第2話

 トラックの荷台に、他の新兵達と一緒に詰め込まれて前線に向かう。かれこれ四度目の乗換えだ。その度に重い荷物と銃を持ってそこそこ大きいトラックの荷台から乗り降りしなければいけなくて、なんかもう、無性にイライラしてくる。三度目の乗り換えくらいから誰も喋らなくなっていた。

 背嚢を背負ったまま、歩兵の基本装備であるライフルを太ももの間に挟む。初めの頃は異国の風景が珍しくて皆きょろきょろしていたけれど、何時間も同じような風景が続くと皆俯いてしまった。まあ、僕も俯いている一人なんだけれど。


「おい」


 隣に座っていた新兵……リンドストレームとかいう名前の奴が話しかけてきた。


「なに?」


「周り、見てみろよ」


 いやらしい笑みを浮かべながら、リンドストレームはそう言った。確かこいつ、北にある国からの移民だったっけ。これだから移民はいやなんだ、なんだってそう、なんでもないことまで下品に振舞わずにはいられないんだろう。

 まあ、他にやることもあるわけがないので言われたとおりに顔を上げて周囲を見渡してみた。


 基本的になんにもないただの平原というのは同じだけれど、先ほどまでとは違って至る所にぼこぼこと穴が空いており、あちこちから黒煙が吹き上がっている。遠くには霞んでいるけど街も見える。


「えっと、前線が近付いているってこと?」


「というよりも、ついこの間までこの辺りが前線だったって感じだな。今はほら、あの街の中でやり合ってるらしいが」


 僕とリンドストレームの会話を聞いていたらしい他の新兵達も辺りを見渡したり、そわそわし始めた。


「なんでそんな事がわかる?」


「ここじゃ新兵扱いだがね、これでも俺は故郷くにじゃ七年軍に居たのさ。三年前の戦争にも参加した」


確かその戦争でリンドストレームの祖国は大負けしたはずだ。国土の三割を東の大国に奪われたとか。


「なんでこの国に来たんだ? 自分の国の軍隊でそのまま続けていればよかっただろ」


「そりゃお前、くそったれの赤共をぶっ殺してやるために決まってんだろ。……おい、たぶんあの街が目的地だ。お前、名前は?」


「……マルティン・アーメントだ。よろしく」


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