第10話:事後の冷たさ……
主人:「では、さっそく【冷し中華】を実食しようではないか」
レイ:「…………」
主人:「どうかしたかね?」
レイ:「……いや、どうかしたかねじゃないアル。これ、どういうことアルネ?」
主人:「なにが?」
レイ:「なにが、じゃないアル! なんで脚本形式になっているネ!?」
主人:「うむ。エッセイとは乱文形式で書かれたものだから、いろいろ挑戦してみるのもいいかな……と」
レイ:「違うアルネ! 乱文じゃなく散文ネ! それに散文だからと言って一貫していないのは……」
主人:「うるさいこと申すな、町娘風情が」
レイ:「誰が町娘風情アルネ!」
主人:「散文でも、乱文でも、乱交でも大差ないだろう」
レイ:「なっ、なにどさくさに紛れて言ってるネ!」
主人:「点が2つ増えただけではないか。細かい奴め……」
レイ:「細かくないアル! 大違いアル! ……だいたい、こんなことしていいアルネ?」
主人:「何か問題が?」
レイ:「わかってないアルカ? 作者が、自分のキャラと会話するのは、一番、恥ずかしいパターンアルネ。中二病に近い恥辱プレイアル!」
主人:「おまえ、偉大なる故・和田慎二先生をディスるのか!?」※1
レイ:「そんな大物と並べて考えられるご主人様の方が、ある意味で和田先生をディスってるネ! ともかく、こんな恥ずかしい文章書いていると、あとで思い出して黒歴史になるアルヨ!」
主人:「……ああ。残念だったね。実は、私は作者ではなく【ご主人様】というキャラクターなのだよ。だから、まったく恥ずかしくない!」
レイ:「そっ、そんな言い訳きかないアルネ! きっとみんなに後ろ指さされて『恥ずかしい奴、ウプププ』と言われるネ!」
主人:「ああ、笑いたければ笑うがいいさ! よしんば辱めを受けても、それに対する耐性は大昔についておるわ! むしろ、今では快感である!」
レイ:「くっ……変態は始末におけないアルネ……」
主人:「ふん。恋愛モノやエロを書く小説家は、みんな恥も外聞も捨てて、変態の道を歩み続けているのだ」
レイ:「敵、増えた! 今、敵が増えたアルヨ!」
主人:「まあ、そんなことよりも、【冷し中華】を早速食べようではないか」
――ちゅるるるる……
主人:「うん、うまい」
レイ:「――ちょーっと待つネ! ちょっと待つネ!! ちょっと待つネ!!!」
主人:「なんですか。うるさいですね、君は……」
レイ:「いやいやいやいやいや!!! おかしいアルヨ! すごくおかしいアルヨ!」
主人:「まったく。なにがおかしいというのです?」
レイ:「ちょっ! なんでそんなに賢者モードで落ちっているアル!? 今まで大興奮して、第9話までかかって食べる準備してきたアルヨ!? それなのに、なんでそんなあっさり食べて、そんな『孤独のなんとか』みたいなコメントをポロッとこぼしているアルカ!?」
主人:「え~。もうなんか、【冷し中華】、あきたっていうか……」
レイ:「ひっ、ひどいアル! レイのこと、あれだけ弄んで……」
主人:「まあね。楽しかったよ」
レイ:「ひどっ! 開き直ったアル! いきなり人をヨゴレにして!」
主人:「そのために産んだキャラだから本望だろう?」
レイ:「……今なら、運命という神さえも殺せる気がするアル……」
主人:「もう。仕方ないなぁ……。では、もう少しきちんとレイを嬲っているシーンを描写してやろうではないか」
レイ:「そっち!? 違うアルネ! 【冷し中華】をちゃんと描写するネ!」
主人:「え? でも、読者もそっちのが喜ぶだろうし、PV稼げるだろうし……」
レイ:「露骨アルネ!? PVなんて関係ない、【冷し中華】への愛はどこにいったネ!? 最初のころの情熱を思い出すアルヨ!」
主人:「ちなみに、読者から『麻婆豆腐娘などもどうか?』というリクエストのメールが届いているが……」
レイ:「……………………」
主人:「――!?」
レイ:「……………………」
主人:「オーケーオーケー。落ち着こう。話し合おう。分かり合おう。【冷し中華】を描写しよう」
レイ:「最初から、素直にそうすれば……」
主人:「では、次回をお楽しみに!」
レイ:「――終わりアルカ!?」
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※1:故・和田慎二先生をディスるのか!?
和田慎二先生は、「スケバン刑事」などで有名な漫画家。
おまけ漫画でよくキャラと会話したり、漫画の中に作者自身が登場したりしていた。
2011年7月5日に惜しまれることに死去。
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