1年間だけのサイト再開

自分の自殺サイトを閉鎖してから半年程、過ぎてから、我慢が出来なくなってしまい、サイトを再開する事にする。


ただし、私がチャットに顔を出すのは月に一回、数時間程に限定をして。


社会復帰に向けて、資格を取る為の勉強をしたりしていて、以前の様な時間の使い方は出来なかったからである。


また、再開するのは早い気もしたが、実際に社会復帰に向けて動いている事で、考え方も楽観的になって、社会復帰は出来る気になっていた。


まだ自立は出来ていないが、自立するのも時間の問題だと、都合よく考えていたのである。


だから早まって、サイトを再開してしまったのだ。


そしてサイトの方は、というと以前の様な賑わいに戻る事は無かった。


当然と言えば当然なのだが、私が来るのが月に一回なので、その時間に合わせる事が出来る方が数人だけ来るくらいになってしまう。


というのも、URLが変わってしまったので前回、コツコツと積み上げてきた検索エンジンからの流入も期待が出来なくなる。


だからメールでのやり取りを続けていた方にだけ、サイトの再開を知らせる事が出来ただけだった。


その内の何人かが私に付き合ってくれたのである。


そして、それ以外の日は、また開店休業状態になってしまった。


それは、それで私は気にしていなかったが、そうなると、もう自殺サイトとして機能はしていなかっただろう。


この時は自分のサイトさえあれば、それで良かった。


サイトの運営に本腰を入れる事が出来る様になれば、時間はかかるかもしれないが、少しずつ、訪問者を増やす事も出来るだろう、とね。


そして、それよりも私自身は社会復帰の方が問題だった。


はっきり言って、何の成果もあげる事が出来なかったのだ。


何度か資格を取る為の試験を受けたんだけど、全て落ちてしまった。


サイトを再開した時には、社会復帰は出来る気になっていたが、それが如何に甘い考えだったか。


サイトを再開してから1年程、経って、その事を思い知らされる。


約1年半、社会復帰に挑んでみたが、失敗に終わる事になった。


1年半という期間は短いのかもしれない。


しかし私には、それ以上、続ける事は出来なかったのである。


家族の財産を食い潰す事に、もう堪えられなくなっていた。


このまま続けていたら、また自殺を試みる様になってしまいかねない。


だから、この時には無理に社会復帰をしようとは思わなくなっていたのである。


とにかく、これ以上、自分に重圧がかからない様にするのが精一杯だった。


そして再び、サイトを閉鎖する事にする。


今度は開店休業状態だったので、閉鎖する事で心苦しい思いをする必要はなかった。


前回、閉鎖した時に希望する方とだけ、メールでのやり取りを続けていたので、再び、メールでのやり取りをするだけの事になっただけである。


そして私は再び、自宅に引き篭る様になってしまう。


先程も書いたけど、自立の為とは言え、外に出るにはお金が必要になる。


交通費だけでも馬鹿にならない。


これ以上、家族に負担を強いる事は私には出来なかった。


食べさせて貰えるだけ、ありがたい。


何とか、それを負担に思わない様にするだけ。


勿論、サイトを再開した時の様に楽観的になれればいいのかもしれない。


社会復帰さえ出来れば、借りを返す事だって出来る、と。


しかし、それまで成果を出せなかった事で、楽観的になる事も出来なくなっていたのである。


自分の無力さを責めるしか無くなってしまう。


このまま自分を責め続けていたら、元の木阿弥になってしまいかねない。


だから、この時点では社会復帰を諦めるしかなかったのである。


そして結局、社会復帰に挑戦をした事は、厳しい現実を突きつけられただけだった。


テレビ等で時々、私の様に社会から脱落した者が、社会復帰する過程を追ったドキュメンタリーなんかが放送をされたりするけど、あれは、たまたま上手くいったケースを放送しているに過ぎないだろう。


現実はそんなに甘くはない。


ただ、それも、たまたま私が上手くいかなかっただけでもある。


私以外の誰かが上手くいくかいかないかは、全く分からない。


とにかく、私は上手くいかなかったのだ。


そして、この時のサイト再開は少しだけ、後悔をする事になる。


本当に早まった事をしてしまった、と。


ただ、開店休業状態だった事が、不幸中の幸いというか、傷口を浅くしてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る