第204話 作戦は……??
ずっと母の中で生きてきた。ずっと同胞たちの声は聞こえていた。
――我ガ同胞ヨ……
だからこそ、新たなる王は啼いた。
彼らの魂が救われるようにと。
――我ト共ニ……在リ続ケヨウ。
彼らは必死に
――コノ世界デ散ッテイッタ仲間タチヨ……同胞ヨ……
だが、その繁栄はもう叶うことはない。母体を失ってしまった。彼らの繁栄は潰えた。仲間ももういない。この世界で全てを失った。残されたのは王が一匹。
何を護れというのか。
――最後ニ……
仲間の死を、母の死体を、喰らった。
だからこそ、王は最後に願った。その命を賭ける意味を見出した。
――見セテヤロウ……我ラノ
これが終焉だと、奪われるままで終わることなどないと抗う。
――チカラを。
【さぁ、どうする。人間たちよ】
憎悪の塊が膨れ上がっていく。王からあふれる気概が攻撃を抑止する。命懸けで自爆を行う様相に刺激を与えることは出来ない。その光景を前に涼宮強とてお手上げだった。
――匂いがどんどんとキツクなってる……っっ。
刺激臭が漂う。どうすると考えている暇もあまりない。あからさまに爆発するマウスヘッダーの個体の巨大バージョンといって差支えがない。
――攻撃してもダメだ……ただ時間の問題だ。
「チッ――――ッッ!!」
爆発を阻止する術が何一つ思いつかない。攻撃や刺激が爆発のトリガーになるのであるかもしれないという疑念が脚を地に縛り付ける。刻一刻と時を争う中で思考は迷走を繰り返す。
――爆発に耐えられれば、あるいは……いや、オレはいいとしても……っ。
周りに人がいる。自分一人であればどうにかなるかもという判断が下せない。爆発を覚悟の上で特攻するにもリスクが払しょくできない。おまけに
――強殿は……だいぶ焦ってござるな。
涼宮強の表情で九条豪鬼は分かっている。ふざけていてもどうにかと真剣に打開策を打ち出そうとして足掻いている。追い詰め過ぎたが故に起こる事態もある。死に物狂いでこられれることの危険性。
――仕方ないことでござる、これは命の奪い合い。
命懸けの特攻を前にすれば、こちらも引きずり込まれる。
――手がないわけではないで……ござるが。
「
「おっさん……何かいい手があるのか!?」
豪鬼の問いかけに強は一縷の望みを託すように縋る。だが豪鬼とて上手く行く保証など持ち合わせていなかった。これは賭けだ。それでも、他に手はないと豪鬼は表情を崩さなかった。
「あるでござるが、多少無理をお願いすることになるでござるよ」
無茶な期待をかけられることには慣れている。
「あぁ、何でもこいだ!!」
――残された時間がない……爆発は避けられない。
強の解答を受け取り、僅かに微笑んで見せながらも焦りは消えない。
だが、自分が求められている立場など九条豪鬼には分かっている。
「ブラックユーモラス総員に告ぐでござる!!」
仲間に向けて声を上げる。ここから先はヤツの自爆との勝負。いかにして被害を抑えることが出来るか、それ以上に手はないと見極める。だからこそ、九条豪鬼が取るべき判断がある。
「ここから先は――!!」
リーダーである以上、負うべき責務がある。
「自分と涼宮殿だけにして欲しい!! 他の者は急ぎ自衛隊と合流願う!!」
隊員の安全確保と被害の縮小。涼宮強が生き残れない戦場であれば確実に今のメンバーは死を免れないであろう。爆発の衝撃は中心地から遠くに行けば僅かに弱くなる。
「おっさん……!?」
――オレを残して……他は帰すのかよ……!!
その判断でいいのかと九条豪鬼に問う涼宮強の表情。
「強殿……無理なお願いでござることは重々承知」
しかし、その顔に真剣で渋い侍の表情が返ってくる。それにはさすがの強も何も屁理屈を返すことなど出来なかった。この事態を招いたのは自分であると内心分かっているが故に遠ざかっていく杉崎たちを羨ましそうに見ることしかできなかった。
「で……俺ら二人でどうするんだよ、おっさん?」
残されたはいいが、肝心なことだけは聞いておきたい。
「作戦は」
――爆発することは免れない、だったら出来ることをやるしかない。
強の言葉を受けて、豪鬼はこれから無茶ぶりをする覚悟を決める。出来るかではなく、やるしかない状況でのこと。上手く行く保証もなければ、豪鬼自身も出来るかなど分からない。
「爆発した瞬間に」
それでも、九条豪鬼はいう。
「ぶった
≪続く≫
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