短縮URLを作るサービスがありますが、どんなサイトに飛ぶのか分からない分クリック率が落ちる可能性がありますのでご注意ください。
▼代表的な短縮URL生成サービス
https://bitly.com/
https://goo.gl/
どちらもURLを入力して送信するだけで、短縮URLを発行してくれます。会員登録などは不要です。
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