[Day007][16]おむつ換え部分が、濃淡の「濃」

<<おぎゃあああ>> :息子の、むーさん。生後2ヶ月半。

『オイラです!』   :父親の、むーさい。生後だいぶ経つ。

「嫁です!」     :母親の、みーさん。生後だいぶ経つ。

 〜こんな展開!   :前記父が、前記母に対して語っている、物語。

 その他は、通常の描写とか、父母の会話とか。

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第16話 


「はい、今日も3話ねー」と、嫁のみーさん。


早速始めるオイラ。この流れも習慣化してきた。

とはいえ、事前にお話を考えるとかは、やっていない。

どうせアドリブで筋が変わるからね。完全即興。


 〜まずはここまでのあらすじ。

 〜1週間で練習した「パーフェクトむーさん」を経て、次は2周目の披露なんだけど、気づいたらむーさんとむーさいが消えてて。どうなっちゃったの?


「そうだ、そうだった」と、嫁のみーさん。

『それが第16話ね』と、むーさいことオイラ。



 〜おぎゃーおぎゃーおぎゃー 

 〜おぎゃーおぎゃーおぎゃー


 〜泣き声が聞こえる。 目を開けると、愛する息子、むーさんの声だ。

 〜僕の左隣りにはベビーベッドが置いてあって、そこから聞こえてくる。

 〜あたりを見渡すと、暗い、ブースか何かの一室。


 〜ここどこ? なにがあった? オイラ達は何をやっていた?

 〜確か、幕張の本戦の1周目終わったとこだったはず。

 〜そこからの記憶が……


「拉致られた?」

『かな?』

「なんで疑問なのー?」

『今のオイラは把握できてないから(笑)』


だから、先読みしないでよー。作中のオイラは、まだ目を覚ましたばかりなんだってば。



 〜オイラ達は拉致られた。


「あははははは」

『神の声が聞こえちゃったんだよ。作中のオイラに、お話の外から!(笑)』

『すんごいメタ的な感じで(笑)』


 〜拉致されたと考えるのが自然。暗がりの密室。オイラは後ろ手に縛られていて。

 〜幕張の会場から、どのくらい離れた場所かもわからない。


 〜まずい! 誰かの妨害だと思うけど、そんなに狙われる程のランキング上位でも、うちらはなかったし。

 〜そもそも、ファミリーアイドルごときで犯罪に繋がるとは思えない。


 〜しばらく周りを確認していると、外からガタガタと音がして、複数の人数が歩いて来きているようだ。話し声が聞こえる。

 〜オイラは、元のいちに寝たふり。あわてて

 〜外の声が近づいてきて、扉の鍵をがちゃがちゃ、二人が入ってきた気配。


 〜「うっせーなー、泣いてるよ」

 〜「泣かれると、誰かに気づかれるかも」

 〜「人使い荒いよなーうちの親も」


 〜どうやら、むーさんの泣き声を抑えさせるために、入ってきたっぽい。薄目を開けて状況を伺うオイラ。

 〜なにをする! と思ったら、むーさんを抱き上げて「おーよちよち」とあやしている。


『まあ、そうだよな、赤ん坊を泣きやますって、そういうことだよな』

「wwww」

『さすがに赤ん坊にまで危害は加えないよな。物理的に手をださない』


 〜なんで泣いてんだこの子? 順番に試す。おしめ、だっこ、ねぐすに、ミルク。

 〜まずはおしめから。携帯バックからおしめセットを取り出し、むーさんを台に寝かせて、取り換えはじめたようだ。

 〜問題は、使っているおむつのメーカー。 ちゃんとMoonyをつかってくれるかな。パンパースとかメリーズじゃないよな?


 〜そもそも、携帯バックから単体で出してきたおむつだから、銘柄も把握できない。

 〜そのとき、「うわ!」と、悲鳴が響いた。

 〜おむつ換え中に、むーさんがおしっこを始めたんだ。


「ありがちwww」

『ね?』


 〜うおお! 謎の奴らが混乱している、このタイミングだ!

 〜オイラは、無理やり立ち上がり、体を投げ出して、相手に体当たりをしかけた。

 〜その勢いで、縄が解けた! ご都合主義!

 〜オイラはむーさんを抱っこして逃走!


「むーさん、おむつ換え終わってないよ?」


 〜オイラは、むーさんを、交換中のおむつごと引っ掴んで逃走!

 〜相手の二人を体当たりで倒した。状況的にはむーさんはベッドに乗っかっていて、おしりには2枚のおむつが。さっきまで履いていたおむつ(Moony)と、その外側に、換え用の新しいおむつ(銘柄は謎)だ。

 〜おしりにしかれているその2枚をそのまま、オイラの右手でむーさんのお股をガッと掴んで、左腕の肘関節のところにむーさんの首を乗っけて、そのままダッシュ!

 〜二人組が入ってきたドアが開いたままだったので、そこから逃走する。

 〜「待てー!」とうしろから声が飛んで来るけれど、止まるわけにはいかない。


 〜外に出てみると、幕張からそう遠くにはいってないようだ。道沿いに海が見えるから。

 〜ライブの2周目が始まってしまう!

 〜その辺にたまたまあったゴミ箱に、使用済みのおむつを捨てる。そして、換えのおむつーメリーズだったーを、いつもと勝手が違うテープで留めて、さらに移動。

 〜通りかかったタクシーを捕まえる。「すいません、幕張メッセまで!」 

 〜「近いですね」と、運転手さん。やはり近場のようだ。


 〜場所を確認する為に走り回っている余裕はないから、お金で時間を買う。社会人経験が役に立った!


「あははwww」

 『前回の予告だと、走れむーさんを抱っこしたむーさいってのは、「タクシーで」走れ!ってことだったらしい』

「そうなのwww」


強引に予告と繋げたんだけどね。


 〜タクシーの運転手は、運転しながら、フロントミラーでこちらを覗いてくる。

 〜こんな所で、なんで親子で佇んでいたのかが不思議らしい。

 〜結局、拉致った犯人は何者だったんだ? 大泉学園の「やなーず」の家族位しか、思いつかないけど。

 〜でも、さっきオイラが体当たりをかました2人は、大泉学園で出会った5人の中には、いないんんだよね。

 〜ファミリーアイドルの5人にあぶれた、別の兄弟とかがいたのか?



 〜タクシーが幕張メッセに着いた。会場入口まで走ったオイラ、と、腕の中のむーさん。

 〜ここで、問題が発生。参加者パスが無い!

 〜『やばい!』


「携帯はー?」と嫁。


 〜携帯を置いたまま、拉致られたらしい。


携帯しとけよ、携帯なんだから。

 

 〜困っていると、後ろから呼び止める声が。

 〜「どうしたんですか?」

 〜振り返ると、キャップを被った女の子が。

 〜「もしかして、ムーズのお父さんですか?」と、女の子。

 〜『は、はい。ご存知なんですか?』

 〜「はい。Youtubeで、拝見させていただいてます。子供のむーさんを中心とした、活き活きとしたファミリー感が出ていて、あたし良いと思います」

 〜『ありがとうございます!』

 〜おお、見てくれている人がいた。


 〜「慌ててらっしゃいますけど、どうしたんですか?」

 〜まさか、拉致られたとは言えない。手違いがあって、入場パスが無いとだけ伝えた。


 〜「そういうことでしたら、どうぞこちらへ」

 〜女の子はそう言って、僕らを案内してくれた。正規の入り口とは違う、裏口だ。白いパイプの柵で、会場の中に入れないようにしてある。

 〜そこには当然、ガードマンがいた。女の子が「この方達も、参加者なんです。入場パスを忘れたようなので、通してあげてください」と説明。

 〜疑いなく通してくれた。顔パス!? どういうこと?


 〜「はいどうぞ」と、女の子。

 〜『ありがとうございます!』

 〜そう告げて、ほっと一息。女の子を顔を見ると……どこかで見覚えがあるような……

 〜ランキング2位のヒップホップグループの、紅一点じゃないですか! なんとまあ!

 〜上位陣はガードマンさんにも顔パスなのか……

 〜「困ったときはお互い様です。お互い、2周目頑張りましょう!」女の子は、にこやかにそう告げて去っていった。さすが、上位陣の余裕。

 〜女の子の背中越しに、ありがとうございます、と返して、オイラ達は無事、家族のブースに合流することができた。


 〜第16話、ここまで。


<続く>

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