[Day006][15]本戦と、赤ん坊を走らせる方法

<<おぎゃあああ>> :息子の、むーさん。生後2ヶ月半。

『オイラです!』   :父親の、むーさい。生後だいぶ経つ。

「嫁です!」     :母親の、みーさん。生後だいぶ経つ。

 〜こんな展開!   :前記父が、前記母に対して語っている、物語。

 その他は、通常の描写とか、父母の会話とか。

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<<すーー。すーー>>


息子のむーさんは、既にぐっすりと寝に入っている。

レンタルベビーベッドの柵を上げて、隣の部屋にドラクエに行くのも、息子的には可能。

でも、嫁的にはまだ不可能。

「1日3話」がノルマだからね。引きを作って翌日ってわけにはいかない模様。



「はやくはやく! はやくはやく!」

嫁のみーさんに、急かされる。あいよー、次にいくよー。


『第15話ね』

「あい!」


 〜ついに来た、幕張メッセでの本戦。


この間は、考え無しに、いきなり本戦の話を始めてしまった。

地区予選の話をすっとばして。


そんなことしたら、当然追い込まれちゃう。

だって、アドリブで「将来」の話を特定してしまう。

それがそのまま、「過去」への縛りになる。未来にちゃんと繋がるよう、整合性を取らないといけない。


早めに問題を潰さないと!


ってなわけで、地区予選の話を先に処理したわけ。

伏線はなんとか回収したと思う。

「地区予選で起こった奇跡」ってピンチも、偶然回収できたし。

ここからは、本戦の話だ。


 〜さて、本戦の会場。着替えが終わって合流したアタシ達。

 〜会場がこんなに広いと、大泉学園で出くわした、あの嫌なグループとも出くわさない。


グループ名決めないと、いちいち大泉学園の〜って言わないといけないな。面倒。


 〜えっと、大泉学園の嫌なグループは、ランキング8位の「やなーず」ね。


こういう分かりやすい名前にしとけば、混乱しないだろう。


 〜会場にはまだお客さんは入っていない。ステージで、リハーサルとか、最終練習とかが行われている。

 〜みると、ホントみんな、ダンスのレベルが高すぎる。ストップモーションとかやってる家族もある。

 〜あそこで、家族5人で白いお面を被ってるのは(笑)

 〜元ネタOKの規定曲だと思うけど、あれ、絶対、「ひとりでできるもん」だよね?


『みーさいさん、知ってる? ひとりでできるもん』

「知ってるよー!(怒) むーさいから、散々聞いたことあるし!」


昔、「少年チャンプル」というダンス番組があって、そこに登場していたダンサーさんだ。

「ひとりでできるもん」さんや、「Tozawa」さんなんかが出ていた。


「アニメーション」というジャンルのダンスを踊る。

ほんとのアニメの細切れみたいに、カクカクと体をロックしたり、ちょっと人間とは思えないような動きをする。

最初にこれを見た時は、衝撃だった。


最近だと、ドラゴンクエストビルダーズのPVに、お面を被った人がいたけど、

あの方、たぶん、「ひとりでできるもん」さんだよね? ほんとかっこいい!



『でーきーたーかなー』

『まだ』

『でーきーたーかなー』

『まだ』


「歌ってないで、話進めて!」

嫁のみーさんは、まだ怒っている(苦笑)


(注釈:上記の歌詞は、ドラゴンクエストビルダーズのPVより引用)

(ビルダーズ、オイラはPS4版を、嫁はVita版を買ってやり込みました! おもろかった!)


『えっと、どこまでいったっけ?』

「ほらー! すぐ忘れるー!」


そう。大泉学園の嫌なファミリーアイドル「ヤナーズ」と出くわさない程、幕張メッセは広いという話までだ。


 〜さて、今回の本戦も、くじ引きの結果、踊るのは前の方の順番になった。

 〜まずは規定曲から。大会まで1ヶ月、練習を積んだ成果を魅せつけるよ! おー!」


「えっ? どっちの曲?」

『規定曲の方。ギリギリになって作った、あれね』

「あれ? 練習期間があまりなかった曲があったはず」

『ん? それでしょ?』

「だって、むーさい、1ヶ月って言ったから」

『あ、ああ! そこは1週間だっけ(笑)1ヶ月じゃなく』


設定をしっかり把握している嫁。アドリブ朗読しているオイラが間違っている件。


 〜「1週間で、元ネタありで作ったダンスの、出来る限りの成果を、ぶつけよう!」


 〜1曲目の披露のため、ステージに移動。


 〜曲がかかるが、成人男性だけがステージに上がっていく。つまり、むーさいこと、オイラだ。

 〜むーさいは、ラップを始める。


 〜残った大人3人(全員女性)と、小さな背広にサングラスの息子、むーさんとが、後からステージに上がってくる。

 〜「We are ムーブ!」とMCが入って。


 〜そして、始まった。


 〜め・ぐ・む! めぐむ め・ぐ・む! めぐむ! め・ぐ・む! めぐむ …… I’m a perfect むーさん!」

 〜そう。録画していた、オリエンタルラジオの「Perfect Human」だ。


 〜ストップモーションでキビキビ動く、赤ん坊のむーさん。

 〜むーさんを後ろで操っているのは、嫁のみーさん。

 〜当然ながら、フォーメーションの先頭中央にむーさんと嫁。その他3人は後列でサポートダンスだ。

 〜「Perfect むーさん!」のタイミングで、嫁が、むーさんの首を「くきっ!」ってかしげさせる。

 〜あまり強くやると、首がすわって間もないので、危ない。 あくまでソフトに。



 〜お客さんの反応は、なかなか。旬のネタだから。

 〜「それできたのね」と普通に納得顔。

 

 〜ある意味、発表順が前で良かった。ネタ被りが本当にあり得るからね。旬のネタは。

 〜でも、被ってもいい。1週間でオリジナル作る冒険に出るよりも、これを可能な限り完成度高く踊った方がいい。


 〜所詮は1週間の練習クオリティだから、お客さんの度肝を抜くほどではない。

 〜結成初期からあった曲、次に2周目で披露する曲が、肝となる。それがどれくらい、観客に受けるか?

 〜それ次第だ。


『こんな感じで、第15話はしゅうりょうー』と、オイラ。

「よこく! よこく! よこく!」と、嫁のみーさんが急かす。



 〜ついに始まった幕張での本戦。1曲終わって一安心。

 〜2曲目の発表に準備が余念がないのに、気づいたらむーさんが消えた。

 〜どうしよう!


……やってしまった。

……赤ん坊の失踪事件を、つい発生させてしまった。

こんなの、どうやって解決するんだよホント!


「むーさん、動き回れないのに失踪なの?」と、嫁。


ほれみろ。早速問題が発生したよ。


『え、えっとー、オイラとむーさんが、一緒にいなくなったんだよ」


慌てて設定を足す。そして次回のタイトルコール。




 〜次回、第16話、『走れ! むーさん』 お楽しみにっ!


『あ、むーさんは単独で走れないや』

赤ん坊だから



 〜『走れ! むーさんを抱っこした、むーさい!』お楽しみにっ!

タイトルコールのやり直し。


ベビーベッドのむーさんは、すーすーと眠ったまま。

うん、隣でこんなに喋っても、気にする事も無く、良く寝る子だ。


先月ぐらいまでは、夜中も3時間置きには起きて、「みるくー!」って泣いてたんだけど、

最近は本当に朝までグッスリ寝るようになった。

生後2ヶ月目だというのに。

多分、手のかからない子だと思う。


親孝行な息子だよなぁ、むーさん。


<続く>

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