第4話 世知辛い

 翌日。

お通夜が始まった。

奥さんの宗教狂いで不思議なお通夜だった。

今の葬式がこうなのかはわからないが、和洋折衷って感じの物だ。

詳しくは覚えていないが、坊さんはいない。

神父みたいなのがいる。

そんな派手派手ではない。

参列者は少数。

前々日、頑張って私が社長の知り合いに片っ端から連絡を入れてはおいたが、仕事の関係でこれない者が多数だった。朋友と言っていたおじさんも本州での仕事で帰ることはできなく、生前にお互いのどちらかが先に亡くなったら葬式では弔辞を読んでやるって話しも叶うことはなかった。それでも弔電を送ってくれた。

だが送ってよこさない人もいた。電話口で送ると言っていたし場所も聞いていながら送らないって、なんなんだ?


全然泣けなかった。

でも小学4年生から知っている息子が立派に成長した姿を見て何故だか泣けたのは覚えている。

まあ会っただけで泣けた訳ではない。

彼と最後に会ったのは、まだガキ臭さが残る中学1年か2年?の頃だったからだ。

ハッキリとしないが、まだ高校へは行っていなかった…。

と思ったけど、よくよく思い起こしてみると高校性の頃も会ってるな。

でもその頃もスポーツ刈りの坊ちゃんでガキ臭かったわ。

兎に角、そのガキ臭かった少年が、会わないうちに大人に成ってたんだ。

髪型が長髪になりどこのホストよ?って言う遊び具合。

顔にはまだまだ幼さが残ってはいたけど、長男として喪主を務める彼は大人に見えた。まあ、幼い頃から仕事でろくに帰りもしないとは言え、その父親が亡くなり否応もなく急激に大人にさせられたのだろうけど。

一段落し、ホールの出たところにある椅子に二人腰を掛けながら話をした。

「見ない間に大人に成ったなぁ…」

しみじみ思って言った。

前日は到着が遅くもあって、話と言う話はしていなかった。

彼は男と言うモノを学んだって俺に話してくれた。

何で学んだのか?と思ったら、クロヒョウ龍が如く新章(笑)だと言う。

良くも悪くもゲームで男を学ぶとは…。

時代だなって思った。

社長の弟さんが到着した。

度々仕事で会うことがあった。

彼が髭を生やす前、めちゃイケメンだった頃から知っている。

髭を生やし髪型を変え、いつの間にかおじさんだった。

挨拶をし色々話をした。

で言われた。

「ありがとね」って。

「我儘な兄貴だったけど、悪い兄貴じゃなかった。でも人に嫌われることも多かった。だけど、そんな兄貴と最後まで仕事をしてくれてありがとね」って。

正直、はっきりとは覚えてない。

こんな感じだったと思う。

もうね、涙腺崩壊よ。

もう止まらな。

止めようとしても二人して優しいこと言うもんだから止められない。

弟さんも俺のせいで貰い泣き。

でも、涙目になるだけで号泣とまでは行かなかった。

息子は泣かず、二人して私を慰め続けた。

この葬儀で私が一番泣いていた。


かつて一度は恨みもし、時期が来たら辞めてやるとまで思ったのに結局最後まで。

で、号泣って(笑)

良くも悪くも情が湧く。

人間ってわからないものだなぁ。

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