第17話/野良猫は車に撥ねられて死ぬ


社畜くん「……」


社畜くん「ゆ、ゆめか……夢、だよな」


仕事ちゃん「どうしたのー?」


社畜くん「夢を見ていた。朝、仕事に行ったら野良猫が死んでいたんだ」


社畜くん「すごく嫌な気分だった。朝からさ……それで仕事をずっとやって、13時間後、同じ道を通って帰ったんだ」


社畜くん「帰り道、野良猫の死体があったんだ」


社畜くん「死体は13時間放りっぱなし、炎天下に焼かれ、大衆の目に晒されながらも野良猫の死体はアスファルトに叩きつけられてた」


社畜くん「……死は生き物が物になるだけじゃない。命が終わるんだ」


社畜くん「人は死んで楽になるか? 本当にオレは死んで楽になるのか? オレは死んだら終わりじゃない。死体が残る。それがゴミのように処理されるか、されないか」


社畜くん「残るものってなんだ。死ねば何も残らないのか? 残るのは死体だけか? 死ぬって誰も何もしてくれないことなんじゃないだろうか……」


社畜くん「ははは、そんな夢さ」


社畜くん「夢だよ……悪い夢。オレは野良猫の死体の夢を見たんだ」


仕事ちゃん「そう」


仕事ちゃん「それ、現実だけどね」


社畜くん「……うん、そうかもしれないな」


仕事ちゃん「う~ん! その絶望に近く不安に目を回し狂気に震える顔、最高だね! そうよ、現実なの!」


仕事ちゃん「野良猫は車にはねられて死ぬ! 誰も死体の処理はしてくれない! 13時間道端に放置されて生ゴミのように虫が集る!」


仕事ちゃん「で、それが何か不都合でも? 君になんのデメリットがあるの?」


仕事ちゃん「仕事の邪魔になるの? モチベーション下がったった? 目の前には私(仕事)しかいないでしょ?」


仕事ちゃん「ねえ、どこ見てるの? ねぇねぇどこ見てるの? 私を見てよ、私を」


仕事ちゃん「私を、この私を、仕事を見てよ」


仕事ちゃん「そんなくだらないものに情を移すな。働け社畜」


仕事ちゃん「野良猫に神はいない。でも社畜には働く限り仕事が居てあげる」


仕事ちゃん「ね? 働らこ?」


社畜くん「……」


社畜くん「わかった、働く」


仕事ちゃん「そう、それでいいの!」


仕事ちゃん「あなたが働く限り、私が側にいてあげる……フフフ、フフフフフ」


社畜くん「野良猫に神はいない、社畜には仕事がいる」


社畜くん「ははは、つまり社畜にも神はいないんだな。神ってどこにいるんだろうな」


仕事ちゃん「そんなのお金を持ってる人が作った偶像に決まってるでしょ? 神に会いたければ金を積めばいいのよ」


社畜くん「神に会いたければ金を積むしかないのか」


社畜くん「神はどうでもいい。オレは……この世界が大嫌いだ」


社畜くん「……救いようのない、この世界が大嫌いだ」


――Fin――

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