第16話 国民年金の取り立て

 これを読んでいる読者の年齢を予測することは難しいが、恐らく大半の人々は国民年金を払っているのだろう。かくいう俺も、会社に努めていた時代は嫌でも払わされていた。

 無職になった今、その年金を払う必要はあるのだろうか? と聞かれれば、苦虫を噛み潰したような顔をしながら、渋々首を縦に振るだろう。なぜなら、障害基礎年金というものがあるからだ。

 正直、年金なんてものは払いたくは無い。こんな将来性の無いものに投資するなら、投資信託でもしたほうがマシなレベルである。障害基礎年金なんてものが無ければ……。

 では先程から何回も書いている障害基礎年金というものは何なのか。という質問に答えていこう。簡単にいうと、障害者に支払われる年金である。

 障害者といっても、俺のような精神障害者3級といった軽い障害は相手にしてくれない。あくまでも1級や2級などといった重度な障害者向けの年金だ。

 ではなぜ、そんな関係のない年金を払っているのかというと、将来を見据えてである。

 残念な事に俺の体は弱い。熱さまシートを貼ればすぐに被れるし、群発頭痛という面倒な病気も持っている。恐らくだが、将来何らかの大きな病気にかかるだろう。そんな気がするのだ。もし、何の対策もせずにそうなったら収入は0になってしまい、先の生活が危うくなるだろう。そうなることを避けるためにも、年金を払うのである。

 なので、国民年金保険料納付書が来るまでは、一応払うつもりであった。一応は……。


***


「おいおいおい……マジかよふざけんなよ……」

納付書が届き、思わず口に出した言葉である。開けてびっくり、いきなり約180000円払えである。

 いやいやいや……。18万? うそやろ? 只の年金で18万って……ボッタクリやろこれ! と一人で反論してみるが、反論しても紙面の数字は一切変わる様子を見せない。18万を一気に納入出来ない方は分納という手段もありますよ。と紙には書かれているが、一括のほうが少しだけ安く済ませれるため、俺には分納という手段は残されていなかった。


「滞納するか」

と俺の中で画期的なアイデアが思いつく。そうだよ。別に年金なんて払う必要なんて無い。就職先を決めて、そのボーナスで遡って払えばいいじゃないか。

 俺は自分の事を天才だと褒め称えつつ、検索サイトで「年金 滞納」と検索する。恐らくこうやって検索すれば、年金の滞納方法が出てくると踏んでだ。


 結論としては知りたくも無い事実を知ってしまった。いや、知らなかったら知らなかったで、やばかったのだが……。

 どうやら年金というもの、手続きをせずに滞納すると延滞金というものが発生するらしい。延滞金という響きだけでも嫌なのに、それでも無視し続けると最終的に、差し押さえという面倒臭い事をされるらしい。

 パソコンやゲーム機を差し押さえされると生きている意味を失うにも等しい状況な俺は絶対に差し押さえをされるわけには行かなかった。けれども手続きをせずに滞納すると差し押さえをされる危険性もあるし……。ん? 手続きをせずに?

       

 そう、国民年金には「国民年金保険料免除・納付猶予制度」という制度がある。簡単に説明すると、失業したから保険料を払えない、という時に用いる制度である。

 その制度を利用する事によって、後から納付をすることもできるし、その時期の年金を踏み倒す事も出来る(ただし、貰える額が少なくなる)。

 そのことを知った俺は、早速ハローワークで貰った、雇用保険受給資格者証(失業手当てを貰う手続きをする際に貰える)を持って役所に駆け込み、無事に免除してもらう事に成功したのである。

 ちなみに免除中も国民年金を払っているのと同等に扱われるので、もしも今すぐ大きな病気にかかり、1級障害者になったとしても障害基礎年金は貰えるので安心である。(滞納していた場合は貰えない)

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