第186話 王道で鉄板

 たった一つの言葉だった。たった一言の言葉だった。


【絶望と希望の風が吹き荒れる……】


 明らかに戦場を覆う空気が変わっていく。時間だと告げたその瞬間に黒服たちの表情が変わっていく。魔物たちも行軍をやめて見上げた。異界の王はその身に恐れを浮かべる。その光景にヘルメスの瞳孔が開く。


【――決着のトキだ】


 スクリーン越しに見ている神ですらわかる、ここが決着の場面だと。


「こっちの攻撃アイサツがマダだったよな……」


 火神恭弥は異界の王に言葉をぶつける。最初の一撃を受け止めてからどれだけの時が過ぎたのだろう。その一撃に対する礼を尽くしてやると鋭い眼光が異界の王に存在をぶつける。


「随分と待たせて悪かったな――」


 白き炎を掲げ、睨みつける黒服に異界の王は構えた。


 黒服というだけでも脅威の対象。さらに、その手に見たこともない異形の炎を備えていれば必然のことだった。異界の太陽よりもまぶしく、異界の夜空に浮かぶ星よりも大きい存在に。


【共に前を歩く者、かたや異界の王であり、かたや人間】


 ヘルメス以外、見ている誰もが言葉を発さなかった。二人の先頭を歩く者の緊張が場を支配していく。決着の刻と知るが故に誰もが見守る。これはどちらにとっても希望であり、絶望を描く、結末の勝負。


 火神恭弥が創り出した白き炎が何を齎すのか、ということを見守る他ない。


「あとは任せましたよ……火神さん」


 槍使いは自分の出番は終わりだと悟り、異界の王から離れる。その光景を知りながらも王は一人の漢から眼を離せなかった。この戦場の空気を変えてしまったのかなど、一目瞭然だった。


 あの白き光が、黒服たちに、希望を与えたのだと――。


【二匹の歩んできた道は違う……王となる宿命の道】


 生まれてから敗北など知らぬ存在。究極の生命体であるが故に負けることなどない。別格であるが故に必然の先頭を歩いてきた者。世界そのものを手中に収める覇道を築いた王。


 対するは――。


【始まりの英雄を追いし者……敗北を背負い歩み続ける道】 


 始まりの英雄である晴夫とオロチの後に着いていった存在。追いかけ続けたが追いかけることを拒絶されし者。さらに、銀髪の天才に敗北し代わりを務めることも出来ず、燻り続ける漢。


 端的にまとめれば勝敗は歴然なのだろう。


 ずっと敗北をしている状態で歩き続けていただけの火神恭弥オトコ


【皮肉なモノだ……コレを皮肉と言わずになんと言えようか】

【シヴァ様……】


 冷めた瞳で火神恭弥を見下ろすシヴァの顔にパールヴァティーが不安を浮かべる。あの一人の立っている漢がインドの最高神が一人である夫をかき乱す。


 あの白き炎が異質であることを知らせてくる。


 この場の息が詰まるような緊張感を生んでいるのは、


 火神恭弥に他ならない。


【決着を試されるのは歩んできたそれぞれの道の答え……】 


 道が交わり、交差する。世界改変により交わることのなかった世界が交わる。二人の道を問いただすようにぶつける。どちらを求めるのかと世界が決める。王と敗北者の戦いに決着を求める。


「どうですかね……お義母さん……」


 不安そうに母が原稿を読んでいく姿を見ていた。全てを書き終えて一番初めの読者に感想を求める。ふぅーと一息ついて義母は静かに原稿を置いて、氷彩美を見ずに壁を見つめ、義母は問いただすように聞いた。


「いつから、こうしようと考えていたの……このちゃぶ台返し?」


 氷彩美が描いたこれまでの展開はここ最近ずっと憂鬱な展開が続いていた。何をやっても上手くいかない状況がずっと主人公に降り続いていた。その結果は読者アンケートに如実に表れていた。


「…………初めからです」


 憂鬱な展開の連続にアンケートの順位はずっと下がり続けていた。誰もが見たくなかった展開だった、誰もが求めていない展開だった。そんなモノを書き上げて来てしまった。


「そう……」

 

 読者が離れていくのは必然だった。まさか、そんなことを初めから考えていたなど知る由もなかった。アシスタントを続けてきた義母ですら、こんな展開があるなんて思いもしなかった。




「話の途中でを殺すなんてね……禁忌タブーでしょ……」 



 ソレはどんな漫画に於いても、どんな作品に於いてもタブーとされる。最後に死ぬことは許されても、道半ばで主人公が死ぬなんてことが許されるはずもない。誰もがその魅力的な主人公の人生モノガタリを求めるのだから。

  

 そんなことをすれば、読者は離れていく。


「でも、コレが書きたかったんです、私は」


 それでも、氷彩美は書いてしまった。


 そうなることを、禁忌だと分かった上で、そういう人生モノガタリを書きたかったと彼女は言い切る。そこに後悔は多少あるとしても、読者への裏切りはあったと分かっていたとしても、彼女はやったことに迷いはないと言い切った。


 静かに二人は目を合わせて、


「「ふふっ……ふふ」」


 笑いあってしまった。とんでもないことをしていると笑えてしまった。


「氷彩美ちゃん、面白い! すごく面白い!!」

「ですよね!!」

「だって、ずっと主人公だと思っていたリーダーがまさか主人公じゃなかったなんて……おまけに主人公の単なる腰巾着だと思っていたこっちがずっと主人公だったなんて!! いい、スゴクいい!!」

「初めから、そっちが主人公でずっと話を作ってたんですよ!!」


 二人はやってやったと声高らかに感想を言い合う。ずっと先頭を歩いていたリーダーを誰もが主人公だと思うように構成し、途中でそのリーダーは死ぬことになる。


 そこで物語は終わらなかった。仕方なくリーダーの後を任命される若者。


 所詮、主人公の隣にいただけの人物としかされていないキャラクター。


「あぁー、もう気が気じゃなかったわよ! ずっと……だって、こんな上手くいかないリーダーなんて……魅力がないじゃない。この子がリーダーになってからずっと気がかりでハラハラしてたのよ」 


 しかし、今まで読者が読んできたのが、本当に今まで描いていたのが、


「リーダーになってから、仲間からは罵倒されるし、それでも力が無いのに強引に行こうとして上手くいかないし、何やってんのよと思ったし。ずっと挫折ばっかでなんか見ててかわいそうだし……」


 誰の人生モノガタリだったのかを明らかにする話。


「それでも、元主人公の跡を継ごうとずっと苦悩して……」


 魅力など何もなかった人物の人生。


「ずっと悩んでて、苦しんでて……っ」 


 あまりに魅力的な元主人公との対比が卑屈だった。なんでも上手く行っていたところが主人公が変わるだけで何も上手く行かなくなる。それでも話は続いていたのだから、読者の気も滅入っていた。


「頑張ってて……っっ、ごめんなさい」


 自然と涙がこみ上げた。挫折ばかりだった、苦悩ばかりだった。 


 そんな背景を知っているからこそ、尚のことようやくと思えたから涙が出た。


「ようやく……ようやくなのね」

「お義母さん、ようやくなんです……長い時間がかかったけど」


 母の涙を拭う姿に車いすから笑って見せる。


 連載当初からずっと一緒に書いてきたからこそ、二人は思わず微笑み合う。どうしても最初は魅力が足りなかった。リーダーと比べれば劣るのだから、しょうがないことだった。単なる後を着いて行く一人だった。


「えぇ……」


 それでも、ずっと話を重ねてきたからこそ、


「……リーダーになれたのね、」


 成長し、魅力が引き立つ。


「みんなに認められるリーダーに……っっ」


 あぁ、ダメねと義母は涙を拭う。その姿に氷彩美は笑って見せる。


「ありがとうございます、お義母さん」


 一緒に漫画を書いてくれてありがとうと氷彩美は伝えた。


 それに母は首を横に振る。


「氷彩美ちゃんのおかげよ、氷彩美ちゃんが娘になってくれてよかったわ……」

 

 義母は微笑み彼女に気持ち込めて言葉を伝えた。その言葉を受けて、氷彩美は静かに視線を下に落とした。素直に嬉しい気持ちがある。


「いや……私は……」


 それでも、自分の姿を見るとそうとは言い切れなかった。


「こんなんですし、ご迷惑ばかりで……はは」


 歩けない体、治らない呪い。ずっと車椅子でしか動けない。


 だからこそ、苦笑いしか出来なかった。 


「そんなことない、そんなことないわ!」


 そんな氷彩美を怒るように義母は声を上げた。真剣に氷彩美の瞳を見つめて、そんなことを言わないでと伝えてくる。氷彩美にとっては、その言葉に胸が痛かった。


「……っ……あ」


 満足に嫁らしきことなど出来ていない、だから言葉が続かない。


「氷彩美ちゃんは覚えてる? 私たちが初めてあった時のこと」


 そんな氷彩美に語り掛ける火神の母。


「あの時ね、私ね……大変だったの。高校受験をきっかけに恭弥ちゃんは私のいうことを聞かなくなるし、お父さんにはホテルで怒鳴られるし」


 足立工業高校の受験をきっかけに母は家での立場を完全に失くした。ホテルで二人の言い合いを止めようとしたら黙ってろと言われ、泣き崩れても優しい言葉の一言も二人からはなかった。


「結婚してからの私の人生ってなんだったんだろうって……」


 おまけに男二人は、なにやら意気投合していた始末。


「そしたら、恭弥ちゃんが女の子を家に連れこんでくるし……」


 思い出して欲しいと、氷彩美に語り掛ける。


「あなたが家に来たの……氷彩美ちゃん」


 高校入学前の準備期間に火神が氷彩美を自分の家に連れてきた。それが、南氷彩美と火神母の初めての対面だった。ぐれた息子が連れてきた女を阿婆擦れと思ったことは言うまでもない。

 

「恭弥ちゃんがグレタのもこの女のせいかって思ったわよ……」


 あの時はいまましく見えていた。全てをこの女のせいだと思った。

 

「ただ見た目は普通で、お茶を入れるのを手伝うとか言い出して……」 


 どうにでもなれと思いながら、息子の客人にお茶をいれようとした母の手伝いをする氷彩美に驚いた。なんなのよ、この子と思っていた。


「何しにウチに来たのかしらって聞いたら……」


 目的はなんなのか分からなかった。恭弥の彼女なのか、それとも金目当ての汚い女のか。人生のどん底だったからこそ、そんな汚れた眼で氷彩美を見ていた。


「ツッパリの仕方を教えにきましたって……ぷぷ」


 思い出したら笑えてしまう。それでも、当時は何を言われてるか分からなかった。若者言葉のせいもあり、真面目な風貌で訳の分からないこというヘンテコな娘だと印象を持った。


「いきなり不良漫画を出してきて……私と恭弥に説明しだして……」


 人生のどん底で訳の分からないことばかり起きて、火神の母親は当時もう何がなんだか分からず若干やけくそ気味にその話を聞いていた。そんな母を前に瞳をキラキラと輝かせて好きなモノを語る娘。


 それが、南氷彩美だった。


「ここがいいんですとか、これがツッパリですとか。ここで仲間を助けに行くのが友情ですよねとか、この不条理に抗うのがツッパリなんですよって……ずいぶん熱く語ってくれたわね」


 義母からそんな昔の話をされて氷彩美は顔を真っ赤にする。


 あの時は何かが気が大きくなっていた部分があった。火神に夢の話を打ち明け、本物の不良で晴夫とオロチの喧嘩を見て、さらに火神がその二人と同じ高校に行くなどと聞いていてもたってもいられなくなっていた時期。


「家にどっさりと不良漫画を置いて行ってくれて……」

「……っっっ」


 気合いを入れて火神を立派な不良にしようと協力を買って出ていた時の事。


 だが、そのおかげで無事に火神恭弥は足立工業高校でデビューをかます。


「もう訳のわからないことだらけで……私。なんとなく自分が他人に対する見栄とかで生きてきたんだとか分かってて……お父さんから離婚とかされたらどうしようとか怯えてて……」


 あの時、本当に義母は精神的に追い詰められていた。自分の地位や息子の評価ばかりを気にしていた。それだけが自分の持っているものだった。それら全てが崩壊しかねい状況だった。


「なんとなく、貴方の輝いた顔が忘れなくて……」


 ほんの気まぐれだった。家のリビングにどっさりと積まれていた。


「手を伸ばしたのよ、漫画ってものに。初めて手を伸ばしてみたわ」


 手が自然と伸びた。何が息子を変えたのか答えがあるのか、そんな興味もあった。


「とりあえず、一冊目は惰性で読んで、続きを見て」


 もう人生は終わりだと思いながらも、漫画を読んでいた。


「気づいたら、読んでいたのが積みあがってて」


 ソファーで横になって読んでいたのが、いつのまにかちゃんと座って読んでいた。


「次に氷彩美ちゃんが家に来た時に……私は続きはないのって聞いたのよね」


 氷彩美は顔を上げて不思議そうに義母を見た。


「それから、いっぱい漫画を借りて読んで、なんとなくツッパリとか分かってきて」


 過去の変な話をしているのに、笑って嬉しそうに、


「そしたら、恭弥ちゃんのやりたいことも分かってきて!! そうそう、美容院とか二人で探したわよね! 恭弥ちゃんの髪型をどうしようとか、あのキャラに寄せましょうかとか!!」

「…………お義母さん」


 輝いた顔をしている。その顔を氷彩美は静かに見つめた。

 

「そうそう! ウチはお金はいっぱいあったから、一人前の不良にする為にドクターマーチンの靴とかカバンに鉄板仕込めるように特注にしたり、恭弥ちゃんにバイクも買ったわね。カワサキのゼファー400よ!!」


 その顔はあまりに眩しく、その優しさは瞳を覆いたくなる。


「お義母さん……っ」


 まるで自分と一緒にいれて楽しかったんだと言わんばかりに話している姿に。


「晴夫さんと恭弥が一緒にチーム作って全国制覇なんかしちゃって! おまけに晴夫さんたちと高校最後の時に警視庁に殴り込みに行って……本当に大変だったわね。それで会社を継ぐのかと思ったらブラックユーモラスなんて……不良の自警団作って、今や立派になりました」

 

 火神恭弥とずっと一緒にいた氷彩美の姿。それをちゃんと見ていた。


「お義母さん……っっ」


 ずっと一緒に見てきたじゃないと義母は微笑む。


「あなたがくれたのよ、氷彩美ちゃん……」


 鼻をすする氷彩美の車いすの前に義母は歩いていく。


 涙をぽろぽろと流す、彼女の肩をそっと抱き寄せるように。


「あなたが私を恭弥ちゃんと家族にしてくれた……あなたが私にこんな世界を教えてくれた。漫画も貴方も私は――」


 震える肩をただただ優しく包み込むように、


「好きよ。私の人生で一番の自慢は貴方よ、氷彩美ちゃん」


 愛情を義母は注ぐ。漫画など低俗なものなど吐き捨てる過去の自分はもういない。彼女に出会えたから、いいなりの息子などもういない。彼女が息子を変える一部だったから。


 ――お義母さん……恭弥くんのお義母さん……っっ。


 その優しさに包まれて涙が止まらない。


 彼女は思い出す、その温かさが幸せなことだと。


『結婚すんぞ……』


 家族になれるということが幸せなことなのだと。


『恭弥くん……』

『もう待つ必要もねぇだろ……もういい頃あいだ』


 車椅子を押しながら歩く火神のプロポーズに氷彩美は顔を下げた。同じように氷彩美は自分の姿を見た。自分の動かない脚を、動かない体を。彼女にとって、ソレは呪いだった。


『嬉しいけど……無理だよ……』


 治ることのない呪いだった。


 動けないことがダメだったわけじゃない。


 車いすに乗っていることがダメだったわけでもない。


『だって……私は……』


 彼の幸せを叶えることが出来ないことが分かっているから、彼女は苦笑いする。





『子供が生めないから……恭弥くんとの子供が……』



 

 呪いで下半身は機能しない。その呪いを解くスベをずっと探していた。それでも、いたずらに年だけを重ねて見つからなかった。だからこそ、彼女は彼の幸せを叶えられない。


『恭弥くん、だから――』


『間違えんな』


 彼女の言葉を遮るように車いすが乱暴に止まった。彼は真剣に彼女の眼を睨みつける。そんな幸せなど望んでいないと。言った意味が分かってないと。


『俺は子供こどもが欲しくて結婚すんじゃねぇ……』


 静かに車いすが動き出す。氷彩美は不思議そうに火神の続きの言葉を待つ。


『俺はお前と……』


 そんなものを願っていいのかと彼を見た。 


『一緒に歩いていきたいから結婚すんだよ、この先もずっとな……』


 そんな未来サキを願っていいのかと下を向いた。自然と服が滲んでいく。


『歩けないよ……わたしっ』

『俺がお前を押してやる』


 涙がこぼれることを止められなかった。


『呪いが死ぬまで解けないかもしれないよ……っっ』

『必ず解ける……あてにならないが草薙のやろうが言ってた』


 自分の未来コタエを否定してくる。


『いっぱい、いっぱい……迷惑をかけるよ、こんな私は……っ』


 解けない呪いがかかり、歩けない、子供も産めない。そんな自分が必要なんて言ってくれるだけで幸せだった。そんな自分を大事にしてくれるだけで幸せだった。


 そんな自分を責める言葉を、


『背負ってやるよ、オレがお前の全部を――』


 否定して、


『だから結婚すんぞ、氷彩美』 


 未来へと押していく。優しくも強く、前だけを見て進んでいってくれる。


 ――恭弥くんのくせに……


 最初に一緒に帰らないかと話しかけた時は、


 それだけで筆箱を落としてひっくり返していた。

 

 ――あの恭弥くんのくせに……

 

 何一つカッコなどつかなかった。話しかければ挙動不審でカバンはぶちまけるし、勉強しかしてないようなアイドルオタクだったくせにと。そんな出会いだった。まだまだ頼りなくて、何もない少年だった。


 ――ほんとうに……恭弥くんは……


 それでも、二人で餓者髑髏がしゃどくろにさらわれた時に自分の前に立つその頼りない少年の背中に守られた。その時から何かを感じていたのかもしれない。火神恭弥という男に何かを、南氷彩美ミナミ ヒサミは。

 

『答えねぇってことは、YESだな』


 やさしさと想い出で呼吸など出来ないくらいに涙があふれる。


 ――ずるい……っっ……


 下を向く自分の世界は火神に押されて否応なく進んでいく。


 その世界にNoなどと言えるわけもない。


 心地いいその世界を一緒に歩けるだけでいい。どうかと。


 どこまでも続く、二人の世界を歩いていく。

 

 決められた道しか歩けなかった情けない少年が成長していく。誰かの跡を合うことでしか未来をみれなかった青年が自分で歩き出す。迷いながらも歩いてきた男が、漢になっていく。


 ――王道おうどうで……


 そんな姿を間近で見ていたからこそ、氷彩美は何も言えなかった。


 ――鉄板てっぱんだ……。


 その世界を二人で一緒に歩けたらと願ってしまったから。


《つづく》

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