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「だからいい加減アレはやめろって! さっきも見ただろ? 国の取り締まりも厳しくなってきてる。このまま隠し続けられるわけねえよ!」
いつになく真剣な表情で言うカールの視線を避けるように、ルイは黙って俯いた。
―――言われなくても、わかってるよ。
そんな言葉が喉元までせりあがるが、ぐっと歯を食いしばり押しとどめる。
カールが、親友が、どれだけ自分のことを案じてくれているか。
その心痛を感じているからこそ、ルイは何も言うことができなかった。
「お前、ピアノでヴィルトー科の成績トップなんだろ? じゃあ卒業後の安定は決まったようなもんじゃないか。
作曲することは確かに音楽をする上で素晴らしい行為だけどさ、演奏するのだって同じくらい尊い行為じゃないのか? なんでそれじゃだめなんだよ」
歩き続けるルイの前に回りこんで懸命に話しかけるカールに気圧され、ルイはとうとう歩みを止めた。
「……やめようと、思ってるよ。やめなくちゃって思ってる。
そのために暇な時間は全部ピアノの練習に当てたり、頭が痛くなるくらい難しい本を読んだり、紙やペンを自分の近くに置かないようにしたりして……」
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