恥ずかしい答え

あまね

第1話

テスト終了のチャイムがなるまで、後10分くらいになれば、答えの抜けなどないか確かめる。


それこそが、テストの点数を底上げ出来るかもしれない重要なポイントでもある。


目を皿の様にして注意深く見回すとある問題に引っかかてしまう。


問 人が空を飛ぶ夢を持つのはなぜか答えよ。


解 地上では、嫌な事が多すぎたから、そこで新天地を求めたから人は、空を飛ぶ夢を見た。



やや哲学的で、どう答えたら正解かが、サッパリわからない国語の問いに対して、進化論的な答えで、お茶でもにごして書いた答えだ。


平均点をあげるためなのか、それとも赤点族を駆逐するためなのか、はたまた、ゆとりや詰め込み教育、進学塾への反旗なのかはわからない。


毎回この担任教師が作る問題は、このような答えが存在するのかしないのかと言うよりどう答えたら正解なのかサッパリわからない問題が必ず存在するが故に、この先生が問題を作ったテストでは、百点満点をとった生徒は皆無だというのも頷ける話だ。


だから、ココは飛ばしても問題がないと分かっている。


でも、本当にこの答えでいいのかイヤに気になってしまう。


この答えは、いやに恥ずかしくないだろうか。


嫌な事が多すぎたから新天地を求めるっていうのは、詰まる所、仕事が長続きしないのは、俺にはあわないと職業を転々とした挙句、デカイ事するから、ミュージシャンになるからなどとのたまう、ニート的な言葉では無いだろうか。


そう考えると、恥ずかしい答だし、こんな答えが、青少年の学生のテストの答えであっていいはずがない。


いっそのこと書き直してしまうか、そう思い消しゴムで恥ずかしい答えを消す。


大体国語に進化論的な答えを書いたから、あの様な答えになってしまったのだ。


もっと、浪漫的に考えればいいはずだ。


解 自由の喜びがそこにあるはずだから。


そこそこ綺麗事のように見え、浪漫チックさが恥ずかしいが、自由とかよくわからないけど、青少年っぽい答えだし、これならば、丸はもらえなくても、部分点はもらえる気がする。



チャイムが鳴り終わり、答案が先生によって回収される。


その際先生がプッと笑いながら回収していたのをみて、白紙が一番恥ずかしくない答えだったかもしれない。




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恥ずかしい答え あまね @kinomahiru

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