植物院の少女

藍草

第1話

むかしあるところに、こどもを身篭ったおんなのひとが死に場所を探して歩いていました。歩いて歩いて歩き疲れた先に、きれいな白い百合がたくさん咲いている場所に辿りつきます。

その百合には毒があり、そのおんなのひとはそれを知らずに素手でうつくしいその百合に触れてしまいます。おんなのひとは望み通り、うつくしい場所でうつくしい白百合に殺されたのです。

しかし不思議なことに、彼女の胎内のこどもは死にませんでした。そして死んだおんなのひとの中で生き続け、そして産まれました。

産まれたこどもは性別が無く、白い髪と金の瞳をもった不思議なこどもでした。白百合の蜜と朝露で育ち、人のことばを話さず、白百合と意思を通わせることができました。

こどもが少年少女と呼ばれる歳になり、母親だったおんなのひとの死体が跡形もなくなる頃、おとながたくさんやってきて、白百合と彼を発見しました。彼らは何もわからないままの彼と白百合の株を植物院に連れ去りました。


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