その問いの答えは無い

ディストピア鹿内

第1話 扉を開けたらそこはよくわからない場所だった

君は夢を見ていた。


夢には扉が出て来た。

そこは自分の部屋の中だが、

本来テレビが置いてあった場所にカーペットが敷いてあり、

傍に扉ができている。


夢の中で君は夢だと気付かず、自然とこの状況を認めている。

だから現実と多少違っていても何の疑問もない。

それどころか、夢の中ではこれが現実だと捉えている。


夢の中の君は脅迫観念を持っていた。扉はどうしても開けなくてはならなかった。

それは強制的で義務的なものだ。

学校に行かねばならない。それ以上にこの扉を開けなくてはならない。


君は扉を開けた。





扉を開けると、そこには泡が舞っていた。

シャボン玉のような泡で敷き詰められた世界だった。

君はそのふわふわと浮いている泡に触れるが、その泡はゴムボールみたいに弾力がある。

触っても決して壊れない。

泡だらけの世界の中で君は歩みを進めた。



歩いていくと崖があった。

崖の底は見えない。輝く光で明るくて見えなかった。

よく見ると、崖の下には太陽があった。

さすがに変だなと君は思った。

「太陽ってこんなところに沈むんだっけ?」と思った。

また、「この崖に降りるとさすがに死ぬな」と思ったので道を引き返した。


道を引き返すと、そこは子供の時に親と旅行にいった場所だった。

とても小さな時の事なので、地名は覚えていない。

海が見えてさわやかな景色が広がる。木々に囲まれた別荘地。

君は道をまっすぐと歩いた。


しばらく歩くと君は危機を感じた。焦っていた。

夢の中の君にはなぜかはわからない。

しかし現実の話としては『目覚め』の時が近かった。


君は自分の体を見た。泡が体にまとわりついている。

その泡が重く感じた。

君はその泡を一つ手にとって、まじまじと観察した。


それは君にとって大変な重荷だった。苦痛だった。見ているのが嫌になるもので、

すぐにでも捨てたいものだった。

しかし同時に――――失ってはならないものでもあった。

君は少し悩んだ。それでも、少年の時の勇気を出して。

力いっぱいに泡を両手で叩いた。



泡は壊れなかった。

とても硬い泡で、何をしても薄皮が削れるだけだった。



君は夢から覚めた。

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