第42話 美咲ファンクラブ、近藤、土方、沖田登場!
皆さん覚えているだろうか。
美咲のクラスにある組織がいたことを。
美咲自身自分がモテることに気づいていない。
可愛い=モテるではないと思っている。
だが、美咲はモテる。
容姿も良く何よりエプロン姿が良く似合う。
家庭科の授業での調理実習ではプロ顔負けの品を易々と作り上げる手腕の持ち主であり、16歳という身でありながら近所づきあいも完璧にこなす愛嬌。さらに巨悪だった兄の学校支配を終わらせたマカダミアの女神。
そして、何より――
チッパイという需要が一部のマニアに刺さっている。
だが、残念なことにその事実に本人は気づいていない。
自覚がまったくないと言っても過言ではない。告られたこともない。
なぜなら強と晴夫が、
幼少期より完全なる裏工作を働いてた為に、
男子が近づいてこなかったのである。
幼稚園で近づこうとする男子が居れば兄の壁ドンがさく裂し、
壁に突き刺さった腕と鋭い眼光が二度と近づくなと告げる。
小学校では家に遊びに来た男子は腹痛で帰る。
けして腹痛ではない。
晴夫が呼び出して外に連れ出し、脅していたのである。
さすがに小学生から見ればひげ面の親父が、
ヤンキー座りして動物にわかるような殺気を出し本気の目で睨んでくれば怖い。
もはや、恐怖である。
膝をガクガクさせ御小便を漏らして退散せざる得ない。
さらに中学校で美咲に告白をしようとした男子などは神隠しのように突如として消えた。告白しようと踏み出した瞬間、背後から見えない影に連れ攫われるという怪奇現象。
これは強である。
常識など涼宮家にあってないもの。
この二人は平気でやる。
愛する美咲のためなら刺し違えても相手を殺すという意味不明な残酷な覚悟を持っている。犯罪も厭わない上にこの世で最強の親子であることが、美咲の歩むはずだった幸せな人生の道を大きく捻じ曲げている。
だからこそ、美咲の周りに特定の男子がいつくことはなかった。
美咲自身、惚れる前の櫻井の顔が近いだけで、
ドキドキして失神一歩手前になるぐらい男に不慣れである。
だって、仲のいい男子などいないのだから。
だが高校に入ってそんな彼女を見守る謎の組織が出来上がっていた。
ソレを知らずに彼女は軽率な行動をとり、学校に登校してしまった。
それは、月曜日の朝――
美咲が教室に入った時点で、
クラスに異変が起きている事に美咲は気づいていない。
明るく登校してくる美咲の姿を見た瞬間に三人に異変が起きた。
「なにぃッ!」
机を叩いてメガネが立ち上がった。
そいつは彼女がいる。だが彼女は巨乳である。
しかし、彼は美咲ファンクラブを立ち上げた会長であり、
変態一歩手前である。
見た目はメガネ委員長っぽい感じだが中身は断じて違う。バカである上にメガネというミスマッチバカ。なぜ彼女がいるのか不明な男である。
名を
「むぅふ!」
ポテチを口に運ぶ手が止まる者がいた。
こいつも彼女がいるが巨乳である。
だが、美咲ファンクラブ会員ナンバー1であり、副会長を務めている。体が太っていることからゴブリンみたいということで、
漏れなく、バカである。
「ペロッ!」
笛をぺろぺろしている手が止まる者がいた。
コイツは彼女がいない。
顔はそこそこ美男子であり特殊能力が笛を使うタイプである。中学時代のあだ名は牛若丸といわれていた。なぜなら彼の笛は木製であり顔が整っていた。
なぜ、彼女がいないかというと振られた。
それもこっぴどく。
笛を手入れするときにペロペロするのだが、その姿が気持ち悪く段々とヒロインは耐えられなくなり、捨てられた。笛を舐めている顔がキモいのでごめんなさいと。そいつはファンクラブ会員ナンバー2、名を
最後に書くが漏れなくバカである!!
名前の時点で運命的なものを感じるバカ3人。
美咲のクラスのチッパイ新選組。
それが美咲ファンクラブのトップスリー。
その日夜の研究成果が今、身を結んだ。
無駄に身を結んだ。
三人同時に同じことが脳内を駆け巡る。
――動かざること山のごとしではなかったのかッ!
もはや新選組であり武田信玄ファンという謎の組織。
それが美咲の野望を阻むことになるとは誰一人想像をしていなかった。
美咲自身そんなものがあることすら露知らない。
三名はアイコンタクトをし、休み時間の結集の意志を固める。
——緊急事態だ!! 土方、沖田!
——了解です、近藤会長!!
視線を合わせて場所と時間を目で通じ合う。
ファンクラブ会員同士は無駄にコミュニケーション能力が特化している。
そして、屋上に行き3人は会議をすることなった。
会長が静かに口を開く。
「お前ら、気づいたみたいだな」
「むぅふん!」
「会長が言われるということはそうなんですね。僕の勘違いかと思ってましたよ………」
「アレは動いている!」
「しかし、会長!」
沖田が事実を受け入れられずに白熱した議論をぶつける。
「あの山はほぼ一年間一ミリたりとも動いてません。なのに急にどうして!!」
「わからん……」
会長はミスマッチバカの癖にメガネをくいっとやりそれっぽい行動をした。
「まだ違和感としかいえん………」
だが会話の内容は至ってアホである。
ただ美咲の胸について仰々しく話しているだけである。
「むぅふ、なら写真判定するだな~」
「おー、さすが鬼の副長!」
「照れるんだな~」
人の胸を写真判定するなど正に鬼の所業。
勢いよく立ち上がった沖田に対して、
「では、私が!」
「頼めるか、沖田」
近藤はわかりきった確認をする。
だがそれに乗り気なのがバカである。
「会長、お忘れですか――」
髪をふぁさっとかき上げニヤけたツラで意気込みを返す。
「僕は盗撮の天才ですよ!」
「さすがだ、沖田!」
キリっとしているが、
言ってることは犯罪である。
次の休み時間に沖田が写真を撮ってきて確認作業のフェーズに移行する。
証拠を確固たるものとしてこの3人は悩む。
どうしたものかと――。
あくまで写真は写真。だが事実がそこにはある。
「どうするんだな~、会長」
「受け入れがたい事実だ……」
確かに若干の胸部の違いである。
それには漏れなく一緒に行動する昴の胸も乗っている。
明らかに金曜日の写真と違う。
同じ構図で完璧に変態の盗撮魔に取られた写真には違いがあった。
「どうするんですか! 美咲様が巨乳になってしまったら!!」
沖田の言ってることは、
チッパイで無くなったら美咲ではないとう確固たる意志。
昔付き合っていた彼女は巨乳である。
だからこそ、巨乳に憎しみがあった。おっぱいのデカい奴は頭に栄養がいってないと風潮している。玉藻辺りそこらへんは怪しいのだが勉強は出来てしまっているので、謎理論である。
しかし、沖田が論じる内容は、
彼だからこそ言葉に熱がこもっている。
「まだ早急………事実確認が必要だ……っ」
それがメガネをクイっとさせた。
「これにはトリックがあるはず」
「どうやって確認するんだなー」
なぜか鬼の副長の片手にはおにぎりが握られている。
いつも何か食べている。それがゴブリンこと土方歳三という男。
ここで会長は鬼の決断を断行する。
それは一度ひどい目に合ってるからこそ
ハードルの高さを示していたが、ここ最近の変貌に希望をかけた。
「お兄さんのデットエンドに確認しに行こう!」
「「えっ!」」
二人が驚くのも無理はない。
会長に関しては三途の川の一歩手前まで行っている。
あの夏の『鬼ぼっこ』で一番最初にやられいたはずだ。
「「会長!」」
それでも、なお進もうとする姿はバカ二人の心を動かした。
「ついて来い、土方、沖田」
「「ハイ!!」」
そうして、二度目の接触を試みた。
「あの~、涼宮先輩………っ」
メガネが襲る襲る強に近づいていく――。
一度植え付けられた恐怖そう簡単には取り除けない。
そこらへんが徹底されているのが死亡遊戯である。
相手の心をへし折る遊戯——。
「アンッ!」
軽く挨拶しただけなのに鋭い眼光が返ってくる。
会長の膝ががくがく揺れる。
もはや、PTSDに近い現象。
夏の死亡遊戯の影響が未だに残っている。
だが、バカだからこそ踏み込める一歩がある。
間違った覚悟が死地へと進む――。
「み、美咲さんの胸が大きくなってませんかっ!?」
「あっ――――?」
「ほぐぁアアアア!」
兄に妹のおっぱい状況を聞くという愚行が、
見事にデットエンドのアイアンクロ―を発動させた。
地から離れてバタバタとする足。
空中の空気をこれでもかというぐらいバタ足している。
そして、強は通路の横に隠れている気配に目を配らせる。
「おい、ソコの二人も出てこい――」
沖田と土方は両手を上げ壁から出てきた。
土方の右手にはフライドチキンが握られている。
だが、強とて少しは成長している。
一方的な暴力というのは好きでなくなってきている。
玉藻に止められているというのが一番デカい。
土下座事件以降、「もう暴力はだめだよー」と言われている。
そんな強は、とりあえず三人を階段で正座させ事情を聴くことにした。
「で、お前ら、うちの美咲ちゃんの彼氏か?」
怯えた三人は首を激しく横に振る。
強はまずほっと一安心。
「じゃあ、お前ら三人はなんだ?」
「美咲ファンクラブであります!」
会長は恐れずに解答を返す。
一歩ふざけた回答をすれば殺されるかもしれないという中で、
バカだからこそ踏み込める境地。
「ファンクラブだと……?」
強は顔に手を当てて考え込む。ファンクラブとはなんぞやと。
「そうです。美咲様をお慕い見守るクラブであります!」
ただ見守るという言葉にちょっと心が揺れ動いていた。
「会長の近藤勇であります!」
そして胸が大きくなっているというのも気になる。
なぜなら、金曜日の時点でオッパイスカウターを発動して確認している。
ソレを見間違えることなどないというオッパイ星人ならでは自信である。
「お前ら、なぜ俺のところに殺されにきた?」
「殺されではないです!」
もはや会長一人が喋っている。
「先輩に協力をして頂きたくお願いにお伺いしました!!」
だが確実に強の頬が緩んだ。
ぽたんと垂れ始めた。
何かが好感触であった。
強の中で反芻される言葉。
――先輩、先輩、先輩……。
この言葉は言われたことがなかった。
後輩など近づくわけもない。
恐怖の象徴と化していたデットエンドに恐れずに近づいてくるものなど、
何かの目的があるものか、
もしくはバカだけである。
そしてバカの熱意は心を動かす。
「なにか……証拠はあるのか?」
「あります! こちらの写真を」
二人で盗撮魔沖田の愛機『
美咲と木下が談笑している風景があった。
「やっぱり、お前……」
が、そこからが早かった。
「殺されに来たのかッ!?」
「あばばあばッ!」
二度目のアイアンクロ―が発動した。
強でもわかる。これが明らかな盗撮であることが。
不自然な角度から撮られている。
斜め上からの写真など普通に撮るわけがない。
ココで沖田が動く。
「違うんです! コレをちゃんと見てください」
「アァンッ!」
「あいたたたテタテテエッテッ!!」
二本目の空いた手でアイアンクロ―が沖田にさく裂。もはや両手で二人の顔面を持ち上げ、バタバタさせている地獄絵図である。
だが、そこでまだ残っている一名が動き出す――鬼の副長、会心の一撃。
「ほんわー、どすこい!」
「………………」
何語かもわからない言葉を発する副長。
両手が塞がっている強も若干動きが止まってしまった。
だが両手でカメラの画像を差し出しているのが強の目に入る。
そして、目が見開いていく。
「これは! バカなッ!!」
二匹のバカから手を放し急ぎ強はカメラを両手に画像を確認する。
左右に金曜日時点と月曜時点の間違いさがしのような構成で撮られた写真。
そして縦に何本ものラインが入っている。
それは位置を示唆する表示。わずかばかりだったが動いている。
「たった……三日で……!?」
――山が動いているッ!
「悲しき不毛な恵みがない大地だぞ!」
ライン一本分だったが確かに大地が動いている。
衝撃の事実に強は動揺の色を隠せない。
懐かしい妹の小っちゃい時の記憶が走馬灯のように駆け巡る。
お兄ちゃんと呼び中学生から体系が変わらない美咲が語り掛けてくる。
何一つ変わらない。髪型も顔も、無論胸の大きさも。
「どういうことだッ!!!」
三人に急ぎ事情を確認する強。
――しかし、写真のもう一点には気づいていなかった。
同じく写真に写っていた木下昴の胸も若干動いているということに。
《つづく》
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