サイト閉鎖
サイトを開設してから一年程、経ってから、サイトの運営も軌道に乗ってくる。
これは言い訳になるのかもしれないが、宣伝らしい宣伝は殆どしなかった。
効果的な宣伝が出来れば、もっと早く、サイト運営を軌道に乗せる事は出来たのかもしれない。
ただ、効果的な宣伝はやろうと思っても、そんなに簡単には出来なかっただろうし、私なりの考えで余り宣伝はしたくなかった。
宣伝をして自分の自殺サイトに人を呼び込む事は、不幸な人が増える事を喜ぶみたいにも思えたからだ。
あくまでも、死にたくなる様な苦痛を抱える様になってしまった方に、少しでも、その苦痛を軽減してあげる事が出来たら、という思いで運営をしていた。
勿論、その前に私自身の居場所を、という意味でもあったが、他者に対しては、その様な思いを持っていたんだよね。
正し、そんなに大勢の方に利用して貰える事は想定すらしていなかった。
だから無理な宣伝は必要が無かったし、それで良かったと、今でも思っています。
そして宣伝はしなくとも、少しずつ、常連さんも増えていって、チャットに限定しての事だが、サイトも賑やかになっていく。
しかし、サイト運営が軌道に乗ってくると、今度は私がチャットに縛り付けられる様になってしまった。
訪問者が増える事で、その相手を私がしなければならなくなったからである。
勿論、訪問者同士でチャットをする事もあるが、私のサイトに来る方は、私とのチャットを目当てにした方が殆どだった。
相手が私である必要は無かったかもしれないが、私とチャットをすれば自分のしたい話は出来る。
要するに、私が話を合わせる事が出来る、私の守備範囲内の方が私のサイトに通ってくれていたのだろう。
そして毎日、毎日、一日かけて順番に、2ショットチャットを2窓で20人程の相手をする。
手が空いた時は訪問者同士でチャットをしているところに顔を出す。
一日、10時間を超える程、2窓でチャットをする日々が続く。
多い時は15時間くらいする事もあるくらいであった。
そんな中で喜びや、やり甲斐もあったが、同時に重圧も感じる様になっていく。
自立が出来ずにいた自分では、いつサイトを閉鎖しなければならなくなるとも限らない。
多くの方に自分のサイトを利用して貰う事で、その事の責任の大きさに気付かされたのである。
そして私は自分にこの様なサイトの運営をする資格は無い様に思ったのです。
そう思った私はすぐにサイトの閉鎖を決断する。
そして1年後にサイトを閉鎖するとの告知をした。
それから1年後のサイト閉鎖の時まで、毎日、毎日、忙しい日々を送る。
何日かは体調を崩して休む事はあったが、それ以外はチャット漬けの毎日だった。
本当に1年の内360日くらい、その様な毎日だったんだ。
誤解が無い様に申しておくと、私はそれを決して嫌だと思った事はありせん。
ただ、正直、肉体的にはしんどかったりもした。
労働として考えると、明らかに過重労働ではあっただろう。
そして、その様な日々を1年、続けてから、予定通りにサイトを閉鎖する。
今、思うと、よくそんな事が出来たなぁと思う。
多分、体力的にも限界だった。
何とか、きちんと閉鎖をするまでは、と、それだけを思って頑張ったのである。
また、私とチャットをしに来てくれる事が本当にありがたくもあった。
だから、頑張る事も出来たのだろう。
そして私は一旦、自立へ向けて動き出す事にした。
きちんと自立をして、サイトを運営する資格を得てから、サイト運営を再開させたかったのだ。
それは、ある意味、自立をしていない状態でサイトを立ち上げた事が間違いである事を認めた事にはなるだろう。
しかし後悔は全然、無かった。
サイトを立ち上げた事も、サイトを閉鎖した事も。
全て、やってみて、判った事。
サイトの立ち上げは、自分の居場所作りが一番のモチベーションではあった。
しかし他者に利用をして貰うという事は、他者の居場所にもなってしまう。
その事に喜びとやり甲斐がある事を知り、同時に責任もある事に気付いた。
それを運営者本人だからと言って、身勝手に閉鎖する様な事態は避ける必要があると思ったのです。
だから閉鎖まで、1年の期間を設けたんだよね。
その間に利用者の方々が他へ居場所を見つける事が出来たら、と。
そして私の方は先ず、一人の人間として、自立をすべきだと思った。
いつ自殺するとも限らない状態のまま、他者に利用をして貰える様なサイトの運営はすべきでない。
自殺サイトをやりたいのであれば、きちんと自立をしてからにすべきだと思ったのです。
実際にやってみた事で、その事に気付く事が出来た。
だから、この時は十分に納得をした上で、サイトの閉鎖をしたのである。
また、ついでと言ったら、おかしいのかもしれないが、他に運営をしていた様々なHPも全て閉鎖をした。
そして私は社会復帰に向けて、自立をする為に動き始める。
自分自身の自立が出来ないままに、他者の苦痛を軽減しようなんて思い上がりだった。
しかし実際に行動をしてみた事で、色々な事を知る事も出来たのだ。
そして、その事が私自身の方向転換にも繋がった。
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