第36話 タイラ家の日常
思わぬことから本妻と四人の妾との六人所帯となったリュウだったが、タイラ家では円満に過ごすための工夫が嫁達の間で取り交わされていた。
基本、月水金が交代でリュウを独占できる日で、火木土は参加したい人だけでするというものだ。 ちなみに日曜日はお休みにしてある。
リュウとしては日曜日だけが解放される唯一の日だったのだ。
元々それほど性欲があるリュウではなかったのだが、鈴鳴から養仙桃が滋養強壮はもちろんの事、精力回復には絶大な効果があることを聞かされた。
リュウはきっちり毎日2個の養仙桃を食べさせられていた。
とはいえ、リュウも嫌々という訳ではない。 リュウの事を想い、一生懸命尽くしてくれる彼女達をリュウも愛しく想っているのだ。 恐れられることはあっても人に愛されることなど、元居た世界では有り得ない事だった。そんなリュウだから今の生活は苦痛ではなく、むしろ居心地がよかったのだ。 このまま平穏な日々が続けばと思うのだが、それは倒すべき敵を倒してからになるに違いない。
タイラ家では朝は全員揃って朝食を食べることにしている。
朝顔を合わせて一日の予定とか最近起こった出来事とかを情報交換したりしているのだ。 ちなみに朝食は当番制で交代で作っている。
料理が一番上手なのは、やはりクリスだ。正妻の面目躍如といったところか。
続いてがソフィア。女性らしい彼女は料理もそつなくこなす。
逆にできないのがユリスと鈴鳴。 なにをどうすればこうなるという台所の惨状から、この二人の番にはメイドが代わりに食事を作ることになった程だ。
朝食後はそれぞれ仕事があるので順次家を出ていく。
ユリスは諜報活動があるので家にいない事も多く、出入りも決まった時間ではない。
屋敷の裏側には小さい菜園がある。エレノアが野菜作りをしているのだ。
採れた野菜は食事に使うのだが、余った分を教会の孤児達の食事用に差し入れている。
クリスやソフィアもたまに水やりや収穫を手伝ったりしている。
この菜園の土も『ファーマーズ』で使用している促成栽培用の土なので収穫が早く実りも多かった。
鈴鳴は仕事がないので猫のクロになって日向ぼっこをしたり、仙人達との会合に出掛けたりするか、悪友のギルド長であるハーフエルフのナターシャのところへ顔だしという名目の邪魔をしにいっている。
ナターシャと言えば、リュウが結婚した時にはもの凄く悔しがっていた。自分も妾に立候補していたにも関わらず、立候補すらしていない鈴鳴に出し抜かれたからだ。
とはいえ、リュウからすればいつもナターシャからの一方的な誘惑だったので特に彼女とは考えていなかったのだが、それを言うとまた話がヤヤこしくなるのと、いろいろ今後も協力して貰う必要があるので言わないでおいた。 彼女の機嫌を損なうと都合の悪くなることも多いのでクリスの了解をもらい、たまにはナターシャを慰める必要があるなとも思っていた。
夕食は皆が帰ってきてからとなる。 それ程遅くなることはなく、日が沈む頃にはみんな帰宅している。
夕食を作るのは家にいるクリスと人数が多いのでメイドが手伝っている。
たまにリュウが料理を作ることもある。もちろん和風料理だ。 筑前煮や肉じゃがは人気が高い。 和食ではないが、やはりカレーが一番人気で多めに作って翌朝も食べていた。
そして、食卓にはリュウの席の上に”ドーン”と大きな桃が無言で鎮座している。
食後のあとは入浴タイムだ。
タイラ家の浴室は大浴場となっている。一階奥の突き当りにある大浴場は部屋にして三十畳くらいの広さで浴槽だけでも二十人くらいは余裕で入れる。窓を開ければ外は露天風呂となっている。
タイラ家は家の周囲が高い塀で囲われているため外から見えることはない。
お湯は石油ボイラーを設置してあり、常時お湯を貯蔵タンクに入れてあるので使いたい時に出てくるようになっていた。 シャワーももちろんあるので元いた世界と何ら変わりのない環境だ。 むしろ魔法が使える今の方がより便利になっていた。 照明はスイッチで天井のパネル一面が光魔法で発光するし、入浴後の体を乾かすのも風魔法で体全体を乾かしてくれる。温度調整ももちろんできる。
一般には見せると混乱する様な便利な代物がタイラ家には惜しみなく使われているのだ。
夜風にあたりながら涼むのもよかった。
砂漠気候のこの地域は昼間はあまり風は吹かないが夜になると冷えた空気の微風が吹く。
リュウは火薬もあることだし、今度花火でも作ってみようかと考えていた。
ここだけでというのではなく、ローグのお祭りとして盛り上げるのもいいだろう。
さて、何祭りにするのがいいかな? 武闘会でもいいし、神を奉る祭りでもいいし、いや、神がアレだからな。
収穫祭あたりで提案してみることにした。
身体もすっかり乾いたので軽く飲み物で喉を潤した後で寝室へと向かった。
寝室では既に6つのベッドが引着けられて一つの大きなベッドになっていた。 そのままだとつなぎ目があるので上に魔法でベッド6台分幅のマットレスが敷かれている。準備万端ってところだが、この魔法はソフィアあたりだろうか。仙人界での修行でソフィアは万物創生で簡単なものなら作ることが出来るようだった。
ベッドの上では五人の美女がシースルーのネグリジェや下着を身に着けてリュウを待ち構えていた。
今夜も全員が満足するまで何ラウンドかするんだろうなあ。。 とリュウは思うのだったが、養仙桃パワーの恩恵で体力も回復力も常人を超えているので全く苦痛ではなく、むしろ5通りの美女を堪能できるのでたっぷりと味わった。
そして皆体力を使い果たし、いつの間にか眠りにつくのだ。
これがタイラ家の日常の光景だった。
リュウはふと目を覚ますと冷静になって考える。
『やれやれ・・・、こんなのが毎日続いて俺は持つのか? 元の世界では少しは夢見たハーレム状態だが、実際体験してみると結構辛いぞ?これは・・・』
『あなた、無理なさらなくてもよいですよ?お体を大事にしてくださいね。私はあなたの健康が第一と考えております』
『それは私も同じですよ。リュウさんと同じ屋根の下に暮らしているというだけでも満足です』
『そうだね、無理するのはよくないね。マイペースでいいじゃん』
『神様も休息が必要です。決してご無理はなさらないでくださいね』
『zzzzz』
クリス・ソフィア・ユリン・エレノアのリュウを気遣う言葉だったが、最後は鈴鳴だ。
我関せずでとっとと寝てしまったのだ。やはり欲望のままに生きる姿にブレはなかった。
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