二人の蜜月

第4話:ウェディングを夢見て……

 それではさっそく、【冷し中華】を楽しもう。


 ところで。

 コンビニ【冷し中華】のケースには、大きく分けて2種類ある。

 円型と八角型だ。

 この中でも私は、八角型が好きだ。

 それはなぜか?


 多くの人は、見ているようで見ていないのだ。

 テーブルの上に置いたコンビニ【冷し中華】は、照明に照らされて白い光を輝き放つ。さらに具材の色が加わり、それは七色の虹となる。


 その時。

 ああ、その時だ。

 想像してほしい。


 そのケースが八角だったら……。


 それはまるで、ブリリアンカット!

 夢見る花嫁のすらりと伸びる薬指に輝く、1粒のダイヤモンドを思い浮かべさせるではないか。

 それはまさに、心に描く永遠の輝き。

 テーブルに置いただけだというのに、その存在感!


 今、【冷し中華】はダイヤモンドになる!


 コングラッチュレーション!!


 この世の中に、存在するだけで愛を語れる食べ物が、【冷し中華】のほかにあっただろうか。

 いや、ない!


 コングラッチュレーション!!


 しかも、【冷し中華】の愛は、こんなものではない。


 その愛は、蓋を抑えるため、パッケージングされた帯にもある。


 手を洗い清め、その震える指でパッケージの帯を切る瞬間。


 ほら……。


 脳裏に広がるパーティー会場。

 家族、友人たちの暖かいまなざしを受けて、コンビニ【冷し中華】と育む愛のスタート合図。


 そう。

 【冷し中華】の帯を切る行為は、結婚式のテープカットに等しいのだ!


 コングラッチュレーション!!


 この世の中に、存在するだけで結婚式を再現する愛の食べ物が、コンビニ【冷し中華】のほかにあっただろうか。

 いや、ない!


 コングラッチュレーション!!


 そして顕現せよ!

 透明の蓋の向こう側に広がる、その景色を。


 あるコンビニ【冷し中華】は、具材が円形に並んで、咲き誇る大輪の花を思わす。

 その迫力は、ラフレシアもビックリだ。見たサイズはそのまま、【冷し中華】の愛の大きさを物語っている。


 あるコンビニ【冷し中華】は、具材が扇方に並んで、花束を思わす。

 まるで【冷し中華】が手にした、幸せを詰め込んだブーケのようではないか。

 まさに、【冷し中華】が嫁に見える瞬間である。


 ああ、素晴らしきコンビニ【冷し中華】。

 まだ、蓋さえ開けていないというのに、テーブルの上はもうウェディング会場だ。


 しかし、まだだ。

 これからが、本番だ。


 さあ、真の物語の幕を開けようか……。

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