第7話:初めてのシルシ
レイは、美しかった。
たとえるなら、夜の泉で月夜に照らせる女神のようだ。
闇に沈んだ墨色の泉。
その中央には、泉に写しだされた満月のような
かのアフロディーテも、うらやむ姿だろう。
だが、まだだ。
彼女は身を強ばらせている。
これでは、ダメだ。
彼女を縛るものから解放する必要がある。
「ほら、力を抜いて……」
「ちょっ……ちょっと待つアル……あっ!」
もちろん、私は待たない。
まず、髪を梳くように指を差しこむ。
一本、一本、梳かすように、撫でるように、ゆっくりとばらけさせていく。
レイの髪は、すべすべとしていて撫でているこちらまで気持ちよくなってしまう。
おかげで夢中になりすぎて、気がつけば、まるで水に垂らされた絵の具のように、その髪は水面に広がる。
ふとやり過ぎたかと顔を見ると、小声で「それ、好きアル」と彼女が呟く。
私はそれに答えるように微笑むと、そのまま指の腹を首筋に這わせ、肩を進み、スラリと伸びる腕を楽しんで、指先へ辿りつく。
かたく握られた掌を一度、包みこむようにしてから、指の隙間にも差しこんでいく。
一本、一本丁寧に、指を絡ませながら……そして小指まですべてを開かせる。
その時には、かなり身がほぐれ始めていた。
ここまできたら、一気に行く。
「ダ、ダメ……アル……」
彼女の固く閉じる脚の隙間に手を差しこみ、ほぐすように力をこめる。
「あっ! い、いやっ!」
水滴が跳ねるような声は、私にとっては心地よいゾクゾク感になる。
周りに漂うムシムシとした暑さなど、すっかり忘れさせてくれた。
しかし、逆に私の芯は熱くなる。
その熱さをぶつけるように、グイッと太股を開かせた。
「……恥ずかしいアル……」
伝わってくる。嫌がっていない。求めている。
それにもう、目の前には私の欲望を受け入れるための隙間ができあがっている。
私は、その隙間を愛しむように撫でていく。
「ま、まだ……」
「なに言ってるんだ。もうこんなに濡れそぼっているじゃないか……」
黄色い肌で甘酸っぱい液体が、ぴちゃぴちゃと音を立てている。
その音は、私の愛を感じている証拠だ。
もう、ここまできたら我慢はできない。
私は、かたくそそり立つ棒を一気にそこへ差しこんだ。
「――っつつ!」
ぴちゃという音と共に、レイのくぐもった悲鳴があがる。
私は、そのまま動かない。
その彼女の様子を上から堪能する。
「……はあああぁ……」
刺激の大きな波が過ぎたのか、彼女の息が漏れた。
と、彼女の視線が私から外れ、下に向けられる。
「……シミ……」
「ん?」
彼女の視線を追って、言葉の意味を探る。
「……大丈夫だったアルカ?」
私はやっと言葉の意味を理解して確認する。
すると、白い布に、斑点のように広がる数個のシミができていた。
「ああ……シミになっているね」
「あうっ……すぐ洗濯しなくて大丈夫アル?」
「大丈夫だよ。というより、二人の初めての記念に残しておこうかな?」
「……ばか……」
彼女の身も心も、完全にほぐれていた。
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これが、具体的な【冷し中華】の麺のほぐし方である。
ポイントは、まんべんなく麺にかけ汁を染みこませることだ。
そのためには、まず箸でかるく全体を撫でるようにまわしていく。
その後、箸を麺の隙間に差しこむようにして、ゆっくりとほぐしていく。
なるべくすばやくやりたいところだが、麺が滑りやすくなってくるので、非常に汁が跳ねやすく、白いシャツを着ているとシミができてしまったりする。
上記の例では、記念にシミになったシャツをとっておくようだが、一般人にはお勧めしない。
やはり、すぐさま染み抜きした方がいいだろう。
会社や外で食べた時に染み抜きする場合は、ティッシュなどを折りたたみ厚くして、たっぷりと水を吸いこませる。ハンカチとかでやると、ハンカチにシミが移ってしまうのでお薦めしない。
そして、もう一枚、乾いたティッシュを用意して、挟むようにして擦らずに叩く。
絶対に擦ってはいけない。
これは大事だ。
たっぷりの水でシミが流れだすようにして、乾いたティッシュで吸いとらせる感覚だ。
ティッシュが汚れたら、新しいものに交換しよう。
ある程度まで染み抜きしてみて、まだ抜けないようならほんの少し手洗い洗剤を染みこませて叩くとさらに落ちやすくなる。
ここまできたら、多少(本当に多少)擦るのもありだ。
ただし、洗剤をつけすぎると泡が取れなくなったりするので、つけるならわずかにしておこう。
仕上げに、新しいティッシュに水を染みこませて流すようにとっていくようにしよう。
ちなみに、「汁のシミ」を略して「シルシ」という。
覚えておこう。
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