第6話 負けたくないから

(繭村目線)

「なになに…。一班は6人で、男女それぞれ3人のグループなんだな。よしっ、桜さん!」



「な、なに?」



「俺と一緒の班に…。いや、俺と付き合ってくだs」



「はいはい。とりあえず、俺と小沢とコガネムシの3人でまず組もうか?」



「おい!今良いところだったんだから邪魔すんなよな。…うん?コガネムシって俺のこと?うん?」



「ぷぷっ。こ、コガネムシ…」



「小沢は笑ってんじゃねぇよ…」



 頬杖つきながら、私はがっちゃんたちの方を見ている。なんだか盛り上がっていて楽しそうだ。別にあの中に入りたいわけじゃないんだからねっ。



「…」



「まゆ」



「…」



「まゆ聞いてる?てか、聞こえてる?」



「えっ?あっ、ごめんごめん!」



 後ろの席の向井(むかい)さんに呼ばれてたらしく、反応に遅れた。なんだろ、ボーッとしてたのかな。



「繭村なんか上の空だったよー。どこ見てたのかなー?」



 すると、ある意味うちのクラスのムードメーカーである峰(通称、ふじこ)がニヤニヤした顔で来た。ふじことウチらのグループで呼ばれている。



「べ、別にどこも見てないし」



「…がっちゃん」



「えっ!?」



「あっ、顔赤くなってる」



 向井さんがすかさず指摘。私は思わず自分の顔をペタペタと触ってしまう。



「あ、赤くなってるわけないじゃん!何言ってるの!?」



「繭村。もうバレバレだから」



「ほんと分かりやすいよねー、まゆって」



 私の顔を見ながら、ニヤニヤとした笑みで向井さんとふじこは談笑していた。 

 な、なんでバレてるの!?誰にも言ったことないのに!!!



「別に私はがっちゃんのことなんて、…好きとか…モニョゴニョだし」



「えっ、好きなの!?そうなの!?」



「声でかいし!」



「ふじこイジメちゃダメだよ。私たちは応援してるからね?」



「あ、ありがとう。…って、だからそんなんじゃないって言ってんじゃん!」



 この二人の執拗な押しに嫌気が差してきたのでそっぽを向く。

 でもさ…、好きなこと言ってるけど、がっちゃんはどこからどう見ても桜さんのこと好きだし。さっきなんて告白しようとしてたし。



「…はぁ」



「あっ、落ち込んでる」



「テンションいきなり下がってるね。そりよりさ、校外HRのメンバー、うちら3人で組まない?」



 一人黄昏ていたら、ふじこがいきなり提案してきた。まぁ、だいたいこの3人いることも多いし問題もない。



「うん。いいよー」



 私は同意しておくと…。



「じゃあ、男子のグループは…いっちゃう?」



 なぜかいきなり、ふじこに肘でつつかれる。なにそのノリ。オッサンか。



「そうだね。まゆ…いっちゃう?」



 すると、今度は向井さんにもぐいぐい押される。しかも、その方向の先には彼がいて…



「えっ、いや、なに言ってんの!?なんでがっちゃんたちのグループに向かわせるの!?」



「繭村…これはチャンスなんだよ?」



 ふじこは急に低い声で話し始めた。



「チャンス?」



「そう。校外HRとか、仲良くなるにはうってつけじゃん?それにしかも、1泊2日」



「1泊2日…」



「2日もがっちゃんの傍にいれるんだよ?存分にアピールできるんだよ!?」



 そう大きな声で言って、ふじこは私の胸をわしわしと掴みだした。

 


「ちょっ、何してんの!?くすぐったいぃぃ」



「うるせー!こんな武器装備しやがって。このEカップ!童顔のクセに!」



「童顔は関係ないじゃん!」



「…ほんと、まゆはいいよね。私なんか…」



 すると今度は、向井さんが消え入るような声でぼそぼそと喋りだした。胸に手を当ててなんか思い詰めた顔してるよ!



「向井さん元気出して!私別にそんな大きくはないs」



「いいからがっちゃんのところに行けよ!一緒の班になりたいんでしょ!?」



「えっ、でもさ…」



「まゆは負けたくないでしょ?」



 向井さんのその言葉。

 負けたくない?…うん。負けたくない。



「う、うん。…わかった、行ってくる!」



 私はそう答えてがっちゃんの元に向かった。たぶんだけど、向井さんもふじこも応援してくれるはず。



「…」


 

 距離が近付くたびに心臓がバクンバクン跳ねるのがわかる。なんか緊張してきた。それでも、言わなきゃいけないことがあるから。



「が、がっちゃん!」



 佐藤くんと小沢くんと喋っていた彼の前で足を止める。そして、小沢くんが付けたアダ名で彼の名前を呼ぶと、、、



「…うん?」



 がっちゃんは私の方に顔を向けてくれた。そのとき初めて、目と目が合った…。

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