第9話:退廃の虜
レイは嬉しそうに、その場で身軽に回って見せた。
白地にカラフルな花柄のスカート部分が、ふわりと広がる。
まるでそれは、花の舞。
彼女が回るのをやめると、スカートは惰性で彼女にまとわりつく。
その様子は、花のつぼみを思わす。
そして、戻りながらふわりと広がる。
それは、まさに開花。
「うん。似合っているね」
私の声に、レイは目をパチクリとさせてから、すっと顔を赤らめた。
「べ、別に褒められても嬉しくないアル……」
そらした視線がまた服にいったのか、彼女の膨れた頬はすぐにゆるんでしまう。
よほど気に入ったのだろう。
胸元から片まで露出したドレスは、彼女のバランスのよいバストを程よく強調していた。背中も紐で結ばれて、その隙間から背筋が覗いている。彼女のうなじから背筋のラインを余すことなく魅せていた。
私が彼女のために作らせたオーダーメイドだ。似合っていて当然ではある。
だが、ふと彼女は不安げな顔を見せた。
「で、でも……なんで……アル?」
レイは、戸惑いを見せていた。
その理由がわかっていながらも、私はわざとらしく惚ける。
「だ、だって……ま、まだ……そのぉ……」
そう。
まだ
「わざわざドレスを着せて……これから、でかけるアルカ?」
私は首を横にふる。
そして彼女に近づくと、柔らかな曲線を描く顎を人差し指と親指ではさみ、少し上にさせる。
「君を……レイをメチャクチャにするために着せたんだよ」
「……え? な、なにを言ってるアル?」
私の不穏な言葉に、彼女の顔が強ばった。
その表情だけで、私は興奮してしまう。
ああ、なんといい表情をするのだろうか。鮮やかに着飾った花の中で怯える少女は、愛おしすぎて愛おしすぎて……。
「その花びらを散らしてメチャクチャにしたいのさ。私の嗜虐心をそのままぶつけるようにね」
「ご、ご主人様……変態アル!」
彼女は怯えるように震えた。
だが、逃げようとはしない。
わかっている。彼女の芯は、もう熱くなり始めている。
私はおもむろにドレスの胸元をつかんだ。
そして、引き下ろす。
「――キャッ!」
一瞬、胸が顕わになるも、レイは慌てて両腕で隠した。
目も口もキッとつりあがり、私を睨む。
「な、なにするネ! せっかくのドレスが――」
「大丈夫だよ。背中の紐は切れやすい物に変えてあるからね」
「なっ……」
私の言葉に、レイは言葉を失う。
「私はね、飾り付けられた秩序を混沌に、美しく整ったものを乱れ淫らに貶めたいのさ」
「か、完全に変態アル……」
「そうかい。でも、君はきっと受けとめてくれるだろう……レイ?」
私の微笑に、彼女は数歩下がってベッドに腰かけ、そのまま視線を合わせないように寝転がってしまった。
「し、知らないアル。す……好きにすればいいアルヨ。どうせレイは、ご主人様のものアルネ」
そう応じてくれた彼女に、私は覆いかぶさるように上から手をつく。
「ありがとう、レイ。君の体の芯から頭の中まで……メチャクチャにかきまぜてあげるよ!」
「えっ!? やっ、ちょ……いきなり……あっ……あああああっっっ!!!」
そこからしばらく、彼女の乱れ狂う声が部屋中に響き渡っていた。
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このようにして、【冷し中華】を食べる前には具材と麺をかきまぜてしまうのがよい。
かきまぜるなら、最初からきれいに並べることないじゃん……という人は、もう一度、上の解説を読んで退廃的な楽しみをよく理解するようにしてほしい。
端的に言えば、【冷し中華】好きは「変態」だということだ。
なお、【冷し中華】によっては、キュウリや卵などがきちんと千切りにならずに繋がってしまっているものもある。
まるで、生まれた時から一緒に居た双子の兄妹が、どんな苦難でも手を離さないかのごとく、くっついているようなものだ。
その場合でも――
「お兄ちゃん!」
「大丈夫だ、ボクは手を離さない! だから、きみこも……」
「くっくっく……いつまで手を離さずにいられるかな?」
「くっ。誰が大事な妹の手を離すもんか!」
「……あっ! いやっ!」
「きみこ!?」
「ほ~ら。どうだ? 気持ちよくなってきただろう?」
「いやぁっ! やめて!!」
「やめろ、貴様! きみこに触るな!」
「くっくっくっ。ほら、もう力が入らなくなってきた。気持ちよくってどうでもよくなってきたんじゃないのか?」
「あっ……あああ、だめ、お兄ちゃん……」
「きみこ! がんばれ!」
「ごめ……ん……おにいちゃん……あ、あたし……いっ!?」
「き、きみこおおおぉぉぉ!!!」
――と、こんな感じで錦糸卵などをきれいにほぐして、ばらけるようにしてほしい。
特に紅生姜などは固まっていると、口の中が大変なことになるから要注意だ。
中にはかきまぜないで食べるのが好きな人もいるかもしれんが、やはりいろいろな食感が宝箱のように楽しめるよう、よくかきまぜることをお薦めする。
次回は、やっと食べる話である。
ここまでの道のり、大変だったがやっと食べられわけだ。
なお、続きはノリを変えて楽しく食べる話を書きたいと思っている。
さすがに食べるシーンを上記のノリで書いてしまうと、ちょっとしたカニバリズムになってしまうので(笑)。
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