第33話 アカデミー
リュウは領主のところへ来ていた。最近の状況報告をするためだ。
『婿殿!ローグが以前と比べて見違えるようだ!職人や商人が他からやってきて一般市民も入れて人口が2倍程になっている。そのお蔭で税収は前年度の5倍だよ』
『いやはや、それは何よりです。 税収という意味では今年度はもっと増えるはずです。グルメ食堂の売り上げがかなりの勢いで右肩上がりですから。
他工芸品もブランド化をすすめる予定です。アクセサリーなどの高級貴金属からはじめます』
『やはり婿殿は頼もしい。もうクリスとの婚姻もいいんじゃないか?』
『いえ、ガゼフ帝国の件はこれからです。この件が決着してからと考えています』
『そうか、残念だな』
領主としても優秀な娘婿を早く正式に迎えたかったのだ。
『今日はお願いがあって参りました。アカデミーの件、そろそろ進めさせてもらってもよろしいでしょうか?』
『職業訓練校だったかな』
『職人だけでなく、ハンターや兵士の養成を行います。基礎を教えることで卒業後は即戦力として活躍できます。 アカデミーを卒業することがステータスとなれば他国からの留学者も増えるので国際交流の一環ともなります』
『ふむ、それで完成にどれくらいかかるのかね?』
『すぐに着工すれば一カ月くらいで完成します』
『わかった。私から各大臣にこの件について話をしておくので進めてもらって構わない。詳細については次の大臣会議で直接君から話してくれればいい』
『ありがとうございます』
これでアカデミーを作ることができる。
このアカデミーが有名になれば、将来、輩出した卒業生が様々な要職に就くことになり、その影響力も大きくなる。いずれはこの国が世界の中枢となってコントロールできるようになるのだ。
まあ、それ程の影響力が出るのはどれくらい先になるのかは想像がつかないのだが。
まずは人が集まれば経済も潤う。それだけでも上出来だ。
領主の屋敷を出て家に帰る途中、リュウはふとクリスの事を思い出した。
クリスとは一緒に暮らす様になったけど、あまり一緒に出掛けたことがなかったことに気付いたのだ。たまには家族サービスもしないといけないよな。
家に戻ったリュウは編み物をしていたクリスに声を掛けた。
『クリス、明日二人で出掛けないか?二人で出掛ける事って滅多にないから、たまにはデートもいいんじゃないかと思ってね』
『はい!行きます!!それで、どこへ行かれるのですか?』
『あはは、大層なもんじゃないよ。その辺を散歩程度にピクニックだ』
『それではお弁当を用意しないといけませんね!頑張って作ります!』
『楽しみにしてるよ』
クリスはリュウの突然のデートの誘いに驚くとともにうれしさ全開だった。リュウの言う通り、一緒に生活はしていても出掛けたことはなかったのだ。
こういうサプライズに女性は弱かったりする。
翌日、朝からリュウとクリスは家を出た。バスケットにはクリスが作ったサンドイッチが詰まっている。飲み物とデザートもしっかり入っている。
今日は二人で手を繋ぎながらゆっくり景色を楽しんで歩いている。ここは新区画の外れの少しだけ高くなっている丘だ。てっぺんには大きい木が立っている。
新区画のエリアは芝生やクローバーなどの短い草を植えてある。 緑が一杯で空気も美味しい。
丘の上の木に着いたリュウ達は、木陰で弁当を食べることにした。 パンの改良で柔らかい食パンも出来るようになり、サンドイッチが手軽に食べれる様になった。 グルメ食堂のマヨネーズを使えば美味しさもアップだ。
クリスの作った料理はとても美味しい。どの料理もお替わりしたくなる程の美味しさだった。恐らくそれは愛情という隠し味があったからだろう。
クリスのサンドイッチをお腹一杯食べたリュウは、クリスの膝の上で昼寝をしている。クリスはそんなリュウの寝顔を見ながらリュウの髪の毛をいじっている。
そよ風が心地よく吹いていて小鳥のさえずりが子守歌に聞こえてくる。
こんな時間がいつまでも続けばいいのにと思うリュウだった。
昼寝をしているリュウにクリスが話掛けた。
『リュウ様、お願いがあります。 少し早いかも知れませんがリュウ様のことを・・・その・・・あなたと呼んでもよろしいでしょうか?』
『俺は全然構わないよ? 確かに、リュウ様は他にも呼ぶ人がいるけど、俺の事をあなたと呼べるのはクリスだけだもんな』
リュウは自分を神と崇める元シスターのことを思い浮かべた。
『ありがとうございます。あなた』
さっそく使ってみたものの恥ずかしくて顔を赤くするクリスだった。
リュウも照れ隠しにイタズラでクリスの胸を軽く揉んだりした。
『もう!あなたったら、エッチなんですから。その気になっちゃうじゃないですか!』
『あはは、ごめん。こんな所ででは流石にマズイよな』
『そうですよ・・・。今夜は覚悟しておいて下さい。お仕置きです』
どうやら、今夜も主導権は向うにあるらしい。
仲睦まじい二人であった。
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