第4話 まさかこんなところで…

(小金目線)

 学校生活も慣れてきて、それなりに知り合いも出来てきた。後ろの席の佐藤は相変わらずサッカーバカだし、桜さんはいつも可愛いな。ああ、桜さんと付き合いたい…

 桜さんのことを考えながら、屋上の上で寝そべる。まだ昼休み。今日は快晴だから気持ちいい。 



「…このまま寝よっかな」



 睡魔が襲ってきたので目を閉じようとしたら、どこからか音楽が流れてきた。



「…」



 フルートなのか、なんなのか。心地よい音が耳の中に入ってくる。

 ああ、気持ちいいな。どこかで誰か演奏してるのかな…

 俺は気になったので、その音の出所を探してみると。



「…」



「さ、桜さん!!?」



「あっ、小金くん」



 そこには桜さんがいた。フルートを吹いていたのだが、俺の声に気がついて演奏を止めてしまった。

 それにしても、同じ屋上にいたんだな。昼休みにフルートを演奏する彼女と偶然にも出くわすなんて…



「運命だな」



「う、運命?」



「なんでもない。なんでもないぞ、ええ本当に」



 危ない危ない。思わず口から本音が漏れてしまったぜ。



「昼休みなのに練習してるんだ?」



「うん。吹奏楽部は毎日お昼も練習なんだ」



 あっ、桜さんは吹奏楽部に入ったと聞いたな。



「そうなのか…。たしか、朝練もしてるっけ?」 



「そうだよ」



「すげぇな。ハードな部活だ」



 吹奏楽部のハードスケジュールに白目剥いてると、桜さんはクスクスと笑っていた。 


 

「え、なんかおかしかったか…?」



「ううん。ただ、小金くんが一人で屋上にいるのが珍しくて」



「いや別にハブられてるわけじゃないからね?自分からここに来たからね?」



「それって、もしかして私の…」



 急に桜さんの顔色が曇る。まずい、このままだと変な誤解をさせてしまう。



「違うんだ。俺は昼寝しにきただけなんだ。だから、桜さんがここにいると知って後を着けてきたなんてことは、断じてない!」



「…」



「ほ、ほんとにほんとだよ?」



 少し涙目になりつつ答えると、疑惑の目を向けていた桜さんだったが、すぐにいつもの穏やかな表情になって。



「うん、わかった。じゃあ、私はそろそろ練習に…」



「おう。頑張ってな」



 そう声を掛けると、桜さんは両手にフルートを持ってニコリと微笑んだ。

 ああ…。なんて眩しいんだ。そんな笑顔浴びせられたら、ここから動けなくなるぜ。



「…」



「あ、あの。そんな見られるとやりづらいかも…」



「あ、ああ。すまん」



 俺は桜さんから少し離れたところに体を下ろして、彼女の演奏を聞きながら目をつぶった。

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