好きな諺

【情けは人の為ならず】


好きな言葉と似た様なものになってしまうが、こちらも書きたい事があったので、好きな諺として。


先ず、この諺には続きがある。


『巡り巡って己が為』


こちらの方は知らない方も少なくないのではないでしょうか。


そして、だからこそ、意味を間違えて覚えてしまう方もいる。


誤用として「他人に情をかける事は、その人の為にならない」と。


他人に優しくする事を否定する様な意味に間違えていたりする。


でも、本当の意味は全然、逆なんだよね。


「他人に情をかける事が巡り回って自分の為にもなる」


要するに、他人には優しくすべきという事になる。


それが直接、情をかけた相手から返ってくる事もあれば、他の誰かを経由して返ってくる事もあるんだよね。


自分が誰かを助ける事で、自分が誰かに助けて貰える。


人間社会はそうなる様になっていると思う。


そして、それは良い事ばかりではない。


悪い事も全て自分に返ってくるんだよね。


それを四字熟語で言うと「自業自得」、「因果応報」と言ったりもする。


だから、本来は余裕のある方が、余裕のない方の手助けを自主的に、尚且つ、積極的にすべきだと思うんだよね。


そして実際に、これまでは、それが、ある程度は出来ていたから、人間社会は此処まで発展を遂げる事が出来たのではなかろうか。


しかし、それが此処へ来て、特に先進国において、中々に出来なくなってきている様に思う。


先進国の資本主義による競争で格差が広がっている中、競争で強者になった者が自らのエゴを満たす事に力を注ぎ、それが結果的に社会から弱者を排斥している様に私は感じたりもするのだ。


その結果、様々な社会問題に繋がっているのではないか。


そして、それら多くの社会問題により、現在、先進国は社会の縮小が進んでいる様に思う。


更に、それは国家とかのレベルに限った事ではない。


それぞれにある、それぞれの分野で世界が狭まってきている。


勿論、一部の分野では今でも成長をしているところもあるだろうし、今後、成長が見込める分野もあるだろう。


でも、それだって、こんな事を続けていたら、いずれは衰退を招くと思うんだよね。


リングから弱者を追い出す様な事を続けていれば、いずれは自らが活躍する場でもあるリングの崩壊に繋がりかねないと思う。


確かに「栄枯盛衰」なんて言葉もあるので、栄える事もあれば、衰える事もあるのかもしれないし、その様な自然の理の様なものから逃れる事は出来ないのかもしれない。


ただ、衰える速度を緩める事は出来ると思うんだよね。


出来るだけ衰退を遅らせる事は出来るのではないか。


その為の鍵になる言葉が【情けは人の為ならず】だと思う。


また、決してエゴの全てを否定する訳ではないが、エゴを満たす為にも弱者に対する情も必要なのではなかろうか。


その情が強者のエゴを満たす為の土壌を育てもし、その育った土壌から恩恵を受ける。


それが【情けは人の為ならず】という事だと思う。


とは言え、強者側の立場に立てずにいる私がこんな事を言っていても、単なる負け犬の遠吠えにしか過ぎないんだよね。


そして、こんな事を言っている以上は、強者側に立つ事が出来たら自主的に、尚且つ、積極的に弱者の手助けをしたいと思ってはいるが、それだって、実際のところは分からない。


実際に私も強者になったら、自分のエゴを満たす事に夢中になってしまうかもしれないんだよね。


現在、自らのエゴの拡大に夢中になっている方々も、以前は弱者の為に、と考えてはいたのかもしれない。


そして実際に力を手にした者が、その力に囚われてしまう事は、人間として珍しい事ではないだろう。


ただ、人類の歴史を鑑みても、力に囚われて【情けは人の為ならず】を忘れた者は滅んできたのではないか。


そして現在も、そうやって自らの身を滅ぼす方もいる。


それを目の当たりにしても、自分は大丈夫だと思ってしまうのだろうか。


それもまた、人間なのかもしれないが、それでも声をあげ続けたい。


【情けは人の為ならず】と。


このまま、私は強者になる事も出来ないまま、朽ち果てる事になるのか。


強者になって、弱者の手助けに奔走する様になれるのか。


強者になる事で弱者を虐げる様になり、裏切り者として自らの身を滅ぼす事になるのか。


先の事は分からないが、今は弱者の手助けを出来る様になりたい。


そんな風に私は思っている。


ただ、そう思う事自体が私の思い上がりなのかもしれないんだよね。


私如きが、その様になる事なんて、有り得ないのかもしれない。


所詮は誰かに助けて貰わないと、生きていく事すら出来ない私なのだから。


現状はそう言わざるを得ないのだろうな。

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