第2話

新種の白百合の発見は植物院だけでなく世間をも驚かせた。人間には猛毒にも関わらずそれに耐性のある少女まで発見された事が大きかったようだ。

私がその少女と白百合の研究に従事することになった理由は恐らく二つある。ひとつは私が一応は優れた研究員であること。そしてもうひとつは、もうあまり先が長くないこと。私の身体の神経を蝕む病は治らず、進行は緩慢だが確実に私を死に近づけていく。医師の診断では、恐らく二、三年後には完全に動けなくなり死に至るだろうということだった。大学を飛び級で卒業し弱冠21歳にして此処の研究員になった私は入った当初こそ将来を期待されたが、病が判明してからは私という存在を持て余している節があった。その矢先の白百合の発見である。うっかり白百合の毒で私が死んでも構わないといった風に、昔使われていた研究塔に白百合と少女と共に閉じ込められることになった。

素手で触れたり花粉を吸い込まなければ死に至る事は無いので、特殊なマスクさえしていれば研究自体は難しくない。

問題は一緒に連れてこられた少女だ。少女というのが正確かはわからない。彼は性別がなく、ただ髪が長く美しい容貌の所為でそう見えるのだ。

私は被検体01と呼ばれるその少女との接し方に戸惑っていた。

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