第20話/死体から寄生虫を引き抜くお仕事♡

 死体から寄生虫を引き抜く簡単なお仕事は肉体的に楽でも精神的に摩耗する。


 白くて透明に近い寄生虫と、黒くて割と太い寄生虫どっちが好きかって聞かれれば両方大嫌いだと答える。


 白い寄生虫を探す時は透明な液体があふれてるところか、少し血が出てるところを探すと見つかる。


 黒くて割と太い寄生虫は穴の周りが変色しているから穴からほじくり出すしかねーんだな。


 こんな仕事やめたい。


 でもやめるわけにはいかない。誰かがやらなければ、誰もやらないからだ。


 新人下っ端ど素人だからやらされる仕事だ。


 ……勘弁してほしいね。


「おやおや、精神が摩耗しているね、社畜くん!」


「うるさいなぁ……死体から寄生虫を引き抜く仕事で集中してるから声かけないでよ……」


 返答する気力も無くなりそうだ。内臓に近い所に多い。食べ物に寄生し本体の胃袋をぶちやぶり内臓をめちゃくちゃにする。


 上司からも寄生虫には気を付けろといわれるが、こうはなりたくないものだ。


「ねえ、寄生虫って嫌い?」


「ああ、好きなヤツの気が知れないな」


「寄生虫だって、ちゃんと仕事してるのよ?」


「え……内臓を食い荒らすのが?」


「こう見えて、寄生虫は生命の原初からいるし、寄生し食らうっていうのがなかったら生命は海から出なかったでしょうね」


 陸上生物は寄生虫を嫌って地上に出た、か……。ただの弱肉強食に追い出されたでいいじゃないか。


 しかし、死体から寄生虫を抜くので忙しい。


「細胞の進化、単細胞から複数の細胞、複雑なDNA配列に至るまで生命は進歩した。昔の生命は単純分裂ばかりしていた為、病気による感染と全滅を繰り返していた。病原菌を運んだのは寄生虫の卵で内部から体を変えていったのよ」


「ほう……つまり、特異体質や突然変異が起こったのは病原菌や寄生虫によるものだと?」


「まあそんなところね。だから寄生虫にも感謝して仕事しなさい」


「……生きるってめんどくさいなぁ」


「人間の体は完成しているんだからいいじゃない。ルーツツールでアウトプットしていけばいいんだからさ」


「その前にオレは死体から寄生虫をアウトしてプットしなきゃだよ。もういやだぁぁあああああ!!!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る