第113話 変態と違う変態

「タクト君、私のどこが変わったか分かる?」

「わかるよ。パーマかけたのと、あと髪の色が少し明るくなった」

「ぶぅー」

「えっ……じゃあ、なんだよ」

「せいーかいーは……」

「正解は?」


 カップル特有のタメ。


「昨日より、もっとタクト君を好きになったところ♪」

「こいつ~♪」

「いたっ、おでこ突かないで!」

「可愛すぎるぞ、オマエ」

「へへ」

「へへ」


 へへ……


 俺もお前らのせいで変わりそうだよ。


 あー、殺してぇ……


 デスゲームに招待してやろうか、


 この野郎——。


 俺は藤代万理華と場所を移動し学内にある購買付きのカフェテラスに来ていた。


 そこは言わずもがなカップル率90%を誇るマカダミアの愛の巣。


 俺にとって、悪魔降臨するための儀式の場に近い場所である。


 本能が反応してアイツらの関係を滅茶苦茶に引き裂いてやりたい。


 いちゃつくなと迄は言わん。


 ——俺の視界に入るなと言いたいッ!!


「どうしたんだい、櫻井君? 顔が死んでるよ」

「すまん、これは俺のさがみたいなもんだ」

「櫻井君はおもしろいことを言うね、性とは」

「俺は変態属性が強すぎるからな」

「君にその自覚があったんだね……」


 一緒のソファーに座る藤代は笑みを浮かべて俺を見ていた。


 彼女の風貌は色に例えるなら白一色。


 アルビノという部類だろうか。


 近くで見るとそれは神々しい感じもあり、


 人間というよりは妖精といったような類に見える。


 髪が白く、まつげも白く、肌も白い。



 目だけは碧眼で透き通るように青い。


 体系は女子の平均といったところだろうか。


 あくまで、



 マカダミアの中の平均なので――


「なにをジロジロ見ているんだい?」


 そんじょそこらのパンピーとは比べ物にならないが……


「いや、まさか呪術ギルドの長がこんな容姿だとは思いもしなかったと思って、な」

「それはイイ意味でかい、それとも悪い意味でかい?」

「いい意味にしといれてくれ」


 ギルドとの接触以降ちょくちょくは話をするようになった人物の一人だ。


 呪術ギルドは大いに俺に興味があるようだ。


 まぁ、俺が興味を示したのがきっかけでもあるので、


 お互い様っちゃ様だ。


「櫻井くんはいつになったら、私のものになってくれるんだい?」

「藤代……お前は俺を呪術用の道具かなんかだと思ってるような言い方だな。俺を生贄にする気か?」

「そういう意味じゃないよ」


 まぁ早くギルドに入ってくれてことだろうと俺は思っていたが、


 やつは俺に体を寄せて上目遣いで見つめてきた。


 …………なんか、迫られている。


「私は君が欲しいんだ」

「語弊がある言い方を……やめろ」

「語弊も何もない言葉の通りさ」


 ―—ヤツはさらにグイと俺に体を寄せてきた。


「……からかうなっ」


 俺の胸にわざと自分の胸を押し当てて来やがる。


 おまけに俺の方が身長が高いからやつの、


 シャツの胸元の隙間が微かに見えちまってる!!


 藤代は自由人だ。


 発言に重みも無く飄々とする子供っぽさがある。


 しかし、どこか頭の良さをうかがわせる。


 そんな、アンバランスさがコイツが呪術っぽいところなんだろうが……。


「アタック失敗か……ちぇ」

「あのなぁ……」


 藤代は体を離し足をぶらぶらと揺らしている。


 ―—そもそも、コイツ……


「こういうことしてると、彼氏に振られんぞ………」


 この学校ではほとんどがカップルである。


 むしろ、独り身の方が希少種。


 だからこそ、会うやつは会うやつは彼氏彼女もちにしか見えない。


 例にもれなく藤代もそうであろう。


 もし同じ学校のカフェテラスで、


 他の男とイチャついてるところなど見られてみろ。


 それこそ修羅場に突入だ。


「振られないよ。むしろNTRねとられで燃え上がってしまうかもしれない」

「なんだ、お前の彼氏も俺と同じで変態なのか?」

「いや違う、」


 藤代は可愛らしい笑みで




「変態なのは——私の方さ」




 カミングアウトしてきた。とても、いらん情報を。


「マンネリを打破するために櫻井くんに変態プレイで攻めてもらってから、彼にそれを打ち明けるんだ。そうしたら、彼はどんな表情をするかな。どんな風に私を攻めるかな!」


 とても、変態です。


 恍惚の表情でマンネリ打破にNTRとか語る、藤代さん。


 見まごうことなき、変態です。


「もしかしたら、負けずに激しく変態プレイで抱いてくるかな!」


 アナタは間違いなく変態です。


「なんなら、櫻井くんを交えて3人でくんずほぐれつもいいなー!」


 とんでもない変態です。


「お前ら………カップルの情事に俺を巻き込まんでくれ」

「つれないなー。私は櫻井くんの変態性を見込んでスカウトしてるのに!」

「俺の変態とお前の変態のベクトルが違う。向かう先が違いすぎて、逆方向で、距離が遠ざかるように俺はドン引き中だ………」

「櫻井君、さては……」


 ドン引きする俺をまじまじと見て、


 ——なんだ?


 藤代はとんでもないことを言い放つ。


「昨晩、抜いてきたな!」

「ぶふっー!!」


 あまりのド直球の下ネタに俺は吹いてしまった。


「藤代、オマエは、なっ、何を言っている!?」

「私みたいな美少女の誘いを断るなんて、性欲がないに等しい! それなら、スッキリしている状態と判断するべき案件だ。よって、櫻井君は本日尿検査するとたんぱく尿の診断がでるはず!」

「でねぇよッ! おまけに自分の魅力を一切疑わないその自信がすげぇよ!!」

 

 藤代のこういうところも呪術っぽい。


 頭のねじが一本ぶっ飛んでる、この女………。


 だが、藤代の攻撃はまだ止まない。


 また俺に体を密着させ太ももの辺りをエロティックに指で、なぞり弄って


「抜いてないとしたら櫻井君って、もしかして…………」


 潤んだ蒼い瞳で狙いが





「——童貞なの?」




 分からない質問をしてきた。


「うるせぇッ! 童貞で何が悪い!!」

「やっぱりそうか! からかい涯があるよ、変態童貞櫻井くん!!」

「変態と童貞をくっつけるなッ!」


 俺の太ももから指を外しやつはクスクスと口元を指で隠す様に無邪気に笑う。どうもこの手のやりとりに俺は弱いようだ。デスゲームで獲得しなかった誘惑への耐性。


 バレンタインデーでも美咲ちゃん相手にミスを犯すほどに俺は弱い。


「というか、その話をお前はしに来たのか?」


 俺は弱点を突かれつづけ堪らずに話題を変えることにした。


「あぁー、もう本題に入るのかい? もう少し会話で遊ばないかい?」

「なら、教室に帰るぞ」

「あー、待ってぇ!」


 帰ろうと立ち上がろうとすると両肩を抑えられソファーに戻された。


 その拍子に藤代の胸が若干俺の鼻をかすめた。


 生々しくも温かみのある軟らかい感触。


 そのせいで俺は座ることを余儀なくされた。今はすぐに立ち上がれん。


「本題に入ろう――」


 藤代は真剣な表情に切り替わりじっと俺を見つめている。


 ただ触れたが、故に何を聞きたいかはわかってしまった。


「呪術契約書のことを聞きたいんだろう……」

「話がいつもどおり早いね……いや、さっき触れた時か」

「何に使ったということだが、だ」


 その答えを聞き、


「っ————」


 藤代は悲し気な表情を一瞬だけ見せた。


 俺に悟らせないように切り替えるが、


 その一瞬を見逃しはしなかった、


 俺は――。


「噂通りということは、美川先生の娘さんを人質に取るために使用したで間違いないかい?」

「間違いない」


 藤代はため息をつき、


 俺に困ったような顔を向けた。


 ソレは呆れているのとは違う感じで――


「私はそんな為に君に………」


 どこか……悲しいと言ったような感じだった。


「呪術契約書の書き方を教えたわけではないのは、わかっているよね?」


 藤代に真っ直ぐな視線を向けられて、やましい気持ちが無いという訳ではない。俺は美川先生と戦う前に藤代の元を訪れ、呪術契約のやり方を指導してもらった。簡単なものでも構わないという俺の発言から、


 こんなことを予想していなかったのだろう。


 教師の娘に使うなどと。


 まさか、


 五歳児の子供に使うなんてことを――。


 俺が教えてくれと頼んだときに藤代は喜んで目を輝かせていた。


 それは俺が呪いに興味を持ってくれてると思ったからだろう。


 藤代の純粋な期待に対して、


 俺は不純な動機を隠して目的を達成してしまったのだ。


「なぜ、そんなことをしているかは、」


 これは、一種の裏切りと取られても俺は文句も言えない。


「ミカクロスフォードが誘ってきたギルド祭と関係があることなのかい」


 ここで嘘をつくことも出来たが、


 藤代の顔が真剣である分、



「——ある」



 俺も真剣に答えを返す必要があると思った。


 それが、また藤代に溜め息を一つつかせってしまった。


「それなりに覚悟があってやっていることはわかったよ。それに、そんな真剣な顔でじっと見つめられると照れてしまいそうだ……君は間近でみると顔立ちがいいからね」


 藤代は顔をそっぽに向けて納得はしないが、


 事情はわかったと言わんばかりのご様子。


 照れてるようには見えない。


「呪術系ギルドは、ギルド祭には出るのか?」

「出ないよ。ただ協力はさせてもらう」


 藤代は俺に顔を戻し、


「ミカクロスフォードには、まだ回答を出してないけどね」


 お前のせいだと眉を顰めながら


「この件がハッキリするまでは………答えを出したくなかったんだ!」

「変な気を遣わせちまって、ワリィ……」


 どうやら、五件中の一件に呪術が含まれていたようだ。


 おまけに俺のせいで出し渋っていたということか。


 それに前からちょっと心残りな件でもあったから。


 藤代が踏み込んできてくれた分、俺も前に出やすい。


「ついでに申し訳ないんだが……呪術契約書の」

「なんだい……?」


 そう、心に残っていた。僅かばかり気掛かりだった。





「解除の仕方を教えてくんない?」




 もう美川先生はココにはいないのだ。


 それにあれから一か月近く立っていることもあり、


 情報が漏れることもないだろう。


「櫻井くんの――」


 なら、何かの間違いが起きる前にそれを終わりにしておきたかった。


「そういうところを私は評価している」

「えっ?」


 どういう意味だ。困惑する俺を前に藤代は満足げな顔に戻っていた。


「まったく、しょうがないやつだ♪」


 先程、最初に話していた時の様な無邪気な空気に。


「教えるよ、紙とペンはあるかい?」

「あぁ、それなら」


 俺は胸ポケットからメモ帳とペンを取り出す。


 スラスラとペンを動かして行く藤代はどこか楽しそうだった。


 それは多分、呪術というものに対しての彼女なりの愛着なのだろう。


「ココにやり方は書いたよ。契約提示者が呪術契約を一方的に解除する方法をね」

「話が早くて助かる。恩に着る」


 俺が笑うと彼女も笑っていた。


「じゃあ、その恩は保健室のベットの上で返してもらおうか」

「それ以外でお願いする」

「せっかく、櫻井くんの童貞を貰ってあげようと思ったのにぃー」

「俺の童貞は渡せないが、俺の変態という称号はお前の前では霞んで持ってかれそうだ」


 お互いの皮肉に笑いながら返す。


 藤代は唇を尖らせて、


 残念そうな顔を作り話を続けた。


「私の彼氏には手を出す癖に、私自身には興味がないなんて不公平だ」


 ―—なに言ってる、藤代?


「俺を変態童貞ゲイ野郎と貶める発言はいただけないぜ、藤代さん?」

「何を知らぬ存ぜぬと。私はちゃんと彼から聞いているんだ。君がクマが出来た目で私の彼の体の至る所を触りまくって興奮していたことは報告を受けている」


 聞いたことねぇ……話だなッ!?


「櫻井くん、君は完全に我々に包囲されている!」


「オイ、ちょっと、その彼氏をココに呼んで来い。殺してやる………」


 どこの変態がそんな奇妙な嘘を流してやがる。童貞であるこの俺様に対して失言極まりない。人間性を疑う。いくら藤代の変態彼氏だとしても許せん。


 殺してやる――。


「おもしろいね、櫻井くんは。からかい涯がありすぎるよ」

「カップル共々、殺してやろうか?」

「私の彼を忘れてしまっているようだね。出会いは一瞬だったかもしれないけど、熱烈なアプローチを受けたと彼は言っていた。お前の体に興味あるから触らせろって君から求めてきたと」

「あ……ん?」


 まるで、さっきのが虚言じゃないみたいな……。


 俺が男の体をまさぐることがあっただろうか……


 知らない内にホモ的変態行為を働く人格が、


 出来る程に疲れすぎているのだろうか。


 仕事を休んだ方がいいのだろうか……。


 わずかに記憶がかすめる。俺の表情は崩れていった。


「まさか――っ」


 はっはっはというダンディな笑い声。


「アイツなのか――」


 歯がきらんと輝くほど白い歯で角刈り。


「藤代の彼氏がアイツ!?」


 頭に浮かぶフレーズ。




『いくぞー、マッスル!』



 洗礼の儀。ガチムチの筋肉。


 心の中で鮮やかにラリアットを決められたような気分。


 確かに俺はヤツにいった。


『ちょっと、その素敵な筋肉に触りたいのだが、いいか?』


「ふふふ、藤代!」


 寝不足で気が狂っていた俺は――


 ヤツの体の至る所を触りまくっていた!!


「オマエの彼氏って、あの筋肉バカマッスルなのか!?」

「ご名答。さすが櫻井くん」


 驚くべき回答に俺はまじかーとソファーに力なくもたれ掛かった。


 どう考えてもソコとココがくっつくなんて思いもしなかった。


 アルビノ変態とガチムチ筋肉のコラボなんて想像できるわけもない。


 だが――


「よかった。アイツが異世界人で………」

「どういう意味だい?」

「あんな、マッスルつけなきゃ喋れないやつが日本人だったとしたら、俺は文化庁に告発文を送りつけていたに違いない。義務教育で語尾にマッスルを付けちゃいけないことをちゃんと教育しろって。あと、出会い頭にいきなりマッスルラリアットかます危険性を…………」

「ハハハハハ――♪」


 自分の彼氏をぼろくそに言われているのに笑ってやがる。


 しかも、笑った顔がちょいと可愛く見える。


 変態性が隠れるような無邪気な笑顔だ。


 さすが異世界でヒロインやってきただけの経験はある。


「はぁー、笑ったよ。アルフォンスはちょっと変わってるからっ……ね」

「ちょっと、どころじゃない。頭おかしいレベルだ」

「私は彼のそういうところが愛おしくてたまらないけど」


 どうやら、本気でアイツを愛してるらしい。


 おそらく体の関係もあるのだろう。


 さっきの童貞なの?って聞くことは一歩先いってるやつの余裕的発言だ。


 そうか……藤代とマッスルか。変態カップルの頂点だな。


「アレはお前の呪いの一種なのか?」

「やめてよ、また私を笑わす気でしょ……もうっ」

「マッスルって、語尾につけなきゃ死ぬような呪いだろ………」

「だめ、アッハッハッハ――」


 腹を抱えて自分の彼氏で笑ってやがる。


 幸せな女だ。まぁ、笑わせてるのは不幸な俺だがな。


 笑いが落ち着き、藤代は涙目を擦ってから俺を見つめた。


「やっぱり違うね、櫻井くんは……ぁあー」

「違う?」

「実は君が呪術契約書の件で嘘をつくような人間か試したんだ、ごめんよ」

「試した?」

「私は風紀委員長の藤崎と友達なんだ。だから元からどういう目的で呪術契約書を使っていたかは予め知っていた」


 真剣な目で俺を見ている。


 だがそれは疑いではなく、


 信じてるというような意味合いを持った目だった。


「本当に知りたかったのは別にあるんだ………」


 藤代はスッキリしたと言わんばかりに、


 ソファーから立ち上がり俺を見ろしてきた。


 どうやら、今までのは俺を試していたということみたいだ。


 さらに言えば、何かの疑いをかけていたということ。


「ここ最近に不審な呪力の高まりがある。悟られないようにうまくやられているけど、かなり広範囲で何かの呪術式を発動するような気配がちらついてる」

「……それの術者を探してってことか」

「そうだよ。もしかしたら、君かもって思ったんだ。君がデスゲーム出身だというのも知っているし、君は知能も高い。呪術契約書を教えたのがきっかけで何かよからぬことを企んでなかろうかと、私は懸念した」

「それで違うってことか。それは正解だ。俺じゃない」

「まぁ君本人というよりは違う手練れが君を巻き込んでいるのかもと思ったが……」


 藤代は安心したと表情で語った。


「君が関係なくてよかった」

「本当によかった。疑いが晴れて」

「どうしてだい?」


 そんなことは決まっている。

 

「俺が藤代とはこれからも仲良くしたいと思ってるからだ」

「—————っっ!?」


 藤代の顔が赤く染まっていく。


「な、なな」


 真顔で言ったのがクリティカルを呼び込んだみたいだ。


 だって、俺イケメンだから。


「なんて、!」


 さっきの仕返しと言わんばかりの攻撃に顔を悔しそうに歪めてやがる。


「君は恐ろしい奴だ、櫻井くん!」

「童貞の仕返しだ、べー」

「童貞はそんなことやっちゃいけないんだぞ! る、ルール違反だ!! 卑怯だぞ!」

「童貞だから女子の扱いルールなんか知らねぇよ」


 赤くなった顔を落ち着けるように藤代は、


 深呼吸をその場で何回も繰り返していた。


「あぁー、もう。こういうのはキャラじゃないんだ………」

「そっちのが可愛いと思うぞ」

「ま、また!? そういうのは大事な人に言うべきだ!!」

「生憎、大事な人がいないもんで」

「くそー、アルフォンスに言いつけてやる!!」

「それはヤメロッ!」


 またガチムチに絡まれるのは勘弁だ。


 本当にアイツとは二度と会いたくない!!


「じゃあ、話は終わりだな」

「終わりじゃない」

「他にもあるのか?」

「呪術ギルドに入ってほしい」

「断る」


 俺が歩き出すと食い下がるように藤代も、


「入部してくれた特典にはスタート呪術パックも付けるから!」

「ソシャゲか……」


 小さい歩幅であとを着いてきた。


「呪いに興味があるんだろう?」

「呪術には限界があることはわかっている。特にこのマカダミアの中ではな」

「……それを言われるとキツイ」


 藤代が図星をつかれ戸惑っているようだった。


 まぁ、特に呪術なんてものは限界に行きついてしまう。


 術には媒介が必要だから――。


「それなら、私を好きにして良い権利も付けるから!」

「必死過ぎだ……それにオマエの中古貞操にあまり価値はない」

「ひどいことを言うな! さすがの私も傷つくよ!!」

「童貞を馬鹿にした報いだ。甘んじて受けろ、藤代」

「櫻井くんのいけず!」


 そうやってお互いからかいあって歩いてると、


「強ちゃんのばぁーかぁああああああああああああああ!」


 教室からすごい声がした。


 ソレはすごく怒っている様な女性の声だった。


 ―—なんだ……。


 それは確かに…………





 鈴木さんの声だった。




≪つづく≫

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