第7話
3月31日
この日はM社社内のゴルフコンペが笠間カントリーで開かれる。
総勢8組、32人のコンペで、M社ゴルフ同好会、笠間カントリー、グランド仙台のメンバーが参加している。
ゆいかも勿論、参加しており今日は笠間カントリー社長・河合と、五十嵐・柴田と同じ組だ。
IN13番ホール、レディース488ヤードのパー5。
ピィィィ〜〜ン!ゆいかが放ったショットは快音を放ち、250ヤード以上飛んだ。
河五柴「ナァ〜イスショッ〜‼︎」
河合「しかもフェアウェイど真ん中だぞ〜大澤くん!」
ゆ「ありがとうございま〜す!」
このホール、ゆいかはバーディーで沈めた。
昼食時
五十嵐「いや〜今日は天気にも恵まれて、絶好のゴルフ日和ですね、河合社長」
河合「いや〜本当にそうだ、こんな日にコンペができるなんて、社長冥利に尽きるよ。それにしても大澤くん、今日はいつにも増して絶好調だなぁ!ハーフ39なんて、驚くべきスコアだね!」
柴田「もうプロ転向しちゃえばぁ〜大澤」
ゆ「いや〜今日のはまぐれですって」
河合「いやいや、いつでもプロになってもらっても構わないんだぞ、私は。うちの宣伝効果にもなるからね笑」
ゆ「それが目的ですか〜社長」
一同「ハハハハハ」
結局、ゆいかのグロススコアは84で自己ベスト更新はならなかった。ただ、ベスグロ・1位ともゆいかで、ドラコン・ニアピンを計3つも獲得できたので、ゆいかにとって満足のいく結果となった。
コンペの後片付けが済み
河合「大澤くん」
ゆ「あ、社長。お疲れ様でした」
河合「いやいや、本当にお疲れ様。そして見事だったよ。君が84で私が87、ホストの我々が1位2位を独占してしまったもんなあ」
ゆ「私、ゴルフが好きすぎて笠間から離れたくないです」
河合「ハハハ、そうか。頼もしい言葉だ。ところで大澤くん、ちょっとこれを見てほしいんだ」
河合はゆいかに、ある新聞記事を見せた。
ゆ「社長、これ何ですか?」
河合「茨城新聞の記事なんだけどな、毎週月曜日掲載で、県内企業の経営者にインタビューしたのをまとめた記事なんだ。昨日新聞社から連絡があって、うちのことを取材したいそうなんだ。私は許可したんだけど、もしよければ、君も一緒にインタビューを受けてみないかい?」
ゆ「えっ、私がですか⁉︎経営者ではないのに…」
河合「私が度々話す通り、君のことを気に入りリピーターになっていただいているお客様が最近増えているんだよ。だから、うちの顔として、ぜひ一緒に取材を受けてもらいたい」
ゆ「うーん…」
河合「どうかね、大澤くん。ちなみにうちによくいらしていただく、水島薬局の社長も以前、記事になってるぞ」
ゆ「笠間カントリーの為ならば…お受けします」
河合「えらい、よく言ってくれた!お礼は私からもするからさ」
ゆ「ちなみにインタビューをする日はいつですか?」
河合「新聞社は、いつでも来ると言っている。私もいつでも構わないから、君が決めていいよ」
ゆ「では、一週間後の…4月6日で如何でしょうか?」
河合「わかった!そうしよう。新聞社には私が返答しておくよ」
ゆ「ありがとうございます」
その夜、水戸内原のスタバで
ゆ「というわけであきらさん、私取材を受けることになっちゃったの」
あ「すごいじゃないか、ゆいか!、茨城中に君の顔が知れ渡るんだぞ!」
ゆ「そう考えると…恥ずかしわ〜。あー簡単に受けちゃって後悔するわあ」
あ「おれ、君はそういうインタビュー受けるのって向いてると思うけどなあ〜」
ゆ「どうして?」
あ「だって、何でもハキハキ答えるし、笑顔が素敵で美人だし」
ゆ「もう、照れちゃうわ、そんな♡あきらさんは何か、インタビューって受けたことある?」
あ「そうだなあ〜、大学のころのサークル活動で一回、あと、テレビに出たこともある」
ゆ「そのテレビってもしかして…」
あ「そう、新婚さん」
ゆ「今でも出演したこと、言われたりする?」
あ「いやあ、さすがになくなったな。もう3年も前だから」
ゆ「3年前なんだあ〜」
あ「うん〜…まさかあの頃、君とこうして時間をともにするとは、思いもしなかったなあ〜」
ゆ「奥さんのこと、好きだったのね」
あ「今でも好きさあ、さよのことは。さよ以外に、君のことも同じくらい好きになってしまったんだよ。君もたけひこくんのこと、好きだろ?」
ゆ「うん…あきらさんは、たけちゃんに足りない部分を…大人らしさや包容力とかね、すべて持ってるから、私惚れてしまったのよ…」
あ「……惚れた理由をそこまではっきり言えるんだから、インタビューも問題ないよ。ゆいか」
ゆ「笑、そうね。そう思うことにするわ」
時計を見ると、夜10時を回っていた。
あ「おっと、もう行かないと。10時半水戸着の電車で、さよが戻ってくるんだ」
ゆ「奥さん、東京行ってるの?」
あ「ああ、日帰りでな」
泊まってくればいいのに…ゆいかはそう言いかけたが、あきらがさよのことを愛してると思うと、迂闊に言えなかった。
スタバの外で
ゆ「じゃあ今日はここまでね、あきらさん」
あ「ああ、すまんな。インタビュー頑張ってな」
ゆ「うん! またね!」
4月6日午後、インタビュー当日。
記者2人「失礼します」
河合「はい、どうぞ」
記者「茨城新聞の中野と申します」「石毛と申します」河合・ゆいかと名刺交換をする。
中野は40代くらいの男性記者で、石毛は20代半ばくらいの女性記者だ。
河合「どうぞおかけ下さい」
中野「河合社長、私長らくこの記事の担当をしていますが、大澤さんのような若い方にお話をお聞きするのは初めてです」
河合「ははは、そうですか」
中野「企業経営者の方にインタビューさせていただく企画なので」
河合「あの、うちの大澤は経営者ではありませんが、弊社の大事な戦力として大活躍しております。ご存知だとは思いますが、弊社は平成21年に民事再生法の適用を受け、M社傘下となりました。言うなれば、一度破綻した企業です。それ以降数年間は目立った成長はありませんでしたが、おかげさまでここ2年間は大幅な増収増益を達成しております…。そのために私が実施したことは、大まかに言えば、首都圏エリアへの積極的なアピール・ゴルフ観光誘致、地元茨城県でのゴルフプロモーションです。茨城県や笠間市、広告代理店様にも御協力いただいた結果、私が実施した施策は来場者数の増加につながりました。大澤たち部下からもたくさんの意見をもらい、施策に反映させました」
河合はM社生え抜きの人物ではなく、Mグループ会長に見出され、2年前に広告代理店から笠間カントリー社長に就任した。代理店時代の手腕を生かし、僅か2年で150%の増収増益を達成させたのだ。ゆいかは河合に臆することなく意見を述べ、これまでに茨城県内高校生ゴルファーと協力した広告制作、首都圏向けのTV・ラジオCMの制作(ゆいか自らが出演)を河合とともに手がけてきた。
このインタビューでゆいかは、自らが笠間カントリーで行っている業務を朗々と語った。
1時間後
中野「いや〜大変貴重なお話をしていただきありがとうございました」
河合「こちらこそ、そちらの引き出し方がお上手で、話したいことをほぼ全て話すことができました」
中野「いえいえ…あ、すみません言い忘れてました、このインタビューは再来週の月曜日、16日の朝刊に掲載させていただきますので、宜しくお願いします。」
河合「わかりました。楽しみにしています」
石毛「あのー、大澤さん」
ゆ「はい?」
石毛「もしご迷惑でなければ、これからも定期的にお話聞かせていただいてもいいですか?私、新聞記者になって2年目なんですが、大澤さんの行動力にすごく感銘を受けまして、同じ働く女性としてたくさんお話お聞きしたいなあ〜と」
ゆ「あっ…私でよければ、どうぞ」
河合「今度飲みに行けばいいじゃないか、一回」
ゆ「あ、そうしましょう石毛さん。私お酒大好きだから」
石毛「はあ〜っ、ありがとうございます!」
中野「すみませんね、わがまま申し上げまして」
ゆ「いや、いいんです。私茨城に1人で来ていて友人がほしいので〜」
ゆいかは石毛と、2週間後水戸駅前で食事することにした。
記者たちが帰ったあと
河合「大澤くん、あの石毛さんってなかなか気骨のある記者になりそうだね」
ゆ「そうですねえ、私も話していて楽しかったです」
河合「君によく似ているよ。よき友人になるといいね」
ゆ「うふふ、そうですね」
インタビューを受けるのも悪くないわねそう思っているゆいかだった。
つづく
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