第3話
そもそもその年代の子供との接し方が分からない上に、彼女は言葉を話せない。こちらの言うことも通じないので意思疎通が出来ないのだ。しかも彼女は白百合を研究する為に葉や茎を切ろうとするのを嫌がり、酷い時は噛み付いてきたり暴れたりさえする。しかしそれ以外は全く静かで一日の大半を白百合の傍で眠って過ごしている。
彼女が何を考えているのか、どんな過程を経て此処にいるのか、研究という意味以外にも個人的な興味も無くはない。
特殊な容姿や体質、性別の欠落、彼女には一般人でさえ好奇心をくすぐられる部分があり過ぎるのだ。
そこで私は彼女に言葉を教える事にした。もし会話が可能になれば、彼女自身の事も白百合の事も、もっと違う側面から多くの情報が得られる筈なのだ。
まず最初に教えなければならないのは声の出し方だった。
私が発声し、ジェスチャーで出してみろと掌を振る。彼女は直ぐに意図したところを理解した様子だったがやはり簡単には発声まで至らなかった。
数日繰り返しているうちに声が出るようになり、次は言葉の学習に移った。
しかし此処でひとつ困った事に気付く。彼女には名前が無い。私の名前を教えて呼ばせる事は出来ても、私は彼女を呼ぶ事が出来ないのだ。
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