第3章 失業保険、障害者制度のフル活用
第15話 失業手当
失業したら失業手当というものが貰えるのは、前章でも触れたので皆さんも存じているかと思われる。だがそれはハローワークに行ったら素直に貰えるものでは無く、審査された後、講習を受けて初めて貰うことができるのだ。また、審査には離職票が必要な為、退社する際は必ず貰っておく必要がある。
――というわけで、講習当日。朝から始まる講習に俺は少し不機嫌だった。いや別に朝が早くて怒っているのでは無い。ニートになってからの生活は朝5時起きがデフォルトになっていた。究極の早起きである。なぜなら、会社に行かなくなって、やりたいことが日中に出来るようになり、夜更かしする利点を見いだせなくなったからだ。そのせいで早く寝るようになり、早い時には朝3時。遅くても6時起きが当時のデフォルトとなった。そんな定年退職した老人のような生活を送っていたのである。別に9時30分集合は辛くない。むしろ集合時間が遅すぎて逆に不機嫌になりそうな案件である。
じゃあ、若くて可愛い女の子が居ないから不機嫌なのか? と聞かれたら4分の1。いや、5分の1程YESである。確かに講習に行く前までは、講習を傍聴する席では若い女の子の隣に座って、そこからコイニハッテンシテ……。などと馬鹿らしい事を全く考えていなかったと言えば嘘になる。占い師が「結婚できる」と言っていたので、ほんのちょっぴり少しだけ期待していたのも事実だが、会場についた時、そんな希望は音を立てて崩れ去っていく事となった。
そう、周りの人は全員40代~50代のおじさん、おばさんばかり。20代の俺が完全にアウェーな訳だ。まぁ確かにこんなに早く職を辞めるような若い人は次の職を見つけてからだと思うし、当たり前と言えば当たり前か……。ともかく、完全アウェーの状況が少しだけ不満だった訳だ。まぁこれは我慢できるレベルなので別に気にする必要も無い。
ではなんに対して不満を抱いていたのかと言うと、他の受給者にである。
いや別に、俺以外の受給者全員に不満を持っていたわけでは無い。むしろ極々一部の人にであった。理由は意識の低さである。
意識が低いとか、お前失業手当貰いながら意識高い系かよ。と思われるかもしれないが、そういう事ではない。むしろ俺は意識は低いほうだ。その意識が低い俺が何に対して不満点を持ったのかというと、時間にルーズな事である。
俺は万全を期して、集合時間の30分前にハローワークの近くに到着し、15分前にハローワークの中に入った。その時間帯でも、30人位の人が受付前に並んでおり、こんなにも受給者がいるのか……と驚いたものだ。
当然、15分前に到着した俺の後ろにも、列が少しずつ出来ていく。ここまではいい。なぜなら集合時刻よりも前なのだから。そして9時25分頃に受付が開始された。徐々に消化されて行く人の列。気がつけば時刻は集合時刻の9時30分を過ぎていた。
「あー、よかった間に合ってー」
と列の後ろから嫌でも耳に入ってきた大きな安堵の声。「間に合って」という言葉に違和感を覚え腕時計を見てみると、時刻は9時33分。どうみても遅刻である。おいおい、あくまで給付金をいただける立場なのに遅刻するとか貰えなくなってもいいのかよ……。と思うが、口には出さない。可能性は低いが、道が混んでたとか公共交通機関の遅れとか色々理由があったのだろう。多分。
そう考えながら、自分の番が来ないかと待っていたら、ドタバタという下品な音が廊下に響き渡る。後ろを振り向くと、明らかに40代を超えたようにみえるおばさんが、自慢の脂肪をプルプルさせながら、走ってきている最中だった。時刻は9時35分。これはもう給付しなくていいんじゃないか? と思うが口には出さない。こんな所でトラブルに巻き込まれちゃ溜まったもんじゃない。
しかし、遅刻者はこれだけではなく、俺が受付を済ますまで(9時40分前後)に確認出来ただけでも5人は居た。開始時刻が9時50分からだったことを見るに、まだまだ遅刻者が居たのだろうと考えられる。俺はこんな時刻を守れない人達と同類になってしまったのか……。と謎の情けなさに襲われた。
***
ちなみに講習の内容だが、至って普通だった。早く再就職してくださいね。1ヶ月に1回、ハローワークに来て面談しないと、失業手当はあげられませんよ。また、失業手当を貰うには就職しようとした証拠、活動実績が必要ですよ(障害者は免除される場合がある)。失業保険を貰いながらアルバイトをしたらきちんと報告してね。みたいな感じの諸注意だった。特に不正受給に関してはかなり力を込めて説明していたが、抜け穴はいくらでもありそうだな。というように感じた(俺の場合は抜け穴を実行すると、民間の職業紹介事業所を切られるのでやりたくても出来ない)。
そんな感じで初回の講習を終え、これから先、1ヶ月に1回ハローワークでの受給者面談が行われる事となる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます