病性少女の見た万華鏡「病院探訪少女」
※この物語はフィクションです。実在する人物、組織、建物とは関係ありません。
私達の瞳は括られたフレームの中からしかその世界を見出だせない。だから一人ひとり違う世界の風景を見ている。だから真実だっていつも人によって違うのだ。でも似たりよったりなのだろう。しかし、私の瞳の中にあるフレームはきっと他の人には無いフィルターがかかっている…似たりよったりでも無い、私の感じた世界は明らかに何処かが違うといつの間にかそう思うようになっていた。
そして、人と異なる厄介な体質もあるせいか、感じる事が違う。その誤差の大きさにとても苦しむ事がある。そんな生活は少しも楽しくは無い。
そんな事を思いながら、私はいつものように病院に来ていた。通院だ。大学病院だからか、待ち時間が長い。呼び出し受信機の入ったファイルをバッグにしまい、院内の図書室に向かう。時間がたっぷりある時はここでいつも暇潰ししている。
取り敢えず目に付いた本を手に取り、椅子に腰掛ける。ふと隣を見ると、何やらノートに書き込んでる、私と同年代の様な少女が居た。ブツブツと独り言を時より口にしながら考えている。
すると少女は私の方を向いた。そしてハッとしたように視線を背けた。
「す、すいません…。」
彼女は小さな声で謝った。
「私の方こそ知らない人をジーッと見るのは失礼でした。すいませんでした。」
私は謝ると気まずく感じて慌てて本のページを適当に開いた。そんな私の様子に彼女はクスクスと笑った。
「見ても減るようなもんじゃ無いですけど、良ければ…」
彼女はそう言うとノートを見せた。
ノートには日記みたいにその日の出来事やイラスト、メモまで書いてあった。
「日記?」
「いいえ。私の趣味で病院を巡っていて、その記録です。その場所その場所で雰囲気から何から全部表情の違う、他の人では見えない一面を切り取る…でも、変わってるでしょ?」
「変わってるっていうか…変わり過ぎてる」
「もうそれが私にとっては褒め言葉ですけど」
彼女は嬉しそうに話す。
予約時間まで時間がまだあるからと2人で話をするうちに何故か仲良くなっていた。
「そうだったんだ。通院で来てたんだ」
「でも時間あるし暇だからここに来ただけなの」
何故通院してるのかは彼女は聞いてこなかった。そんな所が少し気に入った。
すると、呼び出し受信機のアラームがバッグの中で鳴り出した。
「じゃあ、私はそろそろ行くから」
彼女は思い切った様に呼び止めた。
「名前と連絡先…教えてくれないかな?あなたと一緒に巡りたい」
私は迷ったが思い切って連絡先をメモに書いて渡した。
「加賀谷夕月…良い名前だね」
「そ、そうかな…」
「…私は時風雪子。珍しい名前でしょ」
「私は良いと思うけど」
そして私は雪子と別れを告げて受診科に向かった。
〜「病院探訪少女」end〜
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