俺たちの関係をデットエンドで終わらせねぇ！！

第205話 始まりの英雄≪あこがれ≫と憧れに似た幼き者

「おっさんに任せろってことでいいのか」

　ぶった斬るという作戦に強は本当にやんのかと言わんばかりに豪鬼を試す。斬るといったのだから、その腰に差してある武器が答えなのだろと。

　自分でも出来ないことをやってのけるのかと、涼宮強は問う。

　――似てる……ほんとに……

　その表情に豪鬼は懐かしさを感じた。

『お前ひとりで良く持ち堪えたな……じゃあ、ココから先は』

　六体神獣の際に北海道で、ただ一人戦っていたサラリーマンに向けられた英雄の労い。いつの時代もヒーローは遅れてやってくる。ダメだと思った時に現れた始まりの英雄。

　助かったと思った――。

『二人で行くぜ』

　その言葉に豪鬼は衝撃を受けた。

　頭がクラクラした。自分を英雄なのだと思いもしなかった豪鬼。本物の英雄が来たのだから、ココから先は自分は部外者になると思っていた。

　ただ、涼宮晴夫の姿をよく見て分かった。

『わりぃな、ココに来る前に別の一体を倒して来てんだ』

　その言葉通り黒服が汚れて破れていた、万全の状態とは言えなかった。

『俺様、ひとりじゃちょいキツイんだわ』

　自分が戦っている化け物を一体倒してなおも北海道まで駆け付けた英雄。その言葉に逆らえない状況を察する。それでも弱気な心が俺でどうにかなるのかと豪鬼の頭を不安で下げさせる。

『出来るだろ』

　下げていく頭を上げろと言わんばかりに言葉がぶつかる。

　簡単に言ってくれる、お前の不安などどうにかしてやると。

『俺様……』

　『始まりの英雄』と言われし、漢は真っ直ぐに自分に問いかける。

　英雄と自分の間にあるものを全て取っ払うように晴夫は九条豪鬼に言う。

『――――と九条豪鬼（オマエ）なら』

　幾度となく異世界で無茶ぶりをされてきた。それでも、九条豪鬼はどうにかしてきた。だが、その無茶ぶりだけはいままでと違う風に九条豪鬼に聞こえた。

　焦りや不安を自分に与えてくるものだった。

　どうにかしなければと思う、自分がどうにかするのだと重く、

　自分にどうにかしてくれと願う言葉だったはずなのに、

　涼宮晴夫の言葉はただただ真っ直ぐに胸を貫いた。

　自分を疑う心よりも強く、

　英雄（あこがれ）は自分を信じる瞳を向けてくる。

　出来ないなどと言わせないと。

　憧れ（オレ）がいうのだから――

　お前は黙って着いて来いと。

　無茶ぶりには慣れていた。どうして、オレに期待すると何度も陰で嘆いた。ただ、その一瞬だけは違った。始まりの英雄などと大それた遠い存在であったからこそ、言葉の重みが違う。

　涼宮晴夫という漢の纏う空気が普通ではないからこそ――

　自然と迷いなく刀を握れた。

　その時の光景が蘇った。遠き年月を経てまた自分は試されている。

「爆発をぶった斬るなど」

　幼くとも憧れに似たような風貌、その人を試すような問いかた。

「拙者ひとりでは無理でござろうな……」

　だからこそ、豪鬼は涼宮強に答えを

　渋く笑みを浮かべ返す。

「しかし――」

　出来なくともやらねばならぬ時もあると剣豪は知っている。

　刀の柄に自然と手が赴く。

「拙者と強殿の二人なら」

　目の前で強大な爆弾が見えていようとも恐れよりも、期待が勝つ。まさか自分にこんな日が来ようとはと。あの日が九条豪鬼の人生を一変させた。涼宮晴夫という英雄に出会った六体神獣という最悪の日が全ての始まりだった。

「出来ると思うでござるよ」

　と言い、九条豪鬼は涼宮強に信じていると瞳で語る。

≪続く≫