[Day007][18]幕が、降りる

<<おぎゃあああ>> :息子の、むーさん。生後2ヶ月半。

『オイラです!』   :父親の、むーさい。生後だいぶ経つ。

「嫁です!」     :母親の、みーさん。生後だいぶ経つ。

 〜こんな展開!   :前記父が、前記母に対して語っている、物語。

 その他は、通常の描写とか、父母の会話とか。

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『じゃあ、18話ね』と、むーさいことオイラ。

「はやくはやく!」と、嫁のみーさん。

<<すーすー>>息子のむーさんは、しっかり寝ている。首がすわりきっていないのに、寝返りをしようとして、こんがらがった態勢になっている。



 〜幕が上がった。僕らの目に飛び込んだのは、そこそこ入ったお客さん達。


今思うと、緊張しているのに、お客さんを見定める余裕がある設定にしたのは、一般的にはどうなんだろう? とも思う。


オイラは中学時代、生徒会の副会長で、壇上に立つ事は結構あった。

教員免許を取る時に、教育実習で母校の高校で授業を展開したりもした。

仕事柄、講義をお客さんとか、同業者さんに向けてやったこともある。

いつもメッチャ緊張はするし、うまくは運べないんだけど、

相手の顔色は、なぜかしっかり、頭に入ってくる。いつもそう。

お客さんがつまんなそうにしていると、それがプレッシャーになるけどね(苦笑)



 〜客層を確認すると、ファミリー層が多い。

 〜このファミリーアイドルイベントは、ニコニコ超会議の1イベントだから、(そういう設定)

 〜実際の来場者は、10代とかが圧倒的に多い。

 〜そういう10代の人とかは、Youtuberのゲーム実況とか、小林幸子ゴッドの降臨とか、コスプレイベントとか、そっちに流れている。

 〜なので、今ここにいる観客は、やはりファミリー層になる。

 〜運営もそれを見越しているから、場所も、幕張メッセの中でも、駅から遠いブースになる。

 〜家族は出来たけど、趣味から抜けられない、夢を追い続けて大人になっちゃった系の人達の集まりだ。


「なんか、凄い事言っちゃってるねwww」

『うへへwww』

しれっと、オイラの毒成分が顔を出したのかもしれない。


 〜そうやって、オイラはステージ上で、客層の質を分析していた。

 〜「ちょっと! ヒゲをそって! いつも言ってるでしょ!」


難しいことを言うとヒゲが伸びるという設定にしたので、それを作中でも拾う。


 〜オイラは、なるべく簡単な事を考えようとした。


「あのさ、今、舞台に立ってる状態なのに、そんな事をしゃべってるの?」

嫁の指摘が飛んでくる。

『いや、しゃべってないよ。頭の中での思考を表現したんだ』


作中の嫁、みーさんの視点で描写すると、

旦那であるむーさいのヒゲが、ステージ上でにゅんにゅんにゅんにゅん、と伸びてきているわけだ。

むーさいの目は、すこしきょろっと上向き。何かを考えている目。

そのヒゲの変化で、わかるわけだ。「あ、今、難しいこと考えてるな? この人」と。


 〜とにかく、簡単なことを考えないと。なんだろ。

 〜「アンパンマンはボクサー」と心の中で唱え続けたら、伸びていたヒゲが引っ込んだ。


「もはや人間じゃないwww」と、爆笑する嫁。

『そういう設定になったからしょうがないでしょ!』

「あはははは! そっか!」



 〜ライブがスタートした。

 〜いざ始まったら、記憶も飛び飛びになった。集中していたんだろう。


 〜踊ってる途中でお客さんが立ち上がったり、拍手をくれたり、帰っちゃったりってのも少しあった。

 〜嫁のみーさんに操られた、息子のむーさんが、しゅしゅしゅ! とパンチをくり出して、「うぃなー!」とガッツポーズして、「だぶる!」と、両腕でWの字を作って。


 〜『トリプル!』と、自分の首を足すオイラ。

 〜オイラがアドリブで足した、トリプルは、滑った。

 〜観客から「あのパパなにすべらせてんの」って空気が漂う。

 〜凹んだオイラが、折れた心をどう回復させようかと、ステージ上で沢山考え事をしたせいで、

 〜オイラのヒゲが、ここ数年見たことが無いほど、飛躍的に延びた。


 〜やばい! 「アンパンマンはボクサー!」x何度も ヒゲがしゅいんしゅいん引っ込む。


 〜嫁の母と、嫁の妹さんが、ステージの左奥から、パンチをしゅしゅしゅ! むーさんに近づいてくる。

 〜オイラは、ステージの右奥から、パンチをしゅしゅしゅ! むーさんに近づいてくる。


 〜真ん中に、嫁のみーさんが操る、息子のむーさん。

 〜左右から、残りの3人が寄ってきて、5人そろって、「ういなー!」



「なんか、ライオンキングの1シーンみたいだね(笑)」


 〜そのセリフをマイクが拾った(笑) 嫁のアドリブで会場は盛り上がった。

 〜さすが、みーさん、持ってるね!



 〜2曲目の曲披露は、成功と言っていいだろう。

 〜ステージ裾に引っ込むオイラ達。

 

 〜そこには、次の出番を待つ別グループが控えていた。

 〜別グループの中には、さっき助けてくれた、キャップを被った女の子が。

 〜そう、ランキング2位のヒップホップのグループだ。


1位がエグザイル風、2位がヒップホップ、3位がアイドルのフォーメーション売り、だっけか? 設定は。


 〜入れ違いでステージに立つ、ヒップホップグループ。そのパフォーマンスに魅入るオイラ。

 〜でも、後ろから、嫁の声。「パパー! 控室戻って、むーさんにミルクあげるよー!?」

 〜ステージ上のパフォーマンスに惹かれながら、オイラは控室に向かった。嫁達と一緒に。



『今日は、ここまで!』

「そんな終わりなんだー。じゃあ、よこくっ!」


 〜パフォーマンスも終了。ヒップホップのグループも、すごいモノを魅せつけた。

 〜ランキング1位の人達も。

 〜さあ、どうなっちゃうの?

 〜次回! 「ドキドキの結果発表!」お楽しみに!


「ドキドキなんだね」と、嫁のみーさん。

『そう』と、オイラ。


どういうドキドキなのかは、あえて明示しなかった。明らかに、首を締める行為だからね(笑)


<続く>

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